【和陰少女】第十一幕『夜二少女』|和陰少女|オリジナル小説|連載|ダークファンタジー|和風
前回
紫乃としろが老人の家で寝ている頃。
月が落ちてきそうなほど大きく出た夜。
洞窟の先の森を一人の侍が歩いていた。
秋口に入ったというのに、
周りはジメジメと湿気ており、
時折、木々の間をぶるっとくるような風が吹き、
青っぽい匂いを運んでくる。
行灯と月の光を頼りに歩いていると、
自分の来た道から声が聞こえた。
「お侍さーん。
あーそびましょ。」
「ヒャッ!……」
「ふふふっ、驚きすぎです。」
振り向くと、少女が立っていた。
月に照らされて姿がゆっくりと、
闇夜に現れた。
黒い肩まで伸ばした艶のある髪。
頭の後ろで小さく髪を束ねる赤い髪紐。
今日の夜空ほど黒く吸い込まれそうな瞳と
山吹色の着物に赤をベースにした黒のラインの入った帯。
そして、両手に抱える人の頭ほどの大きさのだるま。
少しいいところの娘のようなその服装が、
闇夜と奇妙なコントランストを生んでいた。
「……なんだ?童か?
こんな森で何をしてる?」
「内緒です。
そんなことより、遊びましょ?
あ、私が鬼をしますね。」
「おい、こんなところで何をしてるんだ。
親御も心配しているだろう。
こんな夜に少女が……こんな夜に……」
あっけらかんとした態度に流されていたが、
少女の出歩くには不自然な時間帯に、
侍が警戒を強め、そろりと刀に手を伸ばす。
「じゃあ、始めますよー。
だーるまさんが……」
少女はその様子を流し目で見つつ、
特に言及することもなく木の方を向き、
童遊の開始の言葉を言った。
「おい、貴様。
何者だ!」
「こー……」
侍が刀を抜きすり足で少女に間合いを詰める。
「……ろん……だ」
侍が刀を振り向いた瞬間、
少女が微小を浮かべゆっくりと振り向く。
その瞬間、少女の背後から無数の手が伸び、侍の手足を掴んだ。
「なっ!……
き、貴様!やはり……妖怪か!!
はなせ!!」
少女は首を傾げ、呆れるように一言言う。
「だめですよぉ。動いたら。
お侍さんの負けです。
負けたら、鬼になるんですよー。」
ーーバキ、ボキッ
侍の手足が飴細工のように捻り曲がる際に出る音が、
森にこだまする。
「これで、動けないですねー。」
少女は侍の足を掴むと、
ズルズルと侍の血で赤い線を引きながら、
森の奥の闇に消えていく。

少し経って、森の奥の沼のほとりで、
先ほどの少女が、沼の中にいる同年代くらいの少女に話しかける。
白い髪に毛先だけ緑に染まったおかっぱ髪の
少女は白に近い薄緑の着物をたくし上げ、
沼のに膝まで浸かり、編笠を使って魚を取っていた。
「翠華さーん。
今日の分終わりましたぁ。」
「おー。おつかれー。
で、何人捕まえた?」
「そうですねぇ、
ひー、ふー、確か6人くらいですね。」
「そうかそうか。
まぁ、実験はあとでいいかぁー。
トモヨー、それよりお腹へったー。」
「ふふっ。
ご飯にしましょうか?」
「やったぁ!
ほら、こんなに大量に魚取ったぞ!」
「まぁすごい!
美味しく焼きますね。」
「やったー!
あ、あたし大きいのな!」
二人組の少女はハシャギながら、
沼のほとりにある大きの木の根の間にある空洞に消えていく。
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