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二人のプリンセス 愛と憎しみの魔法 第六話 難航する論証(5-5)

 ミレーネが「嘆きの間」に戻ったとき、ちょうど休憩時間になっていた。
 ハリアー大魔術師を別室に呼び出したミレーネは、小瓶とハンカチに包んだ白い粉の鑑定を頼んだ。
 ハリアーが呪文でティースプーンを出現させて、ハンカチの粉をすくう。
「毒なら茶色に、呪術用のものなら黒色になり、使用方法が頭に浮かびます」
 ハリアーはミレーネに説明しながらスプーンをじっと見つめていたが、変色しないスプーンから内容を感じ取り、うーんと唸って首を傾げた。

「ミレーネ殿下、なぜこれが怪しいと思われたのです? これは医術師が患者の回復力を高めるときに使う魔法薬です」

「黒魔術とは違うの?」

「ええ、違います。例えば、医者に勧められたことを忠実に守って回復に励めば治る病も、治療の際の痛みや、なかなか回復していることを実感できないと治療を諦めてしまう患者がいるのです。そうなりそうな患者に真剣に治るように願わせて、回復を助ける魔法薬です」

 人を害するものではないと知って、ミレーネは愕然とした。

「それと、もう一つの特徴は」とハリアーの説明が続く。
「形を自由自在に変えられることです。子供に飲ませる場合は、子供におやつなど好きなものを想像させて、それを食べるときに身体の回復を願わせます。子供がおもちゃを想像したときは、手渡すときに元気になって遊べることを願わせるのです」

「服用しなくても効果はあるのね」

 自由に形を変えられるのなら、メルシアのシュガーケーキの花は砂糖に粉を入れて作ったのではなく、魔法薬そのものを変化させたのかもしれない。
 ただ不思議なのは、これがミレーネの魔法量を減らす薬でないとしたら、病気でもないミレーネに、なぜメルシアは、季節の花を象ったシュガーケーキを食べさせたのだろうか。
 純粋な好意から? いえ、それはありえないと思い直す。
 審議の時にメルシアがミレーネに向けた憎しみのこもった目や不遜な態度を、愛情と見間違えるほどミレーネはお人よしではない。メルシアは、そうは思っていないようだけれど。
 ハリアーから医術薬と聞いても薬の役割に疑いを捨てきれないのは、メルシアの態度もさることながら、証明書に触れた指先が弾かれたことが、どうしても引っかかるからだ。

「その魔法薬は治癒以外のことに対しては効き目がないのでしょうか」

「実は医療に特化した魔法薬はなく、服用した者が望むことは叶ってしまうのです。それを防ぐために医術師が一つの願いしか受け付けないように管理の術をかけます。患者にも身体の回復以外の願をかけると薬の効果は無くなることを説明して渡すのです」

「願いはたった一つだけ? では、もしメルシアが私の魔法量を減らすことをこの薬に願っていたとして、もう一つ薬を変化させて作った「幸福のお守り」に恐ろしい願をかけても、願いは叶わないということですか」

「その通りです。お守りにしても、魔法量にしても、薬を服用する相手に害を加えるような術をかければ、私だけでなく、他の術者たちも感知するでしょう」
 ミレーネはまた思考の迷路に迷い込んだ。


次のお話をお楽しみください(*´▽`*)
二人のプリンセス 愛と憎しみの魔法 第七話 奇襲(1-4)|風帆美千琉 (note.com)

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