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揺らぐアメリカ第一主義:トランプの偉大さという虚像と国際社会の真実



トランプ大統領の一挙手一投足が世界を揺るがし、連日のようにニュースの主役となっています。これほどメディアの注目を集める国家の指導者は初めてかもしれません。彼の掲げる強硬な政策や、敵対者を容赦なく論破する政治スタイルを見て、トランプは強大で、周到な戦略を持つ偉大な大統領なのだと感じている米国民は少なくないかもしれません。

しかし、現在世界が直面している深刻な物資不足や経済の混乱を丁寧に紐解いていくと、その偉大さが決して緻密に計算された不滅の力ではなく、多分に張り子の虎のような虚像を含んでいることが分かります。他国が手出しできない本当の理由、そして足元から崩れつつあるトランプ流政治の実態について、考えてみたいと思います。

圧倒的な国力という遺産を私物化するディール

トランプ大統領が世界に対して極めて強い影響力を行使できているのは、彼個人の政治的手腕が優れているからではありません。アメリカという国家が受け継いできた、圧倒的な遺産を徹底的に使いながら、強引な取引(ディール)を行っているに過ぎません。

アメリカには、他国がどれほど逆立ちしても追いつけない3つの絶対的な覇権が存在します。世界全体の約4割を占める強大な軍事力、世界中の貿易や金融を支配する基軸通貨の米ドル、そして世界最大の購買力を誇る消費市場です。

世界各国が彼の暴走に対して指を咥えて見ているように思えるのは、トランプ大統領個人を恐れているからではありません。アメリカと正面衝突した際に被る経済的・軍事的なダメージが大きすぎるため、冷徹な国際政治のパワーバランスとして動けないというのが実情でしょう。トランプ大統領はこの国家の強大さを武器として、相手に過激な条件を突きつけているだけであり、彼自身のリーダーシップが偉大であるという証明にはならないでしょう。

予測不可能性という戦術が招いた世界的なオイルショック

トランプ大統領の交渉術の核心は、相手に先を読ませない予測不可能性にあります。従来の外交ルートや国際的な協調を無視し、SNSや演説で突然脅しをかけるスタイルは、短期的には他国をひるませる効果を発揮してきました。しかし、この場当たり的で危ういギャンブルは、現在、世界的なインフラの機能不全という最悪の結果を招いています。

その最たる例が、現在私たちの身の回りで起きているガソリン価格の上昇や、エンジンオイルの供給不足です。イラン情勢を極限まで緊迫化させた結果、オイルの主成分であるベースオイルの流通が滞り、世界的な物流網が麻痺しました。自動車整備の現場ではディーゼル車用オイルや最新の低粘度オイルが手に入らず、出荷制限や価格高騰が相次いでいます。

仮に今後、トランプ大統領の出方次第でイランとの和平交渉が進展し、ホルムズ海峡の開通や停戦が実現したとしても、壊れた物流網はすぐには元に戻りません。海峡に敷設された機雷の除去作業、滞留した大量の船舶の解消、そしてゼロから潤滑油の備蓄を満たしていくプロセスを考慮すると、ガソリンの供給回復には数か月、エンジンオイルが以前のように安価に流通するまでには1年以上という長い時間が必要でしょう。目先のディールを優先して国際社会の安定を破壊した代償は、あまりにも重く世界にのしかかっています。

自国民の反発と経済的インフレというブーメラン

他国を関税や制裁で脅し、アメリカを勝者に導くというアメリカ第一主義は、一見すると愛国的な強いリーダーの姿に見えるかもしれません。しかし、経済のグローバル化が進んだ現代において、他国を痛めつける政策は必ず自国にブーメランのように跳ね返って来ます。

トランプ大統領が乱発する高関税政策や中東での軍事的な緊張は、めぐりめぐってアメリカ国内のガソリン価格高騰や、深刻なインフレとなってアメリカの一般市民の生活を脅かしています。アメリカを再び偉大にと叫びながら、その政策が結果として自国の国民を最も苦しめているという皮肉な状況が生じているのです。

この矛盾に、アメリカの有権者も気づき始めています。かつては彼の強みとされていた経済運営への不満が噴出し、大統領支持率は30%台半ばで低迷を続けています。アメリカはシェールオイルなどを持つ資源大国であり、最先端のAI投資や半導体という強力な経済の盾があるため、国家そのものが破綻することはないでしょう。しかし、国家は持ち堪えるが、国民の生活は限界を迎えているという現在の情勢は、彼の政治が決して周到に計算されていないことを物語っています。

砂上の楼閣が迎える政治的限界と歴史の分岐点

トランプ大統領の任期は2029年1月までとなっており、現在の政治スタイルはあと2年半ほど続く計算になります。しかし、この強硬なガバナンスが無制限に続く可能性は極めて低いと言わざるを得ません。その最大のブレーキとなるのが、今年11月に控えるアメリカの中間選挙です。

物価高に苦しむ世論の不満を背景に、もし中間選挙で野党 (民主党) が議会の過半数を握るねじれ国会が誕生すれば、トランプ大統領がこれまでのように独断で予算や法案を通すことは不可能になります。任期の後半は、国内の政治的な縛りによって大国としての独走に強い歯止めがかかることが濃厚です。

さらに長期的な視点で見れば、アメリカがドルの力を経済制裁の武器として乱用しすぎた結果、新興国を中心としたドル離れが確実に加速しています。長年の同盟国との信頼関係にも深いひびが入り、これまでアメリカが築いてきた無形の資産は、今まさに失われようとしています。

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