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フラワーシンドローム 第二話 不意打ちセカンドキス【創作大賞2024 漫画原作部門】


■第一話

■第二話・本文


〇前回の場面の続き・空き教室

すず「恋を教えるとは」

颯の言葉の意味が分からず、ぽかんとした顔をするすず。

颯「俺、最近俳優の仕事も始めて」
すず「活躍存じております!」
颯「次は恋愛ドラマなんだけど」

クールな表情で淡々と続ける颯。

颯「恋愛とか全然わかんなくて。困ってる」
すず「恋愛がわからないとは」
颯「その通りの意味。恋愛したことがない」

目の前の颯を見れば、キラキラオーラが出ている。

すず(綾野先輩が、本当に恋愛未経験!? 信じられない)

そこで、はっと気づくすず。

すず「すみません、私も恋愛したことがなくて、ご希望に添えないかと」
颯「いいよ」
すず「いいんですか?」

颯、じっとすずを見る。

颯「どうせしばらく一緒にいることになるし。あんた、俺に対してミーハーなところなさそうだから」
すず「先輩に憧れてましたよ!?」

学校の王子の颯のキラキラ風イラスト。

すず(少女漫画のヒーローみたいな人だと思ってたもの!)

颯「……そんな風に見えないけど」
すず「あ、さっき泣いてしまったからですよね⁉ ごめんなさい! 綾野先輩が嫌だったとかじゃないんです……! 本当に私はフローラなんだ、と思っちゃって」

必死に弁解するすずを少しおもしろそうに見る颯。

颯「まあ、あんたはそれでいいよ」
すず「? でも本当に恋愛について知らないですよ」
颯「いいよ。こうして話すだけでも」

さらりと言う颯を、いまだ不思議そうに見るすず。

颯「女の子が何好きだとか、そういうことすら知らないから。考えてること知るだけでいい」
すず「なるほど!? それなら協力できそうです。平凡女子の自信はあります」

自慢げな表情になるすず。
 
颯「じゃあそういうことで、また明日」

颯はボタンを止めると手をひらひら振って、そのまま部屋から出て行った。

すず(なんだか、予想できないことばかり続いてるな)
すず呆けた表情で颯を見送る。

〇回想

研究所の人間から書類を渡されているコマ。
すず(あの後、国から正式に綾野先輩がアピスだと報告があって)
すず(私と綾野先輩は定期的にキスをすることが決まった)

校長と研究所の人間が喋っているコマ
すず(学校も全面協力で空き教室を貸してくれることになった)
すず(先輩は芸能人だから、目撃されるわけにはいかないしね!)

書類にサインをしている様子
すず(フローラシンドロームということは家族以外には他言しない)
すず(この関係は薬ができるまでの期間限定の契約)
すず(薬が出来れば他人に戻る、という誓約書を交わした)

研究所の立ち合いのもと、握手を交わす颯とすず。
真剣な表情のすずの顔アップ。
すず(先輩は有名な人だ。秘密がばれないようにしないと)

〇すずの部屋
すず、大量の漫画に埋もれている。

すず(綾野先輩が私とキスを定期的にする。有名人としてのリスクがあるのに協力してくれる)
すず(その代わり、私もお役にたたないと……!)

大量の漫画を読みふけるすず。

すず(恋愛は未経験だけど、少女漫画への知識なら誰にも負けない!)

真剣な表情で漫画を読むすず。

すず(先輩に素敵な恋を教えてあげよう……!)

深夜まですずは漫画を読み続けた。

〇翌日・放課後の空き教室

颯「なにこれ。満喫?」

教室のロッカーに大量の漫画が詰め込まれている。

すず「先輩に恋を教えるために運び込みました……!」

颯、大量の漫画をじっと見ている。

すず「大丈夫です、先生にも許可をもらいました!」
颯「そういう問題じゃないけど」
すず「少女漫画とは、恋愛の教科書なんです。これで乙女の恋心はばっちりですよ」

すずロッカーから漫画を一冊取り出す。マーブルキス、と書かれた表紙。

すず「今私がはまっている漫画です! 三角関係物で、ヒロイン心情描写が秀逸で……」

すず、うっとりと漫画の良さについて熱弁する。

颯「あ、それ。俺が出るドラマの原作だ」
すず「ええっ! ほ、ほんとうですか……! 原作ファンとして、実写のキャストがここにいるのは感慨深い」

颯を拝むすず。

すず「颯先輩は誰役をするんですか?」
颯「紺役」
すず「ヒロインのことを好きで好きで仕方ない当て馬役ですね!?」
颯「そう」
すず「たしかに報われなくても一途にヒロインを愛す役は、恋を知っていた方がいいかもしれませんね。切ない感情が必須です」

じっくり考えるすずは、ぴんときた様子。

すず「ちょっと待っててくださいね!」

漫画棚からいくつも漫画を持ってくるすず。
それを颯の前の机にどん、と置く。

すず「これは男の子主人公です。ヒロインを想う切ない好きな気持ちが丁寧に伝わってくる作品なので参考になるはずです! こっちはマーブルキスと同じで、三角関係で……」

おすすめの漫画について語り始めるすず。
颯、それを興味深く見ている。

すず「どうですか? どれから読みますか!? もちろん持って帰ってもらってもいいです!」
颯「いや、全部いいや」

クールに返す颯に、ショックを受けるすず。

すず「お気に召しませんでしたか? そうだ、あの漫画なら――」

棚に向かおうとするすずの手首を掴む颯。
思っていたよりもふたりの距離が近づき、すずは真っ赤になる。

颯「それより、こういうのが知りたい」
すず「こういうのって……」
颯「距離が近くなったら、どんな顔するのとか」
すず「……!」

すずが顔をそむけて真っ赤になるのを、颯は観察している。

すず「先輩って実は恋愛経験豊富なんじゃないですか」
颯「いや、全然」
すず(う、うそだ……)

すずの腕を掴んだまま涼しい顔をしている颯。
そのまま顔を近づけてくる。

すず「先輩、あの、近くないですか」
颯「今日の分。ほら」
すずの額から花びらを取る颯。

すず「この流れはずるくないですか」
颯「すでに距離が近いから合理的」
すず「……」

すず、ぎゅっと目を瞑る。緊張しているすずの顔をじっと見る颯。

颯「なるほど」
すず「……しないんですか?」
颯「キスする前の顔を観察しようと思って」
すず「それはだめです!」

すずが目をあけると、至近距離に颯の顔がある。

すず「……!」

真っ赤になり、涙目になったすずから花びらが一枚こぼれる。

颯「……」

颯、すずの腕を引き寄せてキスをする。
すぐに唇は離れて、赤い顔で口をぱくぱくさせているすず。

颯「漫画の勉強よりも、実践で知りたいし」

口角をあげてすずを見下ろすすず。

すず(先輩、それは反則です!!!)

颯「あ、もう時間だ。じゃあまた明日」

颯はスマホで時間を確認すると、空き教室を出ていった。
魂が抜けたようにずりずりとその場にへたりこむすず。

〇翌日の学校・休憩時間

真剣にマーブルキスを読み込んでいるすず。

すず(このままでは私がドキドキさせられるだけだ)
すず(先輩がせっかく私のことを頼ってくれてるんだから、勉強しないと)

勉強に燃えているすずのもとに明人と希実がやってくる。

明人「いつもにまして真剣に読んでるな」
すず「男心を勉強しようと思って……!」
明人「男心……?」
希実「すずが恋愛!?」

動揺している明人と目を輝かせている希実。

すず(うーん、だけど恋の苦しさは私もわからないな)
手元にある漫画は、ヒロインが恋に悩み泣いているコマ。
すず「恋って難しい」
ため息をつくすずを、明人と希実はまじまじと見る。

〇放課後・空き教室

教室で向かい合って立っているすずと颯。

すず「今日もよろしくお願いします」

すずハキハキ言うと、気を付けをした状態で目をつむる。

颯「早速キスするの?」
すず「はい! お願いします!」

すず(昨日みたいに、不意打ちでされると心臓がもたない。
先に終わらせてもらったほうがいい)
すず(事務的に、事務的に……)

ぶつぶつ呟いているすずを観察する颯。

すず(これは医療行為……医療行為……)

なかなかキスされずに棒立ち状態のすずは目をあける。
颯はすずをじっと見ていることに気づき落ち着かなくなる。

すず「先輩、もしかしてまた観察してました?」
颯「うん」
すず「緊張するので、するとなったら早めにお願いしたいのですが……!」
颯「緊張」

考える仕草をする颯。

颯「キスされるときって緊張する?」
すず「それはもちろんします」
颯「じゃあキスしてみてよ」
すず「ええっ、私からですか?」

動揺しているすずを気にせず、颯は椅子に座る。

颯「どういう気持ちになるのか知りたい」
すず「う……」

颯、穏やかに目を瞑る。

すず(でもこれが先輩の演技のためになるなら!)

すず、意を決して颯に近づく。

すず(先輩のまつげ、長い。目つむっててもきれいな顔だな)

震える手で、颯の肩に手を置く。
緊張しながら、顔を近づけていく。
颯の目がぱちりとあく。澄んだ瞳がすずを見つめた。

すず「わ……! 先輩、目とじててください!」

真っ赤になって潤んだ目のすずの顔が颯の目前にあった。

すず「私は先輩と違って緊張するんですから、絶対目閉じててくださいね」

すず、颯の目を自分の手で覆う。

すず(こんなに近かったら、心臓の音が聞こえちゃいそうだ)

すずの顔がゆっくり颯に近づいていく。ドキドキしている様子のすず。
すず、唇をわずかに当てると、飛びのくように距離を取った。

すず「お、終わりました! もう目、あけてもいいです!」

恥ずかしすぎるすず、その場にしゃがみんで顔があげられない。

颯「今のキスにカウントされるのかな……」

頭上から颯の顔が聞こえる。

すず「当たりました、キスはキスです!
先輩と違って、私はすごくドキドキでするんですからね!」

目をぎゅっと瞑ってどきどきを抑えるすず。
そんなすずを見る颯の顔もわずかに赤い。

颯「……キスされる気持ちはわかった」

小さな呟きはすずには聞こえなかった。

○空き教室の外の廊下

明人(すず、どこいったんだ。一緒に帰ろうと思ったのに)
すずを探してきょろきょろしながら歩く明人

明人(ん?)
空き教室から颯がでてくるのを見る明人。

明人「え……?」
空き教室から続いてすずが出てくるのを見て、驚いた顔になる明人。

■第三話


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