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巻き戻し(構造体N)#2

・・・
長い文章になったけど、ここで筆を置きます。
勝手に、元気でいる事を祈っています。
それでは、また。


本当に、何のつもりなんだろう。

十五年振りに突然軽いメッセージを送ってきたと思えば、三日後にすごい密度の長文。転職、仕事、家庭、二人の出会い回顧、近況、私を想い出すこと(そんなのあるの!?)、小説を書いてる話(私が題材!?)、消化しきれない過去(本当なのか?)を、書き連ねている。

情報量が多すぎる。

こんなに混乱させて、最後は一方的に去っていく挨拶。祈るって何。呆れて、訳が分からなくて、何を思えば良いのか、戸惑う。

こんなの無視だと思った。でも、こんな胸騒ぎを置いて一方的にいなくなるって、あるの?

私はこの人を、相手にするつもりはない。

十五年前、私と付き合うと言い、母親に電話で「娘さんをお任せ下さい」とまで言った翌日に、私を振った男。今思い出しても、おかしい。それでも諦めきれず、プライドも捨てて、普通の知り合いとして繋がって欲しいとお願いし、断られた男。

余程、暇なんだろう。

今になって、また振り回されるつもりもない。何より私には、安定した家庭があって、何も求めていない。

ただ、この長文メッセージ、きっと時間が掛かったと思う。盛ってないし、格好つけようともしていない。事実が詰まっていそうに思う。何なのか、この人は。まあ、かけてもらった時間に対するお返しはしよう。私の不足ない近況も伝え、それではまた、とお別れすればいい。

私は「無職で暇なのかと思った」とカウンターパンチを入れつつ、丁寧ぶった苗字呼びを「きもい」と追撃し、返事には時間が欲しいことを、一旦返しておいた。


返事がなかなか、書けない。

十日経ったけど、どうしたものだろう。彼のメッセージに合わせようとすれば、こちらの生活も開示しないといけない。軽く書けば、適当にあしらっているみたいで、それも不本意。なんてものを送ってくるのかと、再び思う。もうこのまま、放って置こうか。

でも、返事を書くみたいに言ってしまった。

そんな頃、次のメッセージが来た。

改めて俺に言う事もないやろうし、置手紙のようなものに、返しにくいやんな。俺の意図も、テンションも分からんし。実は、俺も分からんねんな。人生であれだけ特別だった人と再び繋がりたい気持ち、自分が好きだったのは誰なのかを今になって確認したい思い、ただのスケベ心、暇で思いついただけ、とか他にも色々あって、全部本当なんやけど。

スケベ心。

あるのか・・・。

しかも、全部本当だと書いてある。こういう所が、鬱陶しい。ただ、どこか安心できるような気もする。正直さに免じて、返事はしてあげよう。望んでいる返事はできないよ、と先に伝えておきながら。

たぶん、望んでるような返事は返せないと思う。スケベ心には笑ったけど!

仕事の昼休みの終わり際、メッセージを送る。
でも、何を返そう。


来た。

彼からメッセージが来た。

長い。また長い・・・。しかも、さっき昼休みの終わり頃に送ったのに、ニ時間後に来た。今、仕事中じゃないの!?暇なの?

そう言えば、前回の置手紙のようなメッセージに「外資系企業に転職して、随分と自分のペースで仕事ができるようになった」という謎の近況が書いてあった。外資系に転職したら、死ぬほど忙しいんじゃないの?

私からの返信があっただけで十分だという言葉から始まる今回の長いメッセージには、見逃せない部分があった。

知り合いとして今後も繋がる事ができないか。それを今になって、俺からお願いしたい。駄目なら諦めて、数年間隔で、置手紙を書く人になる。

私が断られた、あの願い。

これを今、逆にお願いしてくる気持ちは何なのか。当時の私と同じか、違うのか。このお願いを断ることは、私にとってどういう意味になるのか。また、お願いを受けることは、どういう意味になるのか。

しかも後ろには、「この際、スケベ心は抑える」と書いてある。数年間隔で置手紙がくるのも嫌だ。ホラーだ。

地元静岡のおすすめを聞けば教えてくれるくらいの関係で良い、と書かれている言葉の通りなら構わない気もする。でも本当に、この人に関わってそんな事で済むのか。処理能力を超えたメッセージに頭がパンクし、

「長い」

という二文字だけを返信した。

二時間後、彼は、「ほんまやな」とだけ返してきた。

▼続く