【超訳】陶淵明「挽歌詩」
陶淵明は、晩年、自分自身に捧げる「挽歌」を作った。三首連作で、順に「納棺」「葬送」「埋葬」を歌っている。陶淵明は、「形影神」詩にも見られるように、死に対する思索を重ねた詩人であった。ここで読む第一首は、棺桶に収められた自分の思いを歌ったものである。
有生必有死 生有れば 必ず死有り
早終非命促 早く終うるも 命の促まるにあらず
昨暮同爲人 昨暮は 同じく人たりしに
今旦在鬼録 今旦は 鬼録に在り
魂氣散何之 魂気散じて 何くにか之く
枯形寄空木 枯形を空木に寄す
嬌兒索父啼 嬌児は 父を索めて啼き
良友撫我哭 良友は 我を撫して哭す
得失不復知 得失 復た知らず
是非安能覺 是非 安んぞ能く覚らんや
千秋萬歳後 千秋万歳の後
誰知榮與辱 誰か栄と辱とを知らんや
但恨在世時 但だ恨むらくは 世に在りし時
飮酒不得足 酒を飮むこと 足るを得ざりしを
命あるものは 必ずいつかは死ぬ
早死にしても 寿命が縮まったわけじゃない
もともと与えられた天命なのだから
昨夜まで いっしょに生きていた人が
今朝には もう亡くなってこの世にいない
天の定めは 人には知るよしもない
人が死んで 肉体から抜け出た魂は
いったい どこへ去って行くのだろうか
亡骸だけが 棺桶にそっと横たわっている
わたしが死んで 悲しんでいる人がいる
愛する子らは 声を上げて泣き叫び
親しき友は 亡骸をなでて肩を震わせる
何を得て 何を失ったのか
何が正しくて 何が間違っていたのか
死んでしまえば もうどうでもいいこと
どれほどの栄誉を受けたのか
どれほどの恥辱をなめたのか
千年万年の後 誰も知ろうはずがない
わが人生に 悔いはなし
ただ一つだけ 心残りなのは
生きていた間 酒が飲み足りなかったこと
