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​同族経営の落とし穴。「高台のお城」で育った三代目経営者は、なぜビジョン(抽象)を語れても現場(具体)を動かせないのか?


まえがき


同族経営の落とし穴。企業の箱入り息子、箱入り娘はなぜ、抽象はできて具体はできないのか。そしてそれが企業経営に及ぼすものとは何なのか。

​今回は、この事象について、事実(ファクト)と感情(エモーション)を分けながら、思考を整理し、構造化・言語化してみたいと思います。

​実はこれ、私が勤めている会社の専務の話なんですね。

​いわゆるですね、すごく抽象的なビジョンを掲げるのは上手なんだけども、「じゃあ実際どう動いたらいいの?」という部分に関しては、全然、具体化されない。その結果、幹部層や執行役員が右往左往しながら、専務の抽象論を具体化していくという構造が生まれています。

​この専務も、三代目にあたる直系の方です。おじいちゃんが起業して、お父さんが大きくして、後を託された。

​感情としては、現場からすれば「何言ってるか分からない」というのが本音なんだと思います。小さい頃から何不自由なく育てられ、全てを与えられてきた。だから、すごくキラキラした表面しか見ずに育ってきたんじゃないか、という気がするんです。

「木を見て森を見ず」の真逆が起きている


​ここで「抽象と具体」ということについて触れてみたいと思います。

​よく「木を見て森を見ず」なんて言葉がありますが、今回の場合はまさにこの真逆なんですね。

​専務は、高台のお城で育った「お姫様」だとしてみましょう。

お姫様は、遠くから森を俯瞰してずっと眺めているだけなんです。実際に森に立ち入ったことがなければ、どんな樹木がその生態系を構成していて、どんな動物たちが住んでいるか、なんて具体的なことは一切分からないわけですよ。

​抽象(森): 解像度が低く、全体を俯瞰でしか眺められない状態。

​具体(木): 解像度が高く、具体的なディテールや構成要素まで言語化・構造化できている状態。

​例えば、こういった箱入り娘や息子が、その財力を生かしてレストランを開業するとします。

​彼らは素晴らしいお店にたくさん行っていますから、「素敵なお店とは何か」を高い抽象度で言葉にできます。

「外観は洗練されていて、家具は白で統一されていて、無駄な装飾がない。壁の飾り棚にはシルバーの小物が品よく置かれていて、フロアは隠れ家風になっていて……」と、表側の外観から雰囲気に至っては、驚くほど具体的な言葉で落とし込める。

​ですが、ここで問題が生じます。

​「厨房のスタッフは何人で、どんなオペレーションで料理が運ばれてくるのか」

「そのお店の食材は、どういった仕入れルートで、毎朝何時頃に届くのか」

​そういった「経営の裏側」は、驚くほど見えていない。

なぜなら、表側の素敵な世界は見てきたけれど、裏側の泥臭い俗世間を経験してきていないからです。完全な経験不足なんです。

​学生時代にお金はあるわけですから、飲食店でのアルバイト経験もないでしょう。

アルバイトをすれば、出勤してタイムカードを切り、ロッカーで制服に着替え、責任者から「今日のあなたの仕事はこれです」と指示を受ける。初日をどう過ごし、どこまでをゴールにするか。そういった現場の生々しいディテールを体感する機会が、一切なかったわけです。

​その結果、現場社員からは「あの人は住む世界が違う」「高台から見てるだけだ」という冷めた感情が生まれてしまう。

​ただ、誤解しないでほしいのですが、私は同族経営そのものが悪いと言いたいわけではありません。

苦労を一切させずに与えまくるという「箱入り化する構造」に問題があるのです。できた経営者というのは、自分の息がかからない外部の環境にあえて我が子を放り込み、苦労を経験させますからね。

​では、この「変わらない現実」を前に、私たち経営参謀や現場は、どう思考を整理し、対処していけばいいのでしょうか?

​ここから先は、事象を「定数(変えられないもの)」と「変数(変えられるもの)」に分け、さらにこの問題が破綻する「4つの例外パターン」と、最終的に会社を機能させるための「結論」について、深く掘り下げてカプセル化(パッケージ化)していきます。

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