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二人のプリンセス 愛と憎しみの魔法 第七話 奇襲(2-4)

 メルシアがお菓子を持ってくるのは、ハリアーの授業をミレーネと一緒に受けるために、メルシアが王宮に来たときだった。
 「幸運のお守り」に黒魔術が使われていなかったことや、メルシアが母の妊娠を知らなかったことから、たまたま母が居合わせたことでメルシアの王座を狙う野望に巻き込まれたのではないか。
 医術薬はたった一つの願いを叶えるから、メルシアがミレーネの魔術量が減りますようにと願ったのだとしたら、胎児に影響は出ない。
 どうやったら同時に二人に害を与えることができたのか。ミレーネが黙々と食べながら考えていると、メルシアが周囲を見回し、特に魔術師たちの皿をチェックしているのに気が付いた。

「このクレープおいしいわね。さすがメルシアが外国から取り寄せたお砂糖だけあるわね」

 ミレーネの言葉にピクリと反応したメルシアが、引きつった笑みを漏らす。すかさずミレーネの皿が空になっているのを見たメルシアが、大声で笑い出した。

「本当にミレーネは、素直なところだけが取り柄の愚鈍なプリンセスね。あなたがた全員が服用した粉は、砂糖だけじゃなくて、一瞬で命が絶える猛毒にもなるのよ」
「何ですって⁉」

 驚いてみせたが、本当は服用した者の願い次第で薬の効果が変わることを知っている。ミレーネはこれから大勝負を賭けるため、なるべくメルシアの言動に自然に反応できるよう、魔術師たちにはこの粉が医術薬だということを秘密にしてほしいとハリアー大魔術師に頼んでいた。
 案の定、魔術師たちが慌てて毒消しの術を使おうとするが、まだ毒にもなっていない薬に魔術が反応しないせいで、パニックになっている。

「いったい何の魔法薬を使ったんだ。早く教えてくれ!」

「人を殺す術を使うとは、メルシア殿は黒魔術を使う悪魔だな。やっぱりあなたが陛下のお腹の御子を狙ったのだろう」

「せっかく公平に裁いてやろうと思ったのに、こんな仕打ちをするなんて、さっさと有罪にして極刑に送り込んでやればよかったんだ」

 罵る魔術師たちを前にして、メルシアは喜々として言った。
「こんなにも柄の悪い人たちが高貴な私を裁こうなんて、愚の骨頂よ。私が無罪になったら、あなたたち全員を処刑台に送って、死体を街の中央広場で晒してやるわ」

「何という恐ろしい女だ。お前が未来の女王になどなったら、死体が山積みになって国民が誰もいなくなるんじゃないか」
 魔術師たちは 口々にメルシアを罵った。
「嘆きの間」で審議を任される魔術師としてのプライドを傷つけられた怒りと毒殺される恐怖で、メルシアの身分など頭から吹き飛んでしまったようだ。

 魔術師たちを煽るだけ煽ったメルシアの次の目標は、ミレーネだった。
「ミレーネが劇薬を私の部屋から持ち出したりするから、審議する魔術師が全員死んじゃうのよ」

 メルシアが、魔術師たちを憐れむように眺めて、かわいそうにねと嘯く。
魔術師たちの怒りの矛先がミレーネに向かうのを視線や表情で感じ取ったメルシアが、軽蔑したように「単純なお馬鹿さんたち」と言って嗤った。

「誰に仕えなければいけないのかも理解できない無能な魔術師たちとミレーネが息絶えたら、私が罪を犯したことは誰にも分からなくなるわ。例えば、フロリア王妃に赤ちゃんができたことを知っていた出来損ないのミレーネが、自分が未来のクイーンになれないのを憂いて犯行に及んだという方が、しっくりくると思わない? ミレーネが私に罪を着せようとしていたのが審議の最中にバレたから、魔術師全員を殺し、その後で自害したという筋書きなら完璧でしょ」

―――なんという厚かましさ! 
 ミレーネは芝居をしていることを忘れて、本気で腹を立てた。
「裁かれる立場だったメルシアが一人だけ生き残って、自分の都合のいいように言ったところで、誰が信じるというの? メルシアと違って、私は王位に執着心がないわ。たとえ女王の座が、メルシアかお母さまのお腹の赤ちゃんに渡ったとしても、この王国を導いてくれるならどちらでもよかったのよ」
 昨日まではね! と言いながら、ミレーネはメルシアを睨みつけた。


次のお話をお楽しみください(*´▽`*)
二人のプリンセス 愛と憎しみの魔法 第七話 奇襲(3-4)|風帆美千琉 (note.com)

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