旅行記⑤ 三陸・岩手旅行記第二編(盛岡・花巻) 〜賢治の軌跡を辿る〜
ご覧いただきありがとうございます。北風小僧です。旅行記第五弾は、昨年(2025年)春の岩手旅行の第二編です。どうぞ最後までご覧ください。第一編をまだお読みで無い方はこちらもご覧いただけると嬉しいです。
概要
昨年春、北風小僧は宮沢賢治と遠野物語を産んだ岩手の風土に憧れて岩手県を旅しました。第二編では、三日目の盛岡と四日目の花巻観光をご紹介します。
行程(太字が第二編の内容です。)
京都→名古屋(JR)
名古屋港→仙台(多賀城)港(太平洋フェリー)
塩釜泊
本塩釜→気仙沼(仙石線、石巻線、気仙沼線)
気仙沼散策
気仙沼→釜石(大船渡線、三陸鉄道)
釜石観光、釜石泊
釜石→盛岡(釜石線、東北本線)
盛岡観光
盛岡→花巻(東北本線)
花巻泊
花巻観光
花巻からは新潟経由(←?)で帰宅
予定変更、盛岡へ
本来では釜石泊の次は、遠野物語の舞台として有名な遠野を訪れる予定でした。昔ながらのみちのくの暮らしを今に伝える古い集落や神社が今も現役であったり、あるいは保存されていると聞き、北風小僧は訪問を大変楽しみにしていました。
ところで、遠野は前日宿泊した釜石と花巻のちょうど中間に位置しており、両市との間にはいずれも峠があります。この峠は、遠野経由で釜石と花巻を結ぶ釜石線において難所となっているのですが、折りしもこの時岩手県には大寒波が接近していました。三日目の宿泊は花巻を予定していたので、釜石線が止まって遠野から出られなくなった場合北風小僧は路頭に迷うことになります。散々悩んだ結果、遠野訪問は断念して代わりに盛岡を観光することにしたのでした。
朝の時点で釜石線はまだ動いていたので、釜石6時50分発の普通列車に乗車。とはいえ遠野は諦めきれず途中下車して30分ほど駅前を散歩した後、後続の快速はまゆり号に乗りました。

はまゆり号は快速列車ながらリクライニングシートの指定席車が連結されており、ゆったり移動することができました(2026年3月のダイヤ改正を以て、新型車両導入により指定席車・リクライニングシート車は消滅するそうです)。ちなみに、釜石から花巻方面に向かう場合、車窓は進行方向左側がおすすめです。この時は何も考えずに右側を取ったのですが、途中斜面が線路ギリギリまで迫るところが多くあり眺望があまりよろしくありませんでした。快速はまゆり号は花巻で進行方向を変え、午前10時ごろ県都盛岡に到着しました。
盛岡
不来方城ともりおか啄木・賢治青春館
直前に訪問が決まり下調べの時間がなかったので盛岡観光は全くの手探りでしたが、とりあえず不来方の盛岡城址に向かいます。美しい桜の並木があり東北三名城にも選ばれている不来方城ですが、緑のない三月上旬はあまり面白くありませんでした。遺構に興味のある方以外は春から秋にかけての訪問がおすすめです。
盛岡の街並みには古い建物も多く、どことなく懐かしさを感じさせます。お城近くにもちょうど素敵な洋館が立っていたので、とりあえず入ってみることにしました。これは「岩手銀行赤レンガ館」で、かつて岩手銀行の本店として使用されていた建物だそうです。見学者が多く内装は撮影できませんでしたが、外観に負けず劣らず趣のあるインテリアでした。一部エリアを除き無料で見学することができます。

換算32mm, ISO200, F/6.3, 1/400s
上部が見切れているのが悔やまれる。この頃はしゃがん撮るという発想がまだなかった
続いては盛岡啄木・賢治青春館へ。盛岡といえば真っ先に思い浮かぶ石川啄木と、花巻で生まれ盛岡で大学(高等農林学校)時代を過ごした賢治両方の展示があります。建物は旧第九十銀行本店のものを利用しており、こちらも立派な佇まいでした(なぜか写真を撮っていないのが悔やまれます)。展示を眺めつつ古い洋館を見物できるにもかかわらず、入館はなんと無料です。一階の常設展に加えて二階では企画展も催されており、北風小僧の訪問時は「啄木・賢治と食(実際のタイトルはうろ覚えですが2人の食生活についての展示でした)」が行われていました。質素な生活においても賢治が食事にはかなりのこだわりを持っていたこと、啄木の豪遊ぶりなどについて知ることができ、食いしん坊にとってはとても面白い企画でした。啄木は友人に借りた金ですき焼きを食べたりビールを飲んだりしたりしていたらしく、小説執筆は借金返済の足しであったとか。人間、これくらい切羽詰まった方が良い作品を生み出せるのかもしれません(?)。ここまでご紹介した三つのスポットは互いに近接しており、まとめての見学もおすすめです。
食の展示を見てお腹が減ってきたところで、盛岡駅の方へ引き返します。盛岡駅と盛岡城の間には大きな商店街があり、飲食店が林立しています。地方の商店街は元気がないことも多いなか、盛況なのは嬉しいところ。色々迷った末に名物「じゃじゃ麺」を食べることにして(冷麺にはちょっと寒すぎた)商店街の中の店に入りました。じゃじゃ麺は岩手以外の人にはどうもあまりウケが良くないようですが、北風小僧としては結構好みでした。食べ方がいまいちわからなくて困っているとお店のおばちゃんが色々教えてくださり助かりました。最後に卵を投入して作る卵スープも美味しかったです。肝心の店名を覚えていないのと、料理の写真を撮っていないのはこの頃の北風小僧の悪い癖です。
岩手大学農学部 農業教育資料館
昼食後次に向かうのは駅の北東側にある岩手大学です。駅からは1.5kmほどで十分歩ける距離ですが、ちょうどバスがやってきたので乗ることにしました。ちなみに、盛岡市内では岩手県交通と岩手県北自動車が路線バス事業を行っており、本数も比較的多く便利でした。
賢治が通った盛岡高等農林学校は、現在の岩手大学農学部の前身にあたります。農学部構内には旧高等農林学校の本館が保存されており、農業教育資料館として一般に公開されています。農業そのものについての展示のみならず賢治や学友、関豊太郎氏をはじめとする指導教官たちとのエピソードもたくさん紹介されており、大変楽しい時間を過ごすことができました。施設名に「宮沢賢治」を冠していないこともあってかやや検索にかかりにくいですが、賢治に興味をお持ちならぜひ訪問されることをお勧めします。入館料は100円台(一般140円、大学生100円)と安価ですが、開館時間が10:00~15:00とやや短い点には注意が必要です。

帰りはちょうど良い時間のバスがなかったため、北上川の景色を楽しみつつ盛岡駅まで歩きました。盛岡からは東北本線の普通列車に乗車し、再び花巻を目指します。

換算100mm, ISO100, F/5.6, 1/500s
夕顔瀬橋からの眺望。この辺りでは北上川はまだ小さい
花巻
台温泉
この日の宿泊は、北上川の支流瀬川を遡ったところにある温泉地、台温泉です。花巻には他にも鉛温泉など温泉が点在し、古くから湯治場として人気を集めていました。他ならぬ宮沢賢治も花巻温泉郷を愛した1人です。今回は素泊まりを選択したのですが、台温泉付近には飲食店、コンビニなどが一切ないため、まずは花巻駅近くで夕食を調達したのち花巻駅発の岩手県交通バスで台温泉に向かいました。旅館によっては東北新幹線の新花巻駅から無料送迎バスもあるそうです。宿泊したのは台温泉の入り口にある吉野家旅館さんで、温泉は非常に気持ちよかったです。ただし階段や廊下など共用スペースに古新聞やゴミなどが散乱しているなど少し疑問を感じる部分が多々あったので、お値段が安いとはいえ積極的にお勧めはしません。
宮沢賢治記念館・宮沢賢治イーハトーヴ館・宮沢賢治童話村・花巻市博物館
次の日は今回の岩手旅行のもう一つのメイン、花巻市内の観光をしました。まずはバスで花巻駅へ。駅のコインロッカーに荷物を預けたら、宮沢賢治記念館に向かいます。次に乗車した花巻市コミュニティバス「土沢線」は、商業施設「シーナシーナ花巻」から花巻駅、新渡戸稲造記念館入口、賢治記念館口、新花巻駅、釜石線土沢駅を経由して道の駅とうわを結ぶ路線で、花巻駅および新花巻駅から賢治記念館にアクセスできる唯一の公共交通機関となります。北風小僧の訪問時はこの土沢線利用者を対象に、新渡戸記念館、賢治記念館、童話村、博物館および萬鉄五郎記念館の入館料が無料になるキャンペーンが実施されていました。本キャンペーンは終了した模様ですが、今後再び行われる可能性もあるので訪問の際はぜひ一度確認されることをお勧めします。
雪がちらつく中「賢治記念館口」バス停で下車し、長い階段を登って宮沢賢治記念館を訪れました。賢治の生前のエピソードから原稿用紙、書簡に至るまであらゆるものが展示されており、大変面白かったです。記念館隣には「注文の多いレストラン」作中のレストランをモチーフにした、レストラン兼お土産屋さん「山猫軒」が建っており、ここで素敵な栞を購入しました。ちなみに花巻市内にはここ以外にも「山猫軒」はたくさんありました。また、高台に位置している関係で眺望が素晴らしいのもよかったです(記念館横に展望台もあります)。

300mm, ISO200, F/8, 1/1250s
展望台から早池峰山を望む
続いては近接する宮沢賢治童話村と宮沢賢治イーハトーヴ館を訪れました。童話村は屋外の展示が豊富で、一方のイーハトーヴ館には賢治に関する研究の文献が豊富に揃っています(イーハトーヴ館は無料で入館できます)。あくまで主観ですが、時間が限られている場合はまず賢治記念館、その次に天候に応じて童話村あるいはイーハトーヴ館という優先順位をつけるのがお勧めです。
最後に訪れたのは花巻市博物館です。遠野物語の「山女」「山男」の話からも推察できますが、東北の山中には比較的最近まで縄文文化を色濃く受け継ぐ人たちが住んでいたという説があります。日本全国に山人や鬼に関する伝承が残っていること、東北には北海道と同様「〇〇別」「〇〇内」という縄文風の地名が多く残っていることからも、決して荒唐無稽な話ではないように思われます。この説を聞いて以来東北の伝承や古代史には非常に興味を抱いており、博物館での時間は一瞬で過ぎてしまいました。また、花巻市の北上川沿いは昔日本に生息していた古代ゾウ「アケボノゾウ」の発掘地でもあり、生物相、地質学に関する展示も比較的充実している印象を受けました。ここまでご紹介した4施設は互いに近接しており、続けて見学することができます。また、同じく郷土の偉人である新渡戸稲造について展示している花巻新渡戸稲造記念館も比較的近くにありますが、時間の都合もあり今回は訪問を見送りました。
博物館の見学を終えたら、新花巻駅に向かいます。博物館からは2km強の距離ですが、下り坂ということもあり歩くのは苦になりませんでした。新花巻駅からは釜石線の列車で再度花巻駅に戻ります。釜石線、コミュニティバス土沢線ともに本数は非常に少ないですが、必要に応じて組み合わせて利用すると多少便利になります。
昼食は賢治お気に入りのお店で。
この日昼食をいただいたのは、花巻駅近くにある大正12年創業の老舗蕎麦屋「やぶ屋花巻総本店」さんです。宮沢賢治も花巻農学校の教師時代、このお店に足繁く通っては天ぷらそばとサイダーを食べたり、あるいはなけなしの給料で生徒にご馳走したりしていたそうです。岩手名物「わんこそば」を尻目に北風小僧が注文したのは、賢治の鉱物だった天ぷらそばとサイダーの「賢治セット」。寒い中サイダーは厳しいのではないかと密かに危惧していましたが、熱いお蕎麦で体もすっかり温まり杞憂に終わりました。

イギリス海岸
満腹になったので、しばらく花巻市内を散歩することにしました。やぶ屋さんから約2kmほど歩き、昨日も盛岡で眺めた東北一の大河、北上川に再開しました。北上川と瀬川が合流する地点の下流側の西岸にはかつて泥岩層が露出しており、地質学に造詣が深かった賢治は英国の石灰岩層を連想して「イギリス海岸」と名づけました。ダムの整備に伴う北上川の水位上昇により現在では泥岩層は見ることはできませんが、賢治の命日である9月21日には水位を下げる試みがなされているそうです。北風小僧訪問時はもちろん「イギリス海岸」は水面下に沈んでいましたが、良い景色であることに変わりはありませんでした。

63mm, ISO200, F/8, 1/500s
吹雪の北上河畔
羅須地人協会
イギリス海岸付近をしばらく散策した後は花巻城址に立ち寄りつつ花巻駅に戻りました。コインロッカーの荷物を回収してまたも盛岡行きの電車に乗車。目指すのは隣の花巻空港駅です。隣駅といっても花巻〜花巻空港間の距離は5.7kmと遠く、花巻とその南隣の村崎野駅に至ってはなんと7.8kmも離れています。目的地は花巻農業高校で、花巻空港からは2km弱の距離があります。「農業」高校であることからも勘の良い方はお気付きでしょうが、ここも宮沢賢治に関連するスポットです。こちらの高校内には賢治が花巻農学校を退職後、農民らに助言を与えつつ自炊生活を送った羅須地人協会の建物が保存されており、冬季(11月第一日曜日の翌日〜3月末)を除き一般に公開されています。不注意な北風小僧は冬季閉鎖の部分を読み飛ばしており、期待MAXで訪れた挙句ずいぶん残念な思いをしました(悪いのは完全に自分です)。訪問される際は十分気をつけましょう。とはいえ外観に関してはフェンスの外側から眺めることができました(ずいぶん不審であったことと思います)。

地人協会に入れず時間が余ったので、近くの花巻空港横でしばらく風景を撮影することにしました。花巻空港近辺は広い平野になっており、北東に霊峰早池峰山、西側には雄大な奥羽山脈を望むことができます。

換算100mm, ISO125, F/8, 1/500s
滑走路越しに奥羽山脈を望む

さらば花巻
駅までは歩いて戻り、北上行きの普通電車に乗車。今度は花巻駅は通りすぎ、花巻の隣の市である北上まで直行しました。北上にも名所は数多く存在しますが、北上についた時にはすでに夜になっていたので観光はせず夕食をとって早々に寝ました。北上で宿泊したのは岩手を治めた大名の名を冠する南部ホテルさんで、フロントの方が大層親切でした。
三陸・岩手旅行記の第二編は以上になります。第三編では岩手からの帰路をご紹介する予定です。今回も最後までご覧いただきありがとうございました。感想、間違いの指摘などございましたらコメントでお伝えいただけると嬉しいです。
↓北風小僧が訪問時参考にしたサイトです
お願い
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