【往復書簡】近藤弥生子さま from KEACON。力を抜くことを教えてくれた人 #5
台湾在住のノンフィクションライター近藤弥生子さんとの【往復書簡】。心の中にあるまだ言葉にしてない思いを、やり取りを通して深掘りしていくような、そんな二人のお手紙交換です。
〈前回頂いていたお手紙はこちら〉
弥生子さん、
お手紙読みました。私の方こそ「こんな話、聞かせて貰っちゃってもいいんですか?」状態です。
知らない先生に廊下で捨て台詞を吐かれた中学時代、クラスの勢力争いに巻き込まれて態度を示すように詰め寄られた高校時代。なんだそれ…めっちゃ面白いじゃないですか!エピソードが強すぎて、元優等生としてはうらやましい限りです。
「心温まる陽だまりのようなお手紙交換」になるはずだったのに、往復書簡の方向性はこれで大丈夫でしょうか?私はめちゃ楽しいです。笑

2007年3月大学4年のとき
ご存知のとおり、根っからの優等生だった私は「ルールは必ず守るもの、手を抜くのはよくないこと」だと信じて大きくなりました。でも、大学生になって社会と関わりを持ち始めたころに、ガチガチだった私の考えを変えてくれるある出会いがあったんです。
今回はそんな話、
ちょっと聞いてくれます?
当時、私は大学4年生。就職先も無事に決まり、大学近くのある会社で事務のアルバイトをしていました。そこで私のことを気にかけていろいろと教えてくれる女性の事務員さん(パート勤務で30代。Aさんとします)と出会ったんです。
明るくさっぱりとした性格のAさんと私は、次第に仕事帰りに二人で飲みに行く仲に。行き先はお洒落なカフェではなく、もっぱら焼鳥屋でした。
Aさんは、ビールを飲みながら職場の人たちの人間関係や二回りほど上の恋人と旅行にいった話など、二十歳そこそこの私には刺激が強い話を沢山聞かせてくれました。(ちなみにAさんの恋人は既婚者でした。)

塗られたおしろいで顔は真っ白!台北市内。
そんなAさんに、春から社会人になることへの不安を相談したときのこと。返ってきた言葉は、
大丈夫じゃない?
私はお客さんからクレームとか言われても、
「社員じゃないからわかりません」
って(とぼけて)言ってるけど。
就活の面接で、志望動機や自分はどんな貢献が出来るかを、熱く語ってきた私にとって、それは小さなカミナリに打たれたレベルの衝撃でした。
今となっては恥ずかしいのですが、仕事とは手を抜かずに、会社のために全力を尽くすもので、世の働く大人たちはみんなそうしているんだと、大学生の私は信じていたんです。「とぼけて逃げる」という選択肢があったなんて!全くもって新しい視点でした。
「社員じゃないからわかりません」
Aさんのこのときの言葉は、その後社会に出て働きだした私の心を何度も軽くしてくれました。実際に逃げる逃げないは別として「いざとなったら逃げてもいい」と思えることが、お守りのように私を支えてくれたんです。
「ルールは必ず守るもの、手を抜くのはよくないこと」という価値観を握りしめて社会に出ていたなら、苦しいときに力を抜くことを自分自身に許すことができなかっただろうし、力を抜いた自分を責めていたかもしれません。

このあと顔はツルツルになってました。
Aさんと一緒に働いたのは半年ほど。その後、大学の卒業を機に私は地元に戻ったので、会うことはなくなってしまいましたが、価値観を変える大事な言葉をくれた人だったなぁと今もときどき思い返しています。
おそらく言った本人的には「そんな大したこと、言ったつもりじゃなかったのに」って苦笑いなはず。人生の通りすがりで出会えた人から偶然貰った言葉が、何年も心の支えになってくれることってあるんですね。これって、ワクワクしちゃいません?
弥生子さんがこれまでに誰かから貰った「心を軽くしてくれた言葉」や「価値観を変えてくれた出来事」、もしよかったら今度私にも聞かせてもらえませんか?
追伸
台湾っぽい写真のリクエストにも応えてくれてありがとうございました。赤色と金色にあふれたお正月飾りのお店、めちゃめちゃ台湾っぽい!ケーキにハテナマークのろうそくを立てるのも面白いですね!台湾と日本の文化の違い、とても興味深いです。
KEACON
<弥生子さんからお返事が届きました>
<過去のやりとりはこちらから>
