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徳川美術館の8月15日
終戦から明日で80年を迎える。
徳川美術館で開催中の
特別展「時をかける名刀」は
おかげさまで多くの来館者でにぎわい、
開館90周年の今年、
おそらく開館以来最多の入場者数を
記録するだろう。
80年前、徳川美術館は
どんな状況で終戦を迎えたのだろうか。
昭和18年10月1日、
館の入り口には
「都合により当分の内開館せず」
とだけ掲示され、
新聞広告も説明もないまま、静かに閉館した。
そして昭和20年5月、名古屋大空襲。
徳川美術館の周囲にあった徳川園、
尾張徳川家大曽根邸は灰燼に帰した。
館はガラスが割れ、シャッターは吹き飛び
壁面には破片が無数に突き刺さり
扉の開閉すら困難な状態で8月15日を迎えた。
外壁には不発の焼夷弾まで残っていたが
貴重な作品は長野県伊那に疎開させ
疎開できなかった館内の多くの作品も地下室に詰め込み、難を逃れた。
しかし8月15日を境に
苦難が終わったわけではない。
占領軍がたびたび訪れ、所蔵品を求め、
実際に持ち出されてもいる。
彼らがもっともほしがったのは刀剣だった。
海外に流出した刀剣の多くは
長年手入れされず、
無残な姿で発見されることが少なくない。
刀剣はただ置いておけばよいものではない、
疎開中でさえ、
この家では日々の手入れを欠かさなかった。
そして海外に流出しないよう、
身体をはって守り続けた。
「時をかける名刀」は
ただ優雅に守られてきたわけではない。
伝来の過程で、
もし一つでも違う選択や状況があったならば
明日の8月15日、
徳川美術館の展示室で出会うことは
叶わなかったに違いない。
今秋90周年を迎える徳川美術館の展示、
どうぞ心ゆくまでお楽しみくださいませ。
