二人のプリンセス 愛と憎しみの魔法 第六話 難航する論証(3-5)
だが、誰もメルシアに手を貸すものはいない。ハリアーの水晶には犯人の赤い目が映っていたのだから、情けをかけるより一刻も早く、呪術の方法を吐かせて胎児を助けなければならなかった。
国王が問う。あのゆりかご型の紙にどんな呪術をかけたのかと。
もし、メルシアが嘘を言えば、魔法陣は強烈な痛みをメルシアにもたらすはずだった。
「あれは、本当に王妃さまのご懐妊を願ってのお札だったのよ。私は何もしていないわ。あなたがた魔術師だって調べて害がないと知ったから、サインしたのでしょう。私が後で細工をしたと思うなら、ミレーネに渡したお守りを調べたらどう?」
周囲の者たちはメルシアの悲鳴を予測していたが、メルシアは涼しい顔で魔法陣の中に立っていた。
ミレーネは調べてもらうつもりでもってきた自分の「幸運のお守り」をハリアーに渡しながら伝えた。
「私は昨夜そのお守りに願をかけてはいません。メルシアの親切に応えようと思って、喜ぶものを考えてからお願いしようと思っていたの」
「まぁ、お優しい従妹どの。あなたほど純真で高潔な方を私は知りませんわ」
お人よしね。だから騙されるのよと言いた気に、メルシアが鼻で笑う。
ミレーネは、メルシアがわざと挑発して感情を乱そうとしているように感じた。
多分、私だけしか気づけないことがあるはず。きっと、お守りが目くらましになっていて、大事なことを見落としているのかもしれない。
なぜなら、黒魔術を帯びたものを弾く証明書が、指先だけにしてもミレーネにショックを与えたのだ。
それはミレーネが知らないうちに、メルシアに黒魔術をかけられたことの証に違いない。
メルシアからもらったプレゼントに、呪術的なものはなかっただろうか?
いつも傍に置いているようなものは何かないかとミレーネが考えている間にも、メルシアへの尋問は続けられていた。
早朝から飲食もしないでずっと緊張していたせいか、ミレーネは喉に渇きを覚えた。お茶を頼んでもいいのだろうかと隣に座る父に尋ねようとしたとき、昨日のティータイムの光景が頭に浮かんだ。
「あ……ばらのシュガーケーキ」
吐息のような呟きだったが、父は娘が空腹を訴えたと思ったらしく、席を外していいと小声で答えた。
違うといいかけて思い直す。ミレーネは小さく頷き、父王の傍に下がっている紐を引いて、扉の外を守っている衛兵に外に出る合図を送った。
扉が開かれるや否や、ミレーネは走り出した。
次のお話をお楽しみください(*´▽`*)
二人のプリンセス 愛と憎しみの魔法 第六話 難航する論証(4-5)|風帆美千琉 (note.com)
