二人のプリンセス 愛と憎しみの魔法 第七話 奇襲(1-4)
早朝から始まった審議は四時間にも及び、十時の休憩には侍女たちが嘆きの間の扉の外にお茶とクレープを運んできた。生地の上に薄切りにしたイチゴやリンゴなどのフルーツが美しく並べられ、その上から粉砂糖とフルーツソースがかけられている。
審議が長引く様子をみせたときに魔術師たちとメルシアには椅子が用意され、メルシアは魔法陣の中央でだるそうに椅子の背に背中を預けて座っていた。
ハリアーが魔法で、お茶とクレープが載ったワゴンをメルシアの前に移動させると、今まで誰とも視線を合わせず、口も利かなかったメルシアが、皿に目を落とす。
ここに会した魔術師やミレーネもそうだが、メルシアも朝食をとる間もなく召集されたせいで、喉の渇きと空腹に抗うことはできなかったようだ。
魔術師たちが部屋の隅に追いやられていた三脚のテーブルを、間隔をあけて魔法陣の周りに置く。
魔法陣を挟んだメルシアの正面のテーブルには、ミレーネとハリアー大魔術師が座り、国王フレデリックはフロリア王妃の容態を見に席を外した。
メルシアは嫌そうな顔でミレーネを一瞥した後は、カトラリーを手にしてクレープを切って口に入れた。
その時を待っていたミレーネが、白い粉の入った瓶をわざと音を立ててテーブルの上に置いた。
胡散臭そうにこちらに顔を向けたメルシアが、よほど驚いたのか、瓶を見て顔を引きつらせた瞬間、クレープを喉に詰まらせて激しく咳き込んだ。
「メルシア大丈夫? 驚かせてごめんなさい」
「あ、あなた、どこでそれを……」
「メルシアの部屋にあったものよ。ヘンリー殿下とカリーナ殿下の様子が気になって、先ほどお屋敷を訪ねたの。お会いできたのはヘンリー殿下お一人だけど、メルシアの無実を証明できるものを探して持っていくように頼まれて、部屋に入っちゃった」
「そ、その粉が、審議とどう関係するっていうの? どうしてそれで私の無実を晴らせると思ったわけ?」
「お部屋を探したけれど役にたちそうなものは何も見つからなかったわ。ただ、いつも私をシュガーケーキで励ましてくれたように、私もお菓子でメルシアを元気づけたかったから、このお砂糖を使わせてもらったの」
「そんな勝手なことしないでよ。それは普通の砂糖じゃ…」
慌てて口を押えたメルシアに、ミレーネは首を傾げながら聞いた。
「普通のお砂糖じゃないの?」
「いえ、え・ええ、外国から取り寄せた珍しい砂糖なの。使う前に許可を取ってほしかったわ」
しどろもどろになりながらメルシアが話をつなぐ。視線を瓶とパンケーキの間を往復させた後、ナイフでソースをかきわけて、重なったクレープ生地まで捲りだした。レディーらしからぬその振る舞いは、まるで、どのくらい砂糖がかかっているのか検査しているようだ。
―――やっぱり、この粉が怪しい。なんの変哲もない医術薬をメルシアはどんな風に使ったのか、何としても聞き出さなくては。
疑っていることをおくびにも出さず、ミレーネはクレープを口に運びながら、問題解決に向けて次の一手を考えていた。
次のお話をお楽しみください(*´▽`*)
二人のプリンセス 愛と憎しみの魔法 第七話 奇襲(2-4)|風帆美千琉 (note.com)
