【アイサレタイ】楽曲分析レポート〜TikTok今週の1曲[No.20 - 25/3-1]
こんにちは!
今週は「アイサレタイ/Yumcha」を分析していきます!
本楽曲はリリースから5ヶ月でTikTokでのUGCが合計約170K。
いつもレポートをご覧の方にはおわかりいただけると思いますが、これは
2024年から2025年にかけての大ヒット曲といえます。
(UGCが126Kの音源と43Kの音源があります)
126Kの音源のリンクはこちら
※UGCとはUser Generated Content の略で、特定の楽曲を使って不特定多数のユーザーが投稿した動画の数を指します。
ちなみに楽曲使用数(UGC数)はこちらの方法で確認できます。

↓↓

1.バズの拡大経路
まず始めに、UGCというのは複数の界隈を渡って広がっていくものなので、初期のバズからそれ以降の拡大までどのようなきっかけでどんな界隈に広がっていったのかを分析することが重要になります。
それを紐解くべく、弊社では【イノベーター理論】を用いて分析をしております。
イノベーター理論とはサービス等の市場での普及率を示すマーケティング理論の一つになります。
※詳しくは以下のサイトを参照ください。
今回もそれに倣い拡大経路の順を以下の3つに区分してリサーチいたしました。
それぞれの区切りは本家リリースから投稿までの期間で判断します。
ざっくり以下の通りの認識で今回は分析します。
(1) イノベーター (一番最初に広まったきっかけ)
→今回は最初に振付をした投稿
(2) アーリーアダプター (初期段階で拡散されたきっかけ)
→今回は(1)から約20日以内に投稿されたもの
(3) アーリーマジョリティ (早期段階でさらに拡散されたきっかけ)
→今回は(1)から約20日以降に投稿されたもの
(1)イノベーター
今回のイノベーターは、11/22に投稿された川口瑠々奈さんの振り付けダンス動画で、現在は116万回再生となっています。
@ururu_2525 可愛い曲振り付けた🎧🩷「アイサレタイ」@Yumcha
♬ オリジナル楽曲 - Yumcha - Yumcha
また、翌日の11/23には、同事務所のもかさんと双子ダンスver.を投稿しています。
@ururu_2525 もかと踊ったよ💓💓#双子ダンス #るるもか #カルドラマ @Yumcha @もか☁️🍈
♬ オリジナル楽曲 - Yumcha - Yumcha
2人は所属事務所のVAZが運営している登録者40万人越えのYouTubeチャンネル「CUL DRAMA/カルドラマ」に出演しており、もかさんはTikTokでも40万フォロワーを超える人気インフルエンサーです。
しかし、本楽曲は同じようにインフルエンサー起点で広まるダンス動画のUGCとしては、広まるスピードが比較的ゆっくりだった印象です。
なぜUGC数が100Kを超える大ヒットとなったにもかかわらず、UGCが広まるのに時間がかかったのでしょうか?
・アーリーアダプターの界隈との接続の悪さ
端的にいうと『使ってバズるイメージが湧きにくかった』のが、アーリーアダプターがなかなか現れなかった理由です。
大前提としてUGCが伸びるということは、
・クリエイターがその曲を使いたいと思う理由
・視聴者目線でもそのコンテンツや曲を好きになる理由
この2つが揃っている必要があります。
つまり今回は、クリエイターが使いたいと思う理由が弱かったということですね。
使い方が提示できた後には伸び始めたのですが、
それがしっかり開拓されるまでは伸びるのが遅かったと言うことです。
こういうタイプのリリース直後の初速がイマイチで後伸びするタイプの曲は曲自体(歌詞やリズムなど)にTikTokトレンド性が薄いが、それを使った企画にトレンド性がある場合によく起きる現象で、本楽曲もその典型と言えます。
我々がリリースしたTikTok音楽攻略の教科書の冒頭でもお伝えしましたが、
本質的な意味でTikTokで流行っている曲とはなく、
TikTokで流行っている文化がありそのBGMが流行っていると解釈するのが正しい認識だと我々は考えております。
つまり本楽曲をBGMとする文化が見つかるのに少し時間が掛かった曲であり楽曲を聴いただけだと文化をイメージしづらかったが、一度文化が定着すればそれは流行るポテンシャルがあるものになったと言うことです。
楽曲PRと考えすぎてしまうとドツボにハマります。
初速がイマイチだった本楽曲ではありますが、双子ダンスを起点にじわじわと音源を使って伸びる人が増え始め、大きなヒットに繋がっていったというのが今回の大まかな流れになります。
・双子ダンスから伸びた理由
ここで興味深いのは、最初に投稿された通常のダンスver.ではなく、双子ダンスver.が先に伸びたという点です。
まず、伸びる双子ダンスの特徴とはなんでしょうか?
結論からいうと「2人で踊ることに意味がある振り付け」で、細分化すると次の3点です。
①左右対称の振り付け
②別々に動く振り付け
③協力する振り付け(①と②の混合)
下記動画の双子ダンスが分かりやすいため、歌詞を引用して詳しく見ていきます。
@0808sakura 懐かしの双子ダンスです @徳川 家康 (20)
♬ Joshi - Ami Sakaguchi
君がいなくなったって→①
ご飯はおいしい
ちゃんと味もする→①③
君はロックンロールが好きだと言った
Ah-ah-ah→①
二人気づけば→②
手を繋いでいた→②③
よね→①
このように、伸びている双子ダンスには上記特徴が散りばめられています。
また、上記特徴を取り入れることで伸びた楽曲もあります。
2023/9/1投稿
@aiaiai13975 かわいいかわいーれいと #07 #高校生 #fyp #オススメ #双子ダンス @向井 怜衣
♬ オリジナル楽曲 - はーと - はーと
↓↓
2024/5/20投稿
@yunahinakolove jk時代のtiktokたーっくさん残ってるからどんどんあげてく💕💖💕💖#一生友子
♬ オリジナル楽曲 - はーと - はーと
元々はーとさんが投稿した振り付けでは、1人で踊る振り付けを2人で一緒に踊ったものでしたが、一生友子さんの投稿した振り付けには上記特徴が取り入れられており、一気にUGCが広まりました。
川口瑠々奈さんともかさんの双子ダンスも、③は無かったものの①と②の特徴を取り入れていたからこそ、2人で踊る意味が生まれ、クリエイターに使うイメージを湧かせることができたといえるでしょう。
【+@】イノベーターの影響力が小さいことの弊害
まず前提として、川口瑠々奈さんは2023年7月7日からTikTokの投稿をスタートしています。
過去にYouTubeチャンネル「ニコラTV」のMCをやっていたこともあり、若年層からの知名度こそあるものの、影響力は多くのTop TikTokerに比べると見劣りしてしまう印象です。
この個人の影響力の小ささは、すぐにUGCが広まらなかった理由の1つといえるでしょう。
例えば、大人気TikTokerの桜さんが1/13に投稿したマカロニの振り付けダンス動画は、すぐに様々なクリエイターがダンスのUGC動画を投稿し、UGC40K超えのヒットとなりました。
@0808sakura 急に思いついた振り付けが可愛すぎた 久しぶりのオリジナルたくさん踊ってね🩷
♬ マカロニ 1.25x ver - shota
もちろんダンス自体が良いことは大前提ですが、個人の影響力が大きくなければこのスピード感でUGCが拡がるのは難しいです。
また、2025年2月頃に流行った乃紫さんの「バレンタイン決戦」では、もかさんの振り付けでUGCが広まりました。スピード感も早く、1週間以内に多くの有名クリエイターがUGC動画を投稿しています。
@moca_2812 おすすめ流れてきて曲に一目惚れしたので振り付けしてみました💗🍫#乃紫 #バレンタイン決戦 @乃紫(noa)
♬ バレンタイン決戦 - Sped Up - 乃紫
よって、単に文化として双子の方が受け入れられやすかった、という話の他に、単純に川口瑠々奈さんが1人で踊った通常ダンスver.よりも、影響力のあるもかさんとコラボした双子ダンスver.が先に広まった、ということも当然考慮しなくてはいけません。
ここでいう「影響力」とは単純なフォロワー数や直近動画の平均インプレッション数などの他に他のインフルエンサーへの影響力がどのくらいあるか?という点が争点となります。
影響力を単にフォロワー数で比較できるものではないのも注意が必要です。
これを案件委託として考えた時に、楽曲とマッチしているクリエイターや、広めたい界隈を視聴者に抱えているクリエイターを選ぶのは非常に重要なことですが、そもそもの影響力が小さい場合、初速が遅くなってしまうorアーリーアダプターに繋がらない可能性があるということです。
改善策としては、委託するクリエイターの数を増やす、明らかに影響力の大きいクリエイターを選ぶということが挙げられますが、費用に対しての効果が見合わないことの方が多いです。
そう考えると、本レポートでは何度もお話ししていますが、アーティスト本人のアカウントを育成しておくということが1番強いといえます。
イノベーターに本人投稿が最強である理由については、下記記事の【補足】に詳しく記載していますので、ぜひご覧ください。
(2)アーリーアダプター
ここからアーリーアダープターとして、流行に敏感な3つの界隈へ拡がっていきます。
①女子高校生界隈
まずはじめに女子高校生界隈へ双子ダンスver.のUGCが波及していきます。
特に投稿が早かったのは11/29に投稿されたまゆうなさんで、川口瑠々奈さんも動画にコメントしています。

その後、12/6に投稿されたあいさきさんの動画が現在80万回再生となっています。
@ai._.saki0108 週1以上会わないと生きてけない。#福岡 #親友 #jk #制服 #双子ダンス #イルミ #冬
♬ オリジナル楽曲 - Yumcha - Yumcha
本楽曲にかかわらず、2024年は2人で横画面で踊る双子ダンスが流行りました。
このフォーマット自体は昔からありましたが、一生友子さんがTikTokやYouTubeで人気になったことにより、双子ダンスが一般化したイメージです。
@yunahinakolove jk時代のtiktokたーっくさん残ってるからどんどんあげてく💕💖💕💖#一生友子
♬ オリジナル楽曲 - はーと - はーと
特に女子高校生が友達と共同アカウントを作るパターンが非常に多く、川口瑠々奈さんともかさんの動画はこの界隈に刺さったということですね。
②今日好き界隈
次に、①の界隈と親和性の高い今日好き界隈へと拡がっていきます。
「今日好き」とは『今日、好きになりました。』という現役高校生達の恋愛リアリティショーで、ここではその番組を通して人気となった女優さんやインフルエンサーを今日好き界隈と位置付けています。
視聴者に中高生が多いため、中高生の中で流行っていることにいち早く反応する界隈ともいえます。
12/3に投稿された実熊瑠琉さんの動画は現在58万回再生
@kuma_99 かわいい曲みっけ🎀🤍ྀི
♬ オリジナル楽曲 - Yumcha - Yumcha
12/7に投稿された川野 明愛さんの動画は現在275万回再生
現在、日本のTikTokユーザーは10〜20代が1番多くなっており、その層に絶大な人気を誇るのがこの今日好き界隈です。
ABEMAは、2025年1月13日(月)より放送を開始した『今日、好きになりました。卒業編2025 in ソウル』が、2017年の初回シリーズ放送以降、これまでに放送した『今日好き』全68シリーズのうち歴代最高視聴を記録したと発表しており、まだまだ衰えを知らない人気番組となっています。
つまり、この界隈が取り上げるということは、多くの女子中高生が目にするということであり、今後も流行やバズを牽引する界隈といっても過言ではないでしょう。
③流行敏感女子界隈
次に拡がったのは流行敏感女子界隈です。
12/9に投稿されたyukaさんの動画は現在128万回再生
@opanchuusagii0 みんな可愛いしみんな幸せになるべき人間!もっともっと強気で恋愛していいんだよ!!😭🩷当たり前にあなたより良い子が居るはずなんてない‼️
♬ オリジナル楽曲 - Yumcha - Yumcha
12/12に投稿された柚愛さんの投稿は現在56万回再生
彼女たちは次期TOPインフルエンサー予備軍ともいえ、それゆえに「もっとバズりたい」といった欲求が強いです。
そのためバズりやトレンドには敏感で、大手よりも早く楽曲を取り上げる傾向にあります。
しかし、今回は広がり方が双子系が先行したので参入するまでに少し時間がかかった印象です。
ある意味①と②の界隈も流行敏感女子ではあるのですが、今回はよりUGCの流れを明確に示す目的で細分化させていただきました。
(3)アーリーマジョリティー
アーリーマジョリティーに入ると、ここからは一気に幅広い界隈へ広がります。
①TopTiktoker界隈
イノベーターが登場して20日後からTop TikToker界隈にもUGCが広がり始めます。
人気のTikTokerは毎日投稿しているクリエイターが多く、日々ネタを探しています。また、クリエイター同士のコラボも積極的にするため、2人で撮影することも度々あります。
その中で、今回のように1人でも2人でも撮れる伸びている音源というのは、一石二鳥で使いやすい音源であるといえます。
・双子ダンスver.
12/12に投稿されたMINAMIさんの投稿は現在373万回再生
@minami.0819 載せるタイミング失ったやつ🙄@るいか
♬ オリジナル楽曲 - Yumcha - Yumcha
12/27に投稿された一生友子さんの投稿は現在657万回再生
@yunahinakolove 聞いてください!!YouTube年内目標30万人なんですけど、あと3.8万人の方に登録して貰わないといけません😭かなりピンチです😭😭😭みなさんチャンネル登録してみんなで奇跡をおこしましょう!拡散もたくさんまってます!✨#一生友子
♬ オリジナル楽曲 - Yumcha - Yumcha
・通常ダンスver.
12/14に投稿された徳川家康さんの動画は現在346万回再生
12/16に投稿されたふーりーさんの動画は現在850万回再生
@fuuuuu_ri 垢抜けで可愛くなった自信は1番あります!!^_− ☆ #CUTIESTREET #きゅーすと #古澤里紗
♬ オリジナル楽曲 - Yumcha - Yumcha
TIkTokトレンドの行方を決める彼女らに使われるかどうかは、かなり重要な分岐点となってくるので、ここで通常ダンスver.も双子ダンスver.も使われたということが、UGCの伸びに大きな影響を与えました。
②イケメン男子界隈
次にイケメン男子界隈にもUGCが広がります。
12/19に投稿されたりくさんの動画は現在304万回再生
@riku_yamada0827 山田涼介さんにあと3分とかでフォロワー抜かされそうです。
♬ オリジナル楽曲 - Yumcha - Yumcha
12/23に投稿された林京介さんの動画は現在123万回再生
彼らは自分の「かっこいい」を見せたいわけですが、その「かっこいい」の中に「可愛い」要素を混ぜるとギャップとしてファン化に繋がります。
慣れてない可愛いダンスを頑張って踊ってみました感が出るため、本楽曲のような女性寄りの曲でも参入していきます。
③美容界隈
ダンスのUGCとは別になりますが、楽曲の歌詞と親和性の高い界隈のため紹介させていただきます。
1/3に投稿された栞麗さんの動画は現在355万回再生
@salt__.xx 新年爆モテメイク
♬ I Want To Be Loved - Yumcha
1/3に投稿されたりおにさんの動画は現在128万回再生
本楽曲は、Yumchaさんが自分磨きを頑張る女子に聴いてほしいと発信しており、歌詞の中にも「垢抜けてリベンジ」と入っています。

まさに美容は自分磨きや垢抜けの手段であり、本楽曲との親和性が高いといえます。
今回のように特定のテーマや単語があることで、界隈によっては使用しやすさが変わってくるので、楽曲制作時のワードチョイスもUGCに大きくかかわってくるでしょう。
2.楽曲の音楽的特徴
ここまで楽曲がバズった理由に対する外的要因を解説してきましたが、やはりそれだけではバズは
生まれません。
TikTokでUGCがバズるということは、楽曲そのものが何度も聞きたくなる魅力的な音楽要素を持っているとういうのが非常に重要です。
この項では、楽曲自体の魅力、バズが生まれた内的要因を解説します。
(1)片思いだけど明るくかっこいいギャップ
本楽曲は、自信と不安が入り混じった女性の片思いソングとなっています。
片思いソングといえば
2022年リリースの「貴方の恋人になりたい/チョーキューメイ」
@ilrvxl 長髪中性だけど付き合って
♬ 貴方の恋人になりたい - チョーキューメイ
2023年リリースの「君の好きな人が私だったらいいな / 手がクリームパン」
@creampan1222 もし君の好きな人が私だったら、幸せなんだろうな #オリジナル曲 #作詞作曲 #おすすめ #おすすめにのりたい #プレイリスト紹介 #失恋 #片想い #失恋ソング #曲紹介 #恋愛
♬ Wishing I'm her - 手がクリームパン
などの楽曲が挙げられますが、バラードや暗めの曲が多く、ボーカルアレンジも想いを告げられない女性をイメージさせるような細く綺麗めな歌声になりがちです。
しかし「アイサレタイ」は、明るくアップテンポなビートで構成されています。
また、Yumchaさんの歌声は可愛いさの中にオシャレさやかっこよさが入っており、そのギャップが多くのファンの心を掴んでいます。

(2)恋する乙女が共感する歌詞
「アイサレタイ」というシンプルな欲求や「私よりいい子がいるはずないのに」という少し強気な自己アピールがありつつも、AメロBメロでは不安な気持ちが描かれており、その不安を払拭するために垢抜けようとする健気さも垣間見える。そんな等身大の女の子を描いた歌詞に、コメント欄でも共感の声が多数見受けられます。

また、YumchaさんはInstagramの最初の投稿で次のように自己紹介を綴っています。
恋する人に寄り添うシンガーソングライター。
生きるために食べてゆくように、私達は恋をしてゆく。
その一瞬一瞬は日々の中で忘れ去られてしまうけれど、
食べたものがちゃんと自分になってゆくように、
恋したことだって自分になってゆく。
そんな瞬間を残してゆけたらいいなと思う。
まさに、この言葉を体現する歌詞を書いていることが分かりますね。
TikTokで人気のシンガーソングライターといえば、コレサワさんや乃紫さん、『ユイカ』さんなどがいますが、共通しているのは女性から共感を得る歌詞にあります。
UGCの拡大において、女性からの共感が大きな影響をもたらしていることは間違いないでしょう。
「等身大で普通の女の子が強く共感できる描写」については、下記記事でも記述しておりますので、ぜひご覧ください。
3.楽曲構成の整理
ここまでのセクションで各界隈でUGCが伸びた理由、そしてそれを印象付ける音楽要素をご理解いただけたかと思います。
しかし、幅広い界隈において再生数が安定して伸びるということは、単に楽曲の印象が界隈の世界観とマッチしているだけでは不十分です。
TikTokという短尺動画の中で満足度が得られる作品でなくてはならないため、本セクションではその楽曲構成について触れていきたいと思います。
(1)冒頭の「私よりいい子がいるはずないのに」
「私よりいい子がいるはずないのに」と冒頭の入りでワンフレーズ入れるという手法は直感的に気になってしまい、スワイプ防止に寄与するというシンプルな効果が期待できます。
これは心理学の「カクテルパーティー効果」の応用です。
カクテルパーティー効果とは、カクテルパーティーのような騒がしい空間でも自分の名前を呼ばれると何故か気付いてしまう効果のことであり、
スワイプすれば永遠に動画が出てくるカオスな市場はまさにカクテルパーティー。
その中で冒頭で「私よりいい子がいるはずないのに」と一言言われることで、つい指を止めてしまうのです。
これは冒頭で使うのに非常に効果的です。
さらに「私よりいい子がいるはずないのに」というフレーズに合わせて、バックの演奏が一瞬消える"ブレイク"が入るため、よりボーカルのインパクトが強調されています。
このような【キャッチフレーズ + ブレイク】のパターンは、TikTokの歴史的には2021年辺りからずっと数多くのHit曲で使われている再現性の高い手法です。
直近では「かわいいだけじゃだめですか?/CUTIE STREET」が有名ですね。
他にも過去ヒット曲では
・「わたしの一番かわいいところ / FRUITS ZIPPER」→「ねえねえねえ!」
・「最上級にかわいいの!/ 超ときめき♡宣伝部」→「 だって今!」
・「シカ色デイズ / シカ部」→「 ぬん!」
などで似た手法が使われており、これは冒頭の離脱を防ぐのに役立つ鉄板スタイルです。
また歌詞のフレーズ開発も優秀で、
自分の好きな人にこんなこと言われたら「そんなことないよXXちゃんは可愛いよ!」と言いたくなります。
実際ふーりーさんはキャプションに『垢抜けで可愛くなった自信は1番あります!!』と書いており、それに対してこのようなコメントに最多いいねが集まっています。

コメントしたくなる、インフルエンサーとコミュニケーションがしたくなる歌詞の開発に成功していたといえるでしょう。
(2)オチを強調するキメ
「私よりいい子がいるはずないのに」という印象的な冒頭に対して、「私を君の彼女にしてみない?」という問いかけを最後に持ってきており、一文にまとめると「私よりいい子がいるはずないから、君の彼女にしてみない?」ということになります。つまり1番強調したい部分ですね。
「か・の・じょ・に・し・て・み・ない?」というように一語ずつキメを入れていることで、この強調したい部分を引き立てているのが分かります。
後半にコメントを返したくなる要素を入れる戦略もうまく機能していた例と言えます。
4.時代背景における本楽曲の立ち位置
ここまで各界隈でUGCが伸びる理由、それを印象付ける音楽要素、TikTokという短尺に適正化された楽曲構成をヒット理由としてお伝えしてきましたが最後に重要な点がもう一つ。
それは「時代の流れにどうハマっていたか」という視点です。
昭和と現在で流行っている楽曲が全く異なるように、時代と共に求められるサウンドは変化していきます。それは数ヶ月〜半年〜1年などの細かなスパンでも同様で、トレンド全体の流れの中でその楽曲がどのような立ち位置でヒットしたのかを知ることは非常に重要です。
本セクションではそれを見ていきましょう。
【バズっている楽曲トレンドに忠実なアレンジ】
本楽曲を聴いた時に感じたのは、なんか耳馴染みがあるなという『既聴感』です。
『既聴感』に関しては、下記記事にて詳しく解説しています。
実際に本家動画のコメント欄には、様々な楽曲やアーティストの名前が挙がっています。
なかでも面白いなと思ったのは「プリ機」のコメントで、私も「なるほどな」と感じました。

ただ今回はTikTokにおける楽曲レポートですので、TikTok内の楽曲で本楽曲から感じた『既聴感』を解説していきます。これまでのセクションのまとめのような立ち位置でみていただければと思います。
・「かわいいだけじゃだめですか?/CUTIE STREET」
前のセクションで書いたように冒頭の入り方が非常によく似ていますし、不安と自信が入り混じった女性像もどことなく似ていると感じられます。
CUTIE STREETメンバーの動画が音源TOPを取っているということから、視聴者も同じような『既聴感』を感じているのではないでしょうか。
↓「かわいいだけじゃだめですか?/CUTIE STREET」の過去レポートはこちら
・「元彼女のみなさまへ / コレサワ」
本楽曲は片思いソングでありながらアップテンポでキャッチーな曲となっていますが、「元彼女のみなさまへ」も、タイトルは重めのテーマでありながらポップでカントリー調の軽快なサウンドとなっています。このテーマとサウンドのギャップが『既聴感』を感じさせています。
↓「元彼女のみなさまへ / コレサワ」の過去レポートはこちら
・乃紫
乃紫さんに関しては、特定の楽曲というよりも歌声の『既聴感』がありました。
Yumchaさんも乃紫さんも、音楽的特徴のセクションで話したようなオシャレさやかっこよさがあって芯のある歌声をしています。
このように本楽曲は2024年のトレンドを上手に取り入れ、そこにYumchaさんのワードセンスやサウンド作りが合わさることで今回のバズりが起きたと言えるでしょう。。
ある意味2024年バズったトレンドの集大成の曲が年末ラストに出たといってもいいかもしれません。
勘違いしてはいけないのが、流行を全部取り入れたからといってバズるわけではないということです。
歌声やブランディングとの相性、まだ流行りが続いているのかなど様々な要素を加味した上で、上手く取り入れていくことが重要です。
5.バズった結果得られたもの
楽曲ヒット理由の分析は以上となりますが、そこからアーティストにどんなリターンがあったのかがアーティストをプロデュースする上では重要になるポイントです。
このヒットをきっかけに一体どのような影響があったのでしょうか?
【成果】
YouTubeの再生回数は合計800万回再生を超えています。
・Yumcha『アイサレタイ』【Lyric Video】 442万回再生
・『アイサレタイ』 344万回再生
・【MV】アイサレタイ / Yumcha 10万回再生
また、TikTokの楽曲チャートでは1位を獲得しました。

現在TikTokにて『アイサレタイ』の続編となる楽曲『私は今日から君の彼女。』をワンコーラスずつ公開しており、3/22(土)にリリースが決定しています。
@yumcha_tiktok 『アイサレタイ』の続編!3/22(土)リリース!🐼✨『私は今日から君の彼女。』 #オリジナル曲 #作詞作曲 #かわいい曲 #アイサレタイ #カップル #fyp #バズりたい
♬ オリジナル楽曲 - Yumcha - Yumcha
『アイサレタイ』だけのバズりで終わらないよう、TikTokでの自己プロデュースや各SNSでの戦略を練っていけるかが今後の課題となりそうです。
6.再現性のある要素
(1)テーマ×サウンドで魅せるギャップ
「元彼女のみなさまへ / コレサワ」の元彼女へのメッセージというテーマや本楽曲の片思いというテーマのような、暗めのバラードをイメージさせるテーマに対して、あえて明るくポップなサウンドを組み合わせるという手法は今後も効果的だと推察しています。
ギャップというのは、視聴者が手を止めたり聴きたくなる要素として大きい割合を占めるので、どこでギャップをつけるかを考えて楽曲制作するのもありかもしれませんね。
(2)女性の共感を集める恋愛曲
共感を集めるには等身大の女性像を描き、視聴者やクリエイターが自分のことを歌っているかのように感じることが重要です。
また、等身大というのは時代によって変わっていくものです。本楽曲でいえば「沼らせたい」「ノートに流してる曲」という歌詞は、現代を生きる等身大の若い女性だからこそ共感できる歌詞といえます。一昔前であればInstagramのnoteではなくLINEで流してる曲と歌っていたでしょうし、来年再来年はまた変わっているかもしれません。
時代の変化を読み取りキャッチしていくことが、女性の共感を集めることに繋がっていくのです。
