二人のプリンセス 愛と憎しみの魔法 第五話 謎(3-4)
「かしこまりました」
ハリアーが再び水晶を包むように手を翳し、二十㎝ほどの距離を保ちながら全体を撫で回し、時々手を止めては念力を送り込むように手を震わせる。
ミレーネは水晶から立ち上る禍々しい気配に戦慄した。
水晶の中で渦巻いていた灰色の煙の一部が薄れていく。そこに映ったのは二つの赤い瞳。その場にいた全員が言葉にならない声を発した。
ミレーネも思わず叫んでいた。
「嘘よ!」
叫びながらも、頭のどこかで、もしかして自分にふりかかった一連の不幸はメルシアのせいかもしれないと疑ってしまう。
こんなのは、自分の能力不足を他人のせいにするための自己防衛や逃避じゃないのかと、自己嫌悪が湧く。
メルシアはいつもミレーに優しすぎるほど優しかったではないか。彼女を疑うのは間違っている。
自分に言い聞かせるミレーネの頭に、ふと十二年前の外遊びが蘇った。
巨大化した蜘蛛にぐるぐる巻きにされる侍女たちの姿と気絶するアイリス。
ミレーネは小さな体を震わせながら、メルシアのシルクのドレスを引っ張り、ダメダメと首を振り、メルシアはその手を振り払って、冷たく言ったのだ。
「あなたなんか生まれてこなければよかったのよ。一緒に蜘蛛の餌食にしてあげましょうか?」
あのときの殺意を込めた赤い目が過去からも迫ってくるように感じて、ミレーネは心臓を貫かれそうなほど恐怖を感じた。
真っ青になって震えだしたミレーネを、父が心配そうに見つめる。ミレーネは倒れている場合じゃないと気力を振り絞って、父に告げた。
「お父さま。昨日メルシアから幸運のお守りをもらいました。有名な魔導士のものだそうで、その方がお守りに念術をかけ、受け取った人が願いを込めると夢が実現化すると聞きました。メルシアはお母さまに跡継ぎができるように願えば叶うと勧めていたのです」
「なんだと! そのお守りはどこだ? まさかフロリアはそれを使ったのか」
フレデリック王は驚愕に見開いた目を、ゆっくりとベッドの上のフロリア王妃に向けた。
「フロリア、ああ、どうかその得体の知れないものを使っていないと言ってくれ」
ベッドに横たわったフロリア王妃は、震える手を枕の下に入れ、しわの寄ったゆりかご型の紙を取り出した。
「あなた。これを……。申し訳ありません。国王陛下のお子をすでに身ごもっているとは知らず、ミレーネの未来のためにもというメルシアの甘言を受け入れてしまいました。でも、このお守りに害がないということを証明する魔術師たちのサインも添えられていたのです」
「その証明書には誰がサインしていた。実物はどこにある?」
ハリアーがナイトテーブルに置かれていた証明書を見つけ、王に差し出した。
「陛下、証明書には私のサインもあります。このお守り自体には邪念は感じられません。ただ危険な願いや黒魔術を帯びたものを弾くように、お守りと、念のために証明書にも術をかけました」
次のお話をお楽しみください(*´▽`*)
二人のプリンセス 愛と憎しみの魔法 第五話 謎(4-4)|風帆美千琉 (note.com)
