二人のプリンセス 愛と憎しみの魔法 第六話 難航する論証(2-5)
ドサリと音がして、カリーナが床に倒れた。娘が犯したかもしれない大それた罪にショックを受けて、気を失ったらしい。ヘンリーはメルシアと話しをさせてほしいとフレデリック王に頼んだが、逃亡の恐れがあるとして許可されず、退室命令が出された。
医者と助手に運び出されるカリーナと付き添いながらも心配そうに振り返ったヘンリーに、メルシアが涙声で置いていかないでと叫んだが、扉が閉まるなりフレデリック王とミレーネを睨みつけた顔には、涙の一筋さえこぼれていなかった。
ハリアーが愛弟子だったメルシアを気遣って、優しく魔法陣の中に入るようにと声をかけるが、メルシアは一瞥しただけで鋭い視線をミレーネに戻す。やれやれと肩を竦めたハリアーが、メルシアの手を取って魔法陣の中へと誘おうとすると、メルシアがその手を思いっきり跳ね除けた。
「触らないで。私は王弟の娘で、誰もがミレーネよりクイーンに相応しいと認めているプリンセスよ。貴族でもなく生まれも卑しい魔術師風情に、裁かれるのは我慢できないわ」
ミレーネと同じくメルシアにも目をかけていたハリアーは、一瞬唖然とした表情を浮かべたが、切な気に目を伏せて首を振った。
「メルシアさま、それがあなたの本性ですか。ミレーネさまの能力を消失させ、代わりに女王になるおつもりだったのなら、胎児も当然邪魔な存在であったはず。さぁ、魔法陣の中へお入りください」
「王妃さまのご懐妊は、本当に知らなかったのよ。それに私がミレーネや胎児に術をかけた証拠はどこにあるの? 間違っていたら、ただじゃおかないわよ」
「全くもって往生際が悪い。今からあなたのしてきたことを、白日の下に晒しましょう」
ハリアーが藍色のローブの袖を翻しながら、呪文を唱え始めた。他の魔術師たちの呪文も重なり、閉じられた空間に不気味にこだまする。魔法陣が青白く光り、天井に向かって筒のように伸びていった。
突然星の中央から勢いよく光の筋が伸びて、カエルの舌のようにメルシアに絡まった。メルシアに悲鳴を上げさせる間も与えずに、円の真ん中へと巻き取っていく。光の筋は消えたが、天井まで伸びた薄青い光の筒は残っている。その中に閉じ込められたメルシアが気味悪そうに光のヴェールを通過しようとしたが、質感が無いように見えて指一本も通さない。
「なによ、こんなところに閉じ込めて。まるで子供騙しね。こんなものこうして破壊してやるわ」
メルシアが口の中で呪文を唱えて、両手を壁に突き出す。手から放出されたパワーは壁を砕くはずだった。ところが、衝撃を受けた部分の壁が白く発光して外側へと膨らんだ瞬間、弾き返すように内側へとへこみ、メルシアの体は反対側の壁に叩きつけられていた。
次のお話をお楽しみください(*´▽`*)
二人のプリンセス 愛と憎しみの魔法 第六話 難航する論証(3-5)|風帆美千琉 (note.com)
