二人のプリンセス 愛と憎しみの魔法 第五話 謎(4-4)
ミレーネは指先に感じた刺激を思い出した。あれはハリアー大魔術師がかけた術だった。
でも、どうして私を弾こうとしたのだろう。私は危ない願いもしていないし、黒魔術なんて知らない。
ミレーネの困惑は、父の怒りを含んだ声に遮断された。
「このお守りの効果とお前がかけた術が白魔術だというのなら、なぜ黒魔術が働き、妃の腹の中の命を奪おうとしているのだ。メルシアが関連しているというのなら、術を教えているお前も関与しているのではないのか」
「な、なにを申される。陛下、私をお疑いか。ミレーネ殿下のことも孫娘のように思って、一生懸命仕えて参りましたのに。もし、私が黒魔術で害を与えようとしていたならば、とっくの昔にミレーネさまは……、ああ、考えたくもない!」
「だが、ミレーネの能力は失われた。生まれながらに授かった魔力量は、身体の成長とともに増えて強くなることはあっても、減りはしないはず。これをどう説明する」
ハリアーはその場にガクッと膝をついた。ぎゅっと瞑った目と噛んだ唇が小刻みに震えている。小さく漏れた嗚咽の後、なんと嘆かわしいことだと呟いた。
「そこまでお疑いなら、私を処刑すればいい。それでミレーネさまの魔力量が戻るなら、この命を捧げることは本望です」
「ハリアー先生。そんなことをおっしゃらないで。私は先生を信じています」
ミレーネはハリアーに駆け寄り抱き起した。
出来の悪い生徒を見限ることなく、ミレーネに恥をかかせまいとして、何かと気を配ってくれた優しい大魔術師の落胆に心が痛む。
「お父様、お母さまや赤ちゃんのことが心配で、疑心暗鬼に駆られたとしても、忠義に厚いハリアー大魔術師をお疑いになるなんてあんまりです」
普段は控えめなミレーネが、今まで家臣をかばって王に歯向かうなど一度たりとも無かった。
本来は明るく活発な気質であったミレーネが、ある時点を境に能力を失い、花が萎れるように魂の輝きまで無くしてしまったようで、両親や周囲の者たちを心配させていたが、目の前で王と対峙するミレーネは凛として王女の風格を漂わせていた。
「ミレーネ、お前の言うことはもっともだ。証拠もないのに人を疑ってはならないな。父が間違っていた。ハリアー許せ」
国を統べる王ともあろう人物が頭を下げたのを見て、部屋にいた者たちは全員驚愕の表情を浮かべた。
もちろん一番慌てたのはハリアーだ。
「頭をお上げください。ミレーネさまの魔力量の減退で、私の能力をお疑いになるのはもっともなことです。私の力が足りないとお思いなら、ミレーネさまの指南役を他の魔術師に代えていただいても結構です。ですが、此度の呪術が本当にメルシアさまのものかどうかを見極めてどう解くか、最後まで関わらせていただくことをお許し願いたい」
「もちろんだ。師の交代は事件の解決後に考えよう」
フレデリック王は衛兵に、メルシアを嘆きの間に連れてくるように命令した。
次のお話をお楽しみください(*´▽`*)
二人のプリンセス 愛と憎しみの魔法 第六話 難航する論証(1-5)|風帆美千琉 (note.com)
