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二人のプリンセス 愛と憎しみの魔法 第八話 ルキウス王子との出会い(3-5)

 控えの間のドアに続き、リビングと寝室は、壁と家具が白で統一されていて、アクセントカラーとしてドレープカーテンやクッションは、ローズピンクが使用されている。女性らしく華やかでかわいい部屋の様子に、ミレーネは思わず声を上げた。

「まぁ、なんて素敵な部屋!」
 ミレーネが感嘆すると、侍女が何かを言いたそうにしているのに気が付いた。

「どうかしたの? 何か気がかりなことでもあるのかしら?」
「いえ……ロアーナ陛下から、ミレーネ殿下には一番美しい部屋をご用意するようにと、仰せつかっておりましたので……」
「そうなのね。後で陛下にお礼を申し上げなくては。このピンクと白のお花は、部屋にあわせてあなたが選んでくださったの?」
「はい。ベランダの下に、恋人の小路があるのですが、その先に自然を模した庭があります。そこの花を庭師から頂いてきました。よろしければ、散策してみてください」

 ミレーネがお礼を言うと侍女はお辞儀をして、アイリスと一緒にミレーネの荷物を片付け始めた。大きなバッグからドレスを取り出し、寝室に併設されたワードローブの中に運んでいく。
 手持ち無沙汰になったミレーネは、恋人たちの小路が見たくなり、大きな窓から広いベランダに出て下を覗いた。

 樹木に囲まれた二十平米ほどの広場の中央に、小さな池が見える。池の中には台座に載った女の子の像が設置されていて、掲げたツボから池に水を注いでいた。
―――わぁ、かわいい! 夕食までまだ時間があるから、あの木陰のベンチで本を読もうかしら。ベランダから庭に降りる階段もあるわ。
 浮き浮きしながら広場を見回すと、樹木を縫うように続くレンガの小路を見つけた。
―――あれが、恋人の小路ね。なんだかわくわくしちゃう。

 読書よりも探検がしたくなったミレーネは、荷物を整理しているアイリスに、恋人の小路を見てくると伝えた。
「お供も連れないで、散策されるのは危険です」
「でも、真下よ。ベランダから庭に降りられる石階段があるの。少しだけならいいでしょ?」

 なおも止めようとしたアイリスに、侍女が告げた。
「樹木の向こう側は高い塀で囲われていますので、この棟に滞在される方しか庭に入ることができません。塀の内と外には警備兵もいますので、一人でお散歩されても大丈夫です」
「ありがとう。じゃあ行ってきます」

 これ以上アイリスの小言を聞かなくて済むように、ミレーネはベランダに飛び出した。
 アイリスがこんなにも口やかましく心配性になったのは、メルシアの事件があってからだ。
 母が流産しかけ、ミレーネまでメルシアの毒牙にかかっていたと知ったとき、アイリスは自分が傍についていながら、二人に危害が及んだことを泣きながら謝り、侍女を辞退すると言いだした。
 メルシアの功名な手口に騙されていたのは、みんな同じだ。アイリスだけが悪いのではないと母とミレーネが二人がかりで説得して、ようやく引き留めることができた。

 事件後アイリスが心配性になったように、甘いものを避けるようになった貴族もいれば、他人の行動に関して懐疑心を抱くようになった人もいる。
 メルシアの残した爪痕は人の心から消え去ることはないだろう。

 ミレーネがベランダの階段を下りて広場を横切り、恋人の小路に差し掛かったとき、奥から青い鳥が飛んできて肩にとまった。
 ミレーネを銅像だとでも思っているのか、それとも誰かが飼っている鳥なのか、ミレーネの肩に載ったまま、羽繕いを初めてしまう。
 ミレーネが青い鳥を脅かさないように、目だけ動かして辺りの様子を探ると、木陰からいきなり白いものが飛び掛かってきた。

 思わず手を翳して透明な壁を作る。白いふさふさの毛並みの生き物が、透明な壁に爪を立てたが、自分の重みでずるずると下がっていく。地面にお尻がついた途端、首を傾げたもふもふは、前足で壁をカリカリとひっかいた。

「あら、かわいい! ペルシャ猫だわ。あなた飼い主は? どこから来たの?」

 首回りから胴を覆い隠すほどの艶やかな長い毛を持つ猫は、額にシルバーの三本の細い縞があり、左耳には薄い桃色の花、首輪にはパールが飾られている。
 もしかしたら、この棟に滞在している王女の猫かもしれない。
「いらっしゃい。逃げ出したらあなたの飼い主が悲しむわよ」
 ミレーネが透明の壁の前で手を振ると、壁は空気に変った。芝生の上にしゃがんで、猫に手を伸ばすと、にゃ~んと鳴いて、指に鼻をつける。
「大人しい子ね。いい子いい子。わぁ、ふさふさして気持ちいい。抱っこしても怒らないでね」

 ミレーネが猫を抱き上げたとき、小路の向こうから足音がして、男が声を潜めて名前を呼ぶのが聞こえた。
「ミック。ララ。どこにいる? 出ておいで」


次のお話をお楽しみください(*´▽`*)
二人のプリンセス 愛と憎しみの魔法 第八話 ルキウス王子との出会い(4-5)|風帆美千琉 (note.com)

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