15%値引きで、利益まで値引きしていました。
前回書いた通り、当時の自分は「紙もWEBもまとめてできます」とかなり自信を持って話していました。チラシも、名刺も、パンフレットも、ホームページも、まとめて相談できます。打ち合わせも一度で済みます。デザインの雰囲気も統一できます。
そして、そこにもう一つ、分かりやすい特典をつけていました。
複数まとめてご依頼いただければ、15%お値引きできます。
なかなか強い営業トークです。お客様からすれば、まとめて頼めて、デザインもそろって、打ち合わせも少なくなって、さらに安くなる。悪い話ではありません。
というより、かなり良い話です。
ただし、それはお客様にとっての話です。
会社側から見ると、少し様子が変わります。
この15%値引きは、なんとなく商談中に言っていたわけではありません。自社ホームページにも、大きく書いていました。複数媒体をご依頼いただくと、通常価格よりお得になります。そんな感じで、しっかり打ち出していたのです。
そうなると、紹介でお会いしたお客様にも言わないわけにはいきません。
一瞬だけ、悪魔がささやきます。
「この方は紹介だから、通常価格でもいいんじゃないか」
かなり小さな声です。
でも、たしかに聞こえました(笑)。
ただ、あとからホームページを見られて「まとめると安くなるって書いてありますよね」と言われたら、信用をなくします。たとえ言われなかったとしても、気づかれた時点で気持ちのいい話ではありません。
だから自分は、こちらから先に伝えていました。
「まとめてご依頼いただく方がお安くできます」
今思えば、そこはちゃんとしていたと思います。信用を失うくらいなら、最初から正直に言った方がいい。お客様との関係を一回きりで考えていたわけではなく、リピートや紹介につながればいいと思っていました。
つまり、先行投資です。
言い方はきれいです。
でも、計算は甘かったです(笑)。
起業したばかりの頃、自分はこの15%をかなり単純に考えていました。チラシ、名刺、パンフレット、ホームページ。全部の見積金額を合計して、そこからそのまま15%引いていたのです。
一見、分かりやすいです。
お客様にも説明しやすい。
ただ、そこには大きな落とし穴がありました。
見積金額の中には、デザイン費やホームページ制作費だけではなく、印刷費も入っています。印刷費は、自社の中で作業する費用ではありません。印刷会社に支払う外注費です。もちろん、そこに少し利益は乗せていますが、もともと原価があるものです。
原価というのは、こちらが実際に支払う元の費用です。たとえば印刷会社に払うお金。仕入れにかかるお金。つまり、最初から自分の利益ではない部分です。
そこまで含めた総額から15%引く。
そりゃあ、利益は減ります。
当たり前です。
でも当時は、その当たり前に気づくまで時間がかかりました。
お客様には還元していました。自分の利益も、かなり還元していました(笑)。
赤字まではいかなかったと思います。でも、かなり原価ギリギリだった案件はありました。忙しく打ち合わせをして、制作を進めて、印刷手配までして、納品して、ふと見ると「あれ、思ったより残ってないぞ」となる。
思ったより、どころではありません。
最初から残るように計算していなかったのです。
これは値引きが悪いという話ではありません。値引きには意味があります。まとめてご依頼いただくことで、打ち合わせの時間が減る。デザインの方向性も合わせやすい。社内でのやり取りもスムーズになる。だから、その分をお客様に還元する。
考え方としては、悪くありません。
問題は、どこから値引きするかです。
外に支払う印刷費まで含めて、まとめて15%引いていた。ここが甘かったのです。
何度か苦い経験をして、ようやく考え方を変えました。印刷費のような外注原価まで全部まとめて削るのではなく、自社で調整できる制作部分を中心に考える。担当するデザイナーさんやWEB担当にも、「この案件は15%割引だから」と共有する。
そうやって、ようやく最低限の利益を守るようになりました。
値引きにも、設計が必要でした。
当時の自分は、営業トークとしての見せ方は考えていました。お客様にどう伝えれば魅力的に聞こえるか。どうすれば選んでもらえるか。どうすれば「それならお願いしよう」と思ってもらえるか。
でも、その裏側で会社にいくら残るのか。
そこまでの設計が弱かったのです。
良い提案をしているつもりでした。
お客様のためにもなっていると思っていました。
実際、それは間違っていなかったと思います。
ただ、会社が続いていかなければ、その提案も続けられません。
お客様に喜んでもらうことと、自分の会社を守ること。
この両方を考えないといけない。
それが経営でした。
そしてこの頃、自分はもう一つ、後から見れば大きな強みに気づいていきます。ホームページ制作会社は、星の数ほどありました。
でも、全部の会社が、ホームページを最後まで作れるわけではなかったのです。
つづく。
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