気づけば、母と同じ靴下を履いていた
母はずっと外で働いていた。
母子家庭だった我が家は、母が家にいない時間が長かった。
幼い頃から祖父母と同居しており、家のことは祖母が担ってくれていた。
祖父は私が小6のとき、祖母は大学2年のときに亡くなり、そこからは母・妹・私の女3人暮らしになった。
家にいる母の姿の中で印象的なのは、実は家事をしているものではなくて。
冬場の寝る前の姿だ。
冬になると、母はよくひとりで「寒い寒い」と言っていた。
お風呂上がりにもやわらかい靴下を履き、さらにもう一枚上から重ね履きをして寝ていた。
暑がりの妹と、比較的寒がりではあったが母ほどではない私は
「そんなに履いて寝づらくないの?」と尋ねることがあった。
しかし冬場の母は「寒いもん」と言いながら、毎晩何枚も履いていた。
母はずっと貧血気味だった。
しかもずっと働き詰めで、疲れもたまっており、寒さがこたえていたのだと今なら思う。
そして気づけば、私自身も当時の母の年齢に近づいた。
自律神経もイマイチで体温も低く、自分も強めの貧血になってしまった。
それとともに、冬がつらくなる感覚も年々わかるようになってきた。
気づくと、自分ももこもこの靴下を履いて布団に入っていた。
――ああ、当時の母と同じことをしている。
少し遅れて、あの頃の母の感覚を追体験しているのかもしれない。
母は今、一人暮らしをしている。
時々電話したり、LINE をしたりはしているが、顔を見せる機会は少ない。
隣県で帰ろうと思えば帰れるのに、忙しさを理由に後回しにしてしまう。
ダメな長女である。
今年の年末、実家に帰るつもりだ。
母と同じく貧血になった私が見つけた、オススメのふわふわであたたかい靴下を手土産に。
母に、重ね履きしなくてもぬくぬくしてもらえるよう、今度は私があたたかさを届けに行こう。


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