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二人のプリンセス 愛と憎しみの魔法 第六話 難航する論証(1-5)

「嘆きの間」それは王族・貴族などが罪を犯した疑いがあるときに呼び出され、有罪か無罪かを論証する部屋である。
 一辺が十五mほどの王宮の中の部屋にしては小さめの部屋だが、ここには関係者と大魔術師しか入れないので部屋の大きさは問題にはならない。むしろ目を引くのは、装飾品だけではなく、窓が一つも無いということだ。
 部屋の中央には、五星が描かれた直径五mほどの魔法陣があり、円と星の五つの先端の接点から数歩離れた場所に五人の魔術師が立っている。
 その五人は幸運のお守りの証明書にサインした大魔術師ハリアーと他四名の魔術師だった。

 一つしかない出入口の反対側には傍聴席が設けられ、席に着いたフレデリック王とミレーネが、今まさに宰相に導かれて入ってくる王弟ヘンリーと妻のカリーナ、そのあとに続くメルシアをじっと見据えていた。
 ヘンリー夫妻とメルシアは理由を何も聞かされていなかったらしい。
朝の六時に王弟の館に王からの伝令が到着し、メルシアに召致命令が下ったことを告げたのだ。
 髪も服装も乱れた三人は、通されたのが「嘆きの間」だと気づいて顔色を失った。

「兄上、いったいこれは何事か。ここは罪人を裁く部屋ではないですか。メルシアが何をしたというのです」
「お父さま、怖いわ。私は何も悪いことはしていません。確かに小さなころはトラブルばかり起こしていましたが、心を入れ替えてお父さまが自慢できる娘になろうと日々努力しています。これは何かの間違いです」

 二人の様子を観察していたミレーネは、以前母から聞いていた叔父のヘンリーとミレーネの確執が消えて、良好な親子関係を築いていることに気が付いた。
 それは親子に限らず、ミレーネや仕える周囲の者たちすべてに及ぶ。
 胎児の命に関わる事件が起きなければ、メルシアの変化を疑うこともなかっただろうに。
 考えれば考えるほど奇妙なことが符号する。素行が悪く、勉強嫌いだったメルシアが急に態度を改め、勉強熱心になったこと。ミレーネに対しても珍しいお菓子を用意してもてなしてくれるようになったこと。心と体が成長すれば増えていくはずの魔法量が、ミレーネに限って失われていったこと。
 それらが始まった時期は、重なっていなかっただろうか?
 メルシアがかけた術で魔力を奪われていたのだとしたら、それはいつどんな方法で? 
 ミレーネは必至で考えようとしたが、場所と時間が許さなかった。
 叔父フレデリック王が、重い口調でメルシアに告げたのだ。

「数時間前、王妃が流産をしかけて医術師やハリアーに診断させた。お前は王妃に跡継ぎができるようにと言って「幸運のお守り」を渡したそうだな。赤子の命は襲い掛かる黒魔術と守ろうとする白魔術の前で風前の灯だ」

「何ですって⁉ 王妃さまはすでにご懐妊をなさっていらしたのですか。そんな……」

 青ざめたメルシアは、王の話を必死で飲み込もうとしているのか、はたまた自分の身を案じているのか、両腕で自分を抱きながら忙しなく目をさまよわせている。

「お前が黒魔術を使ったのなら、今すぐ解けば極刑に処することはない。魔法陣の中で真実を述べよ。嘘を言えばどうなるかわかっているな」


次のお話をお楽しみください(*´▽`*)
二人のプリンセス 愛と憎しみの魔法 第六話 難航する論証(2-5)|風帆美千琉 (note.com)

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