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夭怪着到幉①~何か用かい、妖怪だらけの江戸マンガ

 もの親玉おやだま見越みこし入道にゅうどうをはじめ、次々妖怪ようかいが出てくる、水木しげるもさおの作品。
 黄表紙きびょうし夭怪ばけもの着到幉ちゃくとうちょう」は、北尾政美まさよし作画、天明八年1788年、鶴屋つるや喜右衛門きえもん版。
 
 当時、百鬼夜行ひゃっきやこうのような妖怪ようかいのキャラクターが流行していたので、それを見込みこんだ絵師北尾政美まさよしの作品である。黄表紙は遊里ゆうり舞台ぶたいとする洒落しゃれ皮肉ひにくの文学だが、この作品は、子ども向けの黒本、赤本のおもむきを残している、ものがたくさん出てくるだけの作品。
 遊里文学の黄表紙の現代語訳を並べた中で、ちょっと息抜いきぬきに、こんな作品もいいだろう。
 
 「着到帳ちゃくとうちょう」というのは、集会などの参加者名簿めいぼのこと。つまり妖怪ようかい図鑑ずかんという意味にもなる。
 
 上下二巻二冊の現代語訳を二回に分けて紹介する。

 


上巻

 世にいう妖怪ようかいとは、臆病おくびょうな心が生み出すものとはいうけれど、そんな理屈りくつばかりではない。夜がければ、いろいろ恐ろしき姿をあらわし、それを見る人はきもをつぶす。
深夜二時、丑三うしみどきの八つのかねをぶるぶるしながらついている。

 


 もの親玉おやだま見越みこし入道にゅうどうがあらわれ、手下てしたものどもを呼び出す。
 見越みこし入道にゅうどうまご大頭おおあたま小僧こぞう、雨の降る夜に豆腐とうふ屋をおどかし、一丁いっちょうかっぱらってくる。

 


 あるボロ屋敷やしきさむらい夜勤やきんをしているところ。
 夜も深くなれば、しきりにねむくなり、うとうとして、ふと目を開ければ、ふすまをさらさらと開け、座敷ざしきいっぱいもある大侍おおざむらいが、にょっとのぞいて、
「当番の皆様、ご苦労ご苦労」
侍「うううう、人殺し人殺し~」

 


 河童かっぱ河太郎かわたろうとららえられた人は浮き上がることもできず、そこへあらわれた亡霊ぼうれいたちに食べられる。
 河太郎かわたろうは、さびしい川のそばを通れば、いろいろな形に変化へんげし、人をだまし、川の中へ引き込み、しりの穴からはらわたを食べる。 



 三毛猫みけねこのしっぽが二股ふたまたにわかれているものってはならない。何年もすると妖怪ようかいとなり、人をかし、なやます。
 尼入道あまにゅうどうは、口が大きく、歯はとがって恐ろしく、画面のさむらいは、この後、頭から、がりがりがり。

 


 逆女さかおんなは、まだよいのうちからもさびしき場所にいるものなり。広い庭や長い廊下ろうか、またトイレにいることもあるので、女性の方々はご用心ご用心。

提灯ちょうちんの文字
天明七てんめいしちねんひのと未歳ひつじどしの寒中かんちゅうに日参にっさん

 


ものを次々紹介しながら次回につづく、

 


黄表紙の始まりといわれる恋川春町こいかわはるまちの「金々先生栄花夢きんきんせんせいえいがのゆめ」(1775年)の現代語訳は、こちら、

黄表紙の代表作、山東京伝さんとうきょうでんの「江戸生艶気樺焼えどうまれうわきのかばやき」(1785年)の現代語訳は、こちら、

これらの中に、他の黄表紙の紹介もあるので見てほしい。 


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