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二人のプリンセス 愛と憎しみの魔法 第八話 ルキウス王子との出会い(2-5)

 近衛兵に護衛されながら走るミレーネの馬車が、トリスタナ王国の首都に着いたのは、イゾラデ王国を出発してから二週間も経っていた。
 トリスタナ王国のロアーナ王妃から送られた招待状には、母のフロリアとミレーネの名前が記されていたが、まだアレックスが幼く長旅は無理なので、今回はミレーネ一人の訪問となる。付き添いはアイリスが買って出た。

 父からトリスタナ王国は国土も広く、鉱山から受ける恩恵で国庫は潤い、国民の生活も豊かだと聞いていた通り、首都の道は隅々までレンガが敷かれ、市街地に並ぶ石造りの建物も立派なものが多かった。
 大通りに面した建物の一階は、食品や衣類や生活用品を扱う店が軒を並べていて、行きかう人たちにも活気があり、手にしたかごには、パンや野菜が覗いていた。

「すごいわ。私たちは魔術に頼ることが多いけれど、この国の人たちは魔法が使えないのに、進んだ文化を築いているのね。舞踏会よりも街中を探検して、イゾラデ王国に役立つ情報をもって帰れば、お父様は喜ぶかしら」

「ミレーネさま、ここまで来てなんのご冗談を。ご招待を受けたのですから、舞踏会をすっぽかしてはいけませんよ。アレックスさまのためにも、国と国との懸け橋になることをお考えくださいませ」

 馬車の窓から目を輝かせて景色を見ていたミレーネは、アイリスの言葉で自分が世継ぎから外されたことを思い出した。
 女王の座に執着はないとメルシアに告げたけれど、自分の国が栄えてほしいと願うのは、王や女王に限らないはず。とはいえ、国を治める立場ではなくなった私が、経済の発展に口を挟むようなことをすれば、政治に関わる貴族たちから煙たがれるだろう。

 アレックスはまだ幼すぎる。メルシアのように、私がアレックスより能力が上だと誇示しているように周囲に取られないよう気を付けなくては。

「あまり気が進まないけれど、大人しく舞踏会に参加するしかないわね」

「急に行く末が変わってしまったミレーネさまには、戸惑うことが多いでしょうけれど、フロリアさまという素晴らしいお手本がいらっしゃいますから、ミレーネさまはどこに嫁がれても最高のお妃さまになられると思います」

 ミレーネは少し憂鬱な気分を抱えながら馬車が城門を潜るのを眺めていたが、貴賓室で出迎えてくれたスタイン王とロアーナ王妃の優しさに接するうちに、ささくれ立った心が解されていった。
 トリスタナ王国に逃げ込んだ黒魔術師を足止めして、捕縛するのに協力してもらったお礼を述べ、責任を果たしたミレーネは、肝心の王子が居合わせないのに今更ながらに気が付いた。

―――直接話すこともなく、いきなり舞踏会で相手を選ぶつもりなのかしら? それとも先に到着した姫君の中で、誰か気に入った人が見つかったとか?

 挨拶に顔を見せないルキウス王子が、もし大国の王子だからという理由で、小国の自分を軽視しているのだとしたら、アイリスに叱られてもいいからルキウス王子に会う前に帰りたい。
 複雑な気分で貴賓室を退出したミレーネは、侍女に案内されて二階の突き当りにある部屋に足を踏み入れた。


次のお話をお楽しみください(*´▽`*)
二人のプリンセス 愛と憎しみの魔法 第八話 ルキウス王子との出会い(3-5)|風帆美千琉 (note.com)

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