新しい資源を使わないイノベーションの方法【SDGsの進め方②】
イノベーションとは「新しい価値をつくり出す」ことです。そのためには「何か新しいもの(資源)を使う必要がある」と思われるかもしれません。
「新しいもの」には魅力がありますが、それを使うデメリット(コストアップ、問題の発生など)も考えなければなりません。
このデメリットが「新しいものを使うメリット」より大きくなってしまうと、新しいものを使う意味がなくなってしまいます。
「デメリットを発生させずに、新しい価値をつくり出す」ことができれば、理想的なイノベーションの方法になります。
その方法にはコツがあります。それはリソースの活用です。この記事では「リソースとは何か?」「どのように活用できるか」を詳しく解説します。
理想的なイノベーションの方法
SDGs(持続可能な開発目標)の目標9 「インフラ、産業化、イノベーション」では、「産業と技術革新の基盤をつくろう」と呼びかけられています。そして「イノベーションの推進を図る」ことが示されています。
イノベーションとは「新しい価値をつくり出す」ことです。
またイノベーションには、技術革新・経営革新・情報革新など、さまざまな種類があります。
この記事では技術革新をテーマにして、「イノベーション(技術革新)を行い新しい価値をつくり出す方法」について考えます。
産業には「生産活動のもととなる資源」が必要です。「資源」というと「鉱物」のような特定のものがイメージされるかもしれません。そのため、この記事では「資源」を単に「もの」と表現します。
例えば、「産業には、生産活動のもととなる資源が必要です」の代わりに、「産業には、生産活動のもととなるものが必要です」というように表記します。
このように、単にものと表記することで、それが表すイメージの範囲が広がると思います。
イノベーションで「新しい価値をつくり出す」というと、そのために「何か新しいものを使う必要がある」と思われるかもしれません。
例えば、次のような感じです。
今までにない画期的な製品をつくりたい
そのためには、従来とは異なる「新しいもの」を使う必要がある
しかし「新しいもの」を使うことで、次のような副作用が生じる可能性があります。
コストが高くなる
操作や扱いが難しくなる
別の問題が発生する
上記の副作用を発生させずに、新しい価値をつくり出すことができれば、それは理想的なイノベーションの方法といえます。
どうすれば、そんなことが可能になるでしょうか?
副作用が発生する原因は「新しいものを使う」ことですから、「新しいものを使わないで、新しい価値をつくり出す」ことができれば可能になります。
この記事では、「新しいものは何も使わずに、新しい価値をつくり出す」方法をご紹介します。
リソースの活用
「新しいものは何も使わずに、新しい価値をつくり出す」ためのポイントはリソースの活用です。
リソースとは
「まだ使われていない全てのもの」をリソースと呼びます。わかりやすくいうと、「利用できるもの」のことです。
またリソースは「身近にあるもの」が良いといえます。次のようなメリットがあるからです。
入手しやすい
よく知っている
リソースをわかりやすく定義すると次のようになります。
リソースとは:身近にあるもので、利用できるもの
このように定義すると、リソースの範囲がとても広くなります。その結果、リソースにさまざまな可能性が生まれてきます。
リソースの種類
リソースには次のような種類があります。(参考文献1)
物(材料など)
エネルギー(力学的な力・電気・磁気・電磁気・熱・光など)
周囲の環境(空気・温度・湿度・重力など)
人に関するもの(体重・身長・体温・脈拍・五感など)
有害なもの(廃棄物・失敗など)
商品(製品・サービス)を設計する時に、一般的に「利用できるもの」として考える対象は「物(材料)やエネルギー」になるでしょう。
「周囲の環境・人に関するもの・有害なもの」については、見落とされる、または、対象にならないこともあります。
普通は「見落とされる・対象にならない」ものも含めて、「身近にあるもので利用できるもの」は何でも利用しようというのが「リソースの活用」の考え方です。
さまざまな種類のものをリソースとしてとらえることで、視界が広がります。その結果、優れたアイデアが得られる可能性が高くなります。
リソース(身近にあるもので、利用できるもの)を利用することで、「新しいものは何も使わずに、新しい価値をつくりだす」ことが可能になります。
リソースには、次のようなメリットがあるからです。
入手しやすい
よく知っている
周囲にある既存のものを使えば、それらは入手しやすく、よく知っているので、次のような副作用は発生しにくくなります。
操作や扱いが難しくなる
別の問題が発生する
さらに、現在の商品(製品・サービス)に使われているのと同じ物(材料)を使えば、新しい物(材料)を使うことによるコストアップを防ぐことにもなります。
このようにイノベーションに有効なリソースですが、実際に活用されるケースは少ないといえます。
なぜでしょうか?
次にその原因を考えます。
リソースが活用されない原因(心理的惰性)
リソースを見つけて活用するうえで障害となる、次のような心理的惰性があります。(参考文献2)
1つの面だけに注目してしまう
廃棄するものは悪いものと思い込む
(人工の)技術だけを使おうとする
1つの面だけに注目してしまう
製品の材料を選ぶ時に、「その材料の1つの面だけに注目してしまう」という傾向があります。例えば、製品の強度が気になる時には、材料の「強さ」という面だけに注目してしまうかもしれません。
材料は1つだけでなく、さまざまな面を持っています。例えば、「強さ」以外にも「軽さ」や「加工のしやすさ」といった、さまざまな面を持っています。
材料を使う場合、その材料の1つの面だけに注目するのではなく、他にも有効な面がないかを分析することが大切です。
しかし材料の代表的な面にだけ注目することで、他の性質を見落としてしまう場合があります。これが1番目の心理的惰性です。
廃棄するものは悪いものと思い込む
ある工程で出た廃棄物や廃棄エネルギーは、悪い(有害な)ものと考えがちです。このように考えてしまう傾向が、2番目の心理的惰性です。
廃棄物や廃棄エネルギーも、本来は物やエネルギーですから、有効なリソースになり得ます。しかし「廃棄するものは悪いものと思い込む」心理的惰性が働くことで、それらを有効に利用できなくなります。
人工の技術だけを使おうとする
技術の発展により、多くの新しい価値が生み出されてきました。記事の冒頭で述べた技術革新は、まさにその代表といえます。
技術革新はさまざまな恩恵を与えてくれます。そのため「技術が万能」といった考え方も生まれてきました。その結果、「人がつくった技術だけを使おうとする」傾向も出てきたといえます。
技術を使うことにはコストがともないます。またエネルギーも消費します。それらのデメリットがあっても「人工の技術だけを使おうとする」傾向が、3番目の心理的惰性です。
上記の3つの心理的惰性により、リソースの活用が進まなくなってしまいます。
次は、それぞれの心理的惰性への対処法を説明します。
心理的惰性を打ち破る方法
「1つの面だけに注目する」への対処法
まず次の点を認識することが大切です。
ものには、1つだけでなくさまざまな面がある
材料を使う場合、その材料の1つの面だけに注目するのではなく、他にも有効な面がないかを分析することが重要です。
【例1:製品の材料選定】
「保温性が高い」ことで知られている材料Aがあるとします。材料Aを使った製品Xは「保温機能」を売りにしています。
販売戦略上、製品Xに「吸湿機能」を追加することになり、「吸湿性が高い」材料が必要になりました。そこで新しく材料Bが選ばれました。
新しい材料Bを追加することで「吸湿機能の向上」というメリットが得られます。しかし、次のような副作用が生じる可能性があります。
コストが高くなる
製品が複雑になる
材料Bによる別の問題が発生する
このような場合、材料Bを探す前に、材料Aに「吸湿機能を生み出すような性質」がないかを分析することができます。
もし材料Aに吸湿機能を生み出す性質があれば、副作用を発生させずに、「保温性が高い+吸湿性が高い」という新しい価値をつくりだすことができます。
「廃棄するものは悪いものと思い込む」への対処法
次のような大胆な考え方をしてみましょう。
悪いものでも有効利用できないか?
他のところ(場所/時間)で使えないか?
自分のシステムでは不要であったり、または悪いものであっても、他のシステムではそうではないかも知れません。
逆に、他のシステムでは不要/悪いものでも、自分のシステムでは有用になる場合があるかも知れません。
このように観点(見る立場)を変えることで、悪いものを有用なものとして見ることができます。
【例2:コージェネレーション・システム】
廃棄エネルギーの代表的なものとして廃熱があります。発電装置では、発電時に熱が発生します。発電機が高温にならないように、その熱を排出します。それが廃熱となります。
発電装置に対して、廃熱は有害なものといえます。しかし見方を変えて、その廃熱を暖房や給湯などに利用しようというのが、コージェネレーション・システム(コジェネ)です。
廃熱は「自分の観点」では有害なものなので、外に捨てようとします。しかし、熱を必要としている「他の人の観点」では有用なものとなります。
「廃棄するものは悪いものと思い込む」心理的惰性を取り除けば、廃棄物や廃棄エネルギーを有効なリソースにすることができます。
「人工の技術だけを使う」への対処法
昔から自然の力(風力、水力など)という無料または安価なリソースが活用されてきました。これらは人がつくった技術ではありません。
この点を認識して、周囲の環境(空気・温度・湿度・重力など)からリソースを探すことができます。
【例3:環境のリソース】
環境のリソースとして、次のようなものがあります。(参考文献1)
空気
水(雨、海)
温度(高い温度、低い温度)
湿度(湿気、乾燥)
圧力(大気圧、高い圧力、低い圧力)
重力
光(太陽の光、反射光、月の明かり)
音、振動
におい
変化(昼夜の変化、季節の変化)
これらのリソースをうまく使うことができれば、コストやエネルギー消費を大きく減らせる可能性が生まれます。
逆転の発想:有害を有用に変える
リソース(身近にあるもので、利用できるもの)には、有害なもの(廃棄物・失敗など)も含まれます。
「廃棄物の活用方法」は上述した通りですが、最後に「失敗の活用方法」をご紹介します。
失敗することは嫌なものです。失敗した時点では、マイナスのイメージが大きいでしょう。「現在の自分」という観点では、そのように思えます。
しかし時間を先に進めて「将来の自分」という観点からは、プラスにとらえることができます。
次の手順で、マイナスをプラスに変えることができます。
失敗したという事実をきちんと認める
失敗の原因を冷静に、客観的に分析する
原因の対策を考え、フィードバックする
このようにすれば、失敗の再発を防ぐことができ、さらに改善することもできます。
「有害なものを有用なものに変える」ことができれば、それまでのマイナスの影響がプラスの働きに逆転します。その結果、ものごとの改善に大きく役立ちます。
他に必要なこと
イノベーションを成功させるためには、次の点も必要です。
課題を見つける
問題を解決する
課題の見つけ方、問題解決の方法については別の記事でお伝えします。
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参考文献
Darrell Mann『TRIZ 実践と効用 (1) 体系的技術革新』の「第14章 問題解決ツール-リソース」
Yuri Salamatov『超発明術TRIZ シリーズ5 思想編「創造的問題解決の極意』の「6.3.リソースの利用」
