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話しやすくなる空気を整える|"たたき台"という関わり方

昔から、仕事をするときは、よく"たたき台"を作る係だった。フリーランスになった現在も、自然とその役割を担っている。

なぜだかは自分でもよくわからない。でも会議のファシリテーション役でなくても、なぜか"たたき台"を用意してしまう。

綺麗に整ったものではないことも多い。プレゼン化は時間がかかるから避ける。WordやNotionにまとめて臨むイメージ。

私にとっては会議に参加するための準備だけど、参加者の目線を合わせるための下準備にもなる。

この準備は"脳内まとめ"のようなもの。もともと頭の回転が速くない私が、会議で置いていかれないために編み出した、生存戦略だった。

何度も「ついていけない」という経験をしたことで、事前にシミュレーションするのが癖になったのだ。どんな展開で話が進みそうか、なにが議論ポイントになりそうかなど。

意見を聞かれたときに答えるためには、私には事前準備が必要だった。

会議で"迷子"にならないために、たたき台を作る

ここ数年でzoom会議が主流になってからは「自分が画面を投影すると、ペースをコントロールできる」ことに気づいた。そこからは、なんとなく画面投影ポジションを取ることで、置いていかれないようにしている。

画面投影するのは「議論を空中でやるのが苦手だから」もある。空中でやると、迷子になりやすい。いま、どこの話をしているのかを、全体像で把握しておきたい。

そんな私の生存戦略が、実は他の人の"迷子"も防いでいると、じわじわ気づいてきたのが、ここ2年くらい。

"目線合わせ"が、会議をスムーズにする

会議って、人の数が多ければ多いほど、意見や質問が出にくかったりする。

「誰も質問しないから、不明点はないのかな?」と思っていると、そんなことは全然ない。

会議が終わった後「なにあれ?意味わかんない!」みたいな感想が出てくることも多いし、「後で個別に質問しようと思って黙っていた」ってケースも多い(と私は思っている)

それはそれで、個人のあり方だから、無理に変える必要はないと思う。

でも実は、その質問が"みんなが思っていたこと"で、しかもすごく大事なことだった──という場面は、ほんとうによくある。

そんな場面をたくさん見てきた私は、いつのまにか「代表して質問する係」を担うようになった。

もちろん、すべての会議でそうしているわけではない。説明会のように、すでに決まっていることを聞くだけの場では、私の出番はない。

でも企画や設計のように"誰かの疑問が大きな影響を与える場面"では、できるだけ質問して、目線合わせをしながら進むことが、とても重要だと思っている。

どうして"目線合わせ"が大事だと思っているのか

これは私の実体験からくる感覚。

話が具体的な内容に入っていく前の「概念的な段階」であればあるほど、丁寧な目線合わせが大事だと思っている。

概念的な話をしている段階では、使う言葉が"抽象的"なことが多い。

たとえば、コンセプトを考えているときに、"ユーザーが前向きな気持ちになれるようにしたい"という想いが出てきたとする。

前向きになるって言葉、一見すると「そうだよね」って思うんだけど… よく考えてみると、人によって解釈が分かれやすい。

"前向き"っていうイメージがふわふわしたまま進むと、後半の段階になって「そもそも、前向きってなんだっけ?」みたいな話が持ち上がってしまって、振り出しに戻ったり、大きな軌道修正が必要になったりする。

だから最初の段階で、目線合わせが必要。

そもそも、前向きってどういうイメージなの?すぐにでも動き出せるような、やる気満々でエネルギッシュな状態?それともすぐには動き出さなくていいけど、気持ち的にはやるぞ!って少しでも思えていたらいいの?

そんなふうに丁寧にイメージを深堀りしていくと、実は皆それぞれ違うイメージを持っていたりすることもある。

ここで、使う言葉の解像度をぐっと上げて、プロジェクトメンバーが"感覚レベルで同じことを考えている状態"までいけると、その先のズレが起こりにくくなる。

想定外の出来事が起こって「どう対応しよう?」ってなったときに、関係者を集めて議論しなければいけない(しかもどんな意見が出てくるかわからない)状態から対処するのは、大変だし時間もかかる。

想定外の出来事が起こっても、「いちばん大切にしたいのはここだから」とわかっていれば、最初から選択肢を絞ることができる。かかる時間も、消耗する心理的なエネルギーも、全然ちがうのだ。

場が前に進むには、“同じイメージ”が要る

言葉になっていない"モヤモヤ"が晴れると、プロジェクトの空気って、びっくりするくらいよくなる。

「ここにいる皆が同じ方を向いている」って思えているだけで、人は安心できるし、自分を出せるようになるんだと思う。

モヤモヤと言っても、そんなたいしたことじゃないこともある。

「言葉にならないけど、なんか違和感があった」とか「自分だけがわかっていないのかなと思っていて言い出せなかった」とか。

ときには「言ったところで、なにも変わらないかも」みたいな遠慮もあるかもしれない。

私は、場の空気はひとりひとりが作ると思っている。だから皆の顔をちゃんと見て、納得していそうか、表情が曇っていないかを丁寧に確認したい。

私の場への関わり方を見た人から、ときどき「ひとりひとりのことまで考えるのなんて無理だよ、そんなことしなくていいんじゃない」って言われる。

ひとりひとりに最適化したやり方を作りたいわけじゃない。「あなたの意見もちゃんと踏まえたうえでこれを決めたんだよ」って空気を作りたいだけ。

自分がここにいてもいいって思えるときに、人の力が出てくると思うから。

そんな"場の安心感"を作るために、私がよく使うのが"たたき台"という形だ。「綺麗なまとめ」ではなくて、「話し始めるためのきっかけ」みたいなもの。

だから私のたたき台は、会議が終わった後には跡形もなくなっていることもある。それでいいと思ってる。それだけ議論の末に、よりよいものができたってことだから。

これまでの話をもとに、とりあえず考えてみました!を"たたき台"にする

たたき台って、どんなイメージだろうか。すでにだいぶ決まっていて、進行役がサーって話して、異論ある人いますかー?って感じが多いのかな。

私のたたき台は、

「これまでの話をもとに、とりあえず考えてみました。たぶん大枠はズレてないと思うんですけど、大切にしたいコアの部分は皆で話したいので、これをベースに納得できるものをいっしょに作っていきましょう!」

って感じ。

説明するときにも、いろんな言い方で、意見が出るように促す。

「これはベースなんで、ここから変わっていくイメージです。ご意見あればください」

「私はこうしか考えられないけど、たぶん〇〇さんには違う視点があると思うんですよね」

「たぶん開発の観点だと、違うところが気になると思うんですよね。私は企画目線で、これが全部叶ったら理想だなって思ってるだけなので。ここから削る部分もたくさんあると思うけど、まずは理想を描くのが大事だと思ってます。それが私の役割かなって」

とか、すごく、いろいろ言う。それが私のスタイル。これは別に正しくない。皆で考えたい。その方がいいものができるって信じてる。だから、それが伝わるように話す。

私の"感度"が、たたき台の精度を支えている

たたき台を作るとき、私が精度を大きく外すことは、あんまりない。

話し合いの結果、たたき台が跡形もなくなることはあるんだけど、最初に出した時点で「全然ちがう」は、あんまりないと思ってる。そこは少し自信がある。

おそらく、私のたたき台がそれなりに使えるものになっているのは、これまでの話を、けっこう繊細に拾っているからだと思う。感覚センサーをフル活用している。

メンバーの「私はこれを大切にしたいんだけどね」みたいなさりげない一言とか、話していない人の表情とか。

拾われると思われてもいないような、微妙な"空気の揺れ"みたいなものをずっと見てる。だから「きっと皆が大事にしたいのってここだよね」が自然と見えてくる。

ちなみに、そういう一言とか表情とかを拾った結果、たたき台に反映しないこともあるけど、反映すべきなのかどうかは、必ず一度は考える。どうして反映しなかったのかも、自分なりの判断としてできるだけ丁寧に伝える。

自分が業務委託として関わっている以上、イニシアチブはお客様にあるので、最終的な決定はすべてお客様にお任せする。

私がやるのは、たたき台を作って、議論が生まれる空気を作って、合意した“っぽい”方向性を整理するところまで。

ちなみに、どんなかたちのたたき台を出すかは、その場によってまったく違う。

概念図にすることもあるし、表にすることもあるし、言葉だけのときもある。問いを置くだけのこともある。

でも共通しているのは、「話したくなる場を作るために出している」ことと「目線合わせの役割を果たしている」ということ。

話しやすい空気の、"少し前"を整える

私の出番は、話し合いの真っ最中よりも、その少し手前にあると思っている。

話しやすくなる空気が整っていくように、たたき台を出す。それが、私らしい関わり方だと考えてる。いまは。

一見ふわっと出しているように見えるかもしれないけれど、その場がうまく進むように、実は何度も考え直して持っていっている。

丁寧に準備してこそ、開かれた対話が生まれると信じているから。

一度でも「ちゃんと聞いてもらえた」と思えると、人はもっと大事なことを話したくなる。そんな空気を作れたらいいなあと思っている。


ここまで読んでくださって、ありがとうございました。
書いてみて、あらためて「私は、こういう関わり方が好きなんだな」と思いました。

変化の激しい現代で、こういう関わり方がフィットする組織、チームは多くはないのかもしれません。でも私は丁寧な対話を大切にできる関わりの方が、人が力を発揮できると思っています。

そんなお手伝いができる場所と、ご縁があればうれしいです。

▼ 空気の調整について書いたこちらの記事も、よかったらどうぞ。

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