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作られる弱者――鉄の肺と戦災孤児から学ぶ社会の役割

犬養道子のフランスでの経験と記されていたと記憶しています。ボランティアで個人指導を友人に依頼され、鉄の肺で生きて学ぶ学生を指導したそうです。頭の中にノートを取ることを覚えたから、なくさずに済む。たしかそんな姿勢の学生さんでした。ボランティアなどで交流する同世代の学生は、鉄の肺で生きて学ぶ方から学んだり感化されたようです。

強さや弱さは尺度によります。人工呼吸器で行動に制限があるけれど、学ぶ資質は高く、逆境でもつぶれにくいことはストレスのいなし方も上手いと推察します。例えば筋力なら、7歳より18歳の方が高いし、ヘビー級のボクサーはさらに強いけれど、握力や筋力ならゴリラの方が強いです。そのゴリラより強い神話上のヘラクレスも、銃には勝てないかもしれない。学ぶ力、誇り高さ、決めたことをやりぬく精神性など、尺度により様々な強さがあります。経験上、ぜんぶだめという方は珍しいです。

朝ドラのあんぱんを見ていて、戦災孤児(作中では浮浪児)がひったくりなどで、さつまいもとか詩集を盗む場面が出てきます。そうさせる悪い大人まで描写はされません。当時の児童福祉は現代から見れば改善点があるでしょうし、「逃げてきた」ことを演じる場面もあります。
他人のものを盗むことは悪いことです。ただ、空襲などで親を失い守ってもらえない状態を無視して、行動だけ叱っても改善しないと思うのです。当時やドラマへの批判ではなく、構造に関して。

強い・弱いという見方をするのなら、空襲のような出来事や肉親との死別を生き延びて、餓死しないためにどうにかすることは、生命力があるしレジリエンスも高いかもしれない。対して、鉄の肺のケースは当時の医学の限界もあるでしょう。朝ドラから例に上げた盗まないと飢える子どもの立場は、戦争の結果だから人災ともいえるでしょう。戦争が無ければ、学校に行って、進学や結婚をするなど別の人生を生きられたかもしれない。

言い換えると、鉄の肺の例は医学で0からプラスに、人工呼吸器を使うことで生きられるようにしています。後者の例は、生存という意味でマイナスから0へ戻そうとする行動の出方に思えます。さつまいもや詩集を盗むことは悪い。けれど、戦災孤児がそうしないと生きられない状況を作り出した、当時の大人達はより悪いと、私は思います。

病気で人工呼吸器を付けることに伴う医学の限界や行動の制限と異なり、後者は弱者を作り出しています。あえて現代から時間的な距離のある歴史から例を挙げました。「作られる弱者」という視点は、現代を読み解く上でも重要だと思います。弱者を生み出さないとやっていけない社会があるとしたら、その社会は「強い」のでしょうか。人身御供を必要とするかのようだから、弱者を生み出さず、教育や職業訓練や福祉などで包摂できる社会の方が、理想や倫理だけでなく「支え続けるコスト」も下げることが出来るから、社会保障費を減らして市民というプレイヤーを増やすので、少子高齢化の日本と相性がいいと思えるのです。理想、倫理、実利、相性。複数の観点で、お得です。

想像して下さい。『3月のライオン』の 川本三姉妹の祖父は戦争で苦労された描写があり、和菓子屋・三日月堂を経営する菓子職人として活躍されています。フィクションだけど。教育や職業訓練で、一人こうした生き方が出来る方を増やすことは、「失敗したらどうしよう」「すぐに効果出るだろうか」という不安を抱く日に、勇気を保てると思うのです。支えられる側を、支える側へ。鉄の肺の学生さんも、現代ならInstagramのライブとかあるので、暗記の仕方とかを教えるインフルエンサーになっていたかもしれませんね。


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2025/11/03 読んで応援ありがとうございます

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三澤直己 | カラストラガラ / Trgr | フォロバ100% ここまでお読み下さり感謝。各種SNSでのシェアも励みになります。非営利の取り組みが多いため、チップのご検討、助かります。