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【和陰少女】第十幕『異人鬼』|連載小説||和風ダークファンタジー|妖怪|美少女|AIイラスト

前回

#創作大賞2026
#エンタメ原作部門


家に入るとしろはキョロキョロとしながら広い土間を軽く歩いて周り、
土間の横の6畳くらいの板張りに腰を下ろした。

「紫乃の家と違うの。」

「あー、そうねぇ。
 あたしんちは部屋多いからね。」

「こういう家が一般的なのか?」

「まぁ、そうねー。
 大体こういう家が多いわねー。
 土間があって、この広間の横には小さめのへやていう部屋があって。
 あ、ほらあそこに木戸あるじゃない?あそこが納戸。
 あそこで寝たり物置にしたりするのよ。」

「ほぅー。」

しろは足をバタバタさせながらキョロキョロと依然として家を見回してる。

「しろさんには珍しいですかな?」

「そうじゃのー。」

「あんたは神社に住んでたからたしかに珍しいかもねー。
 すっごい大きい本殿にいたんでしょ?」

「ほぉ、しろさんは神職関係なのですかな?
 それはご立派なお部屋でしょうなー。
 いや、敷物すらなくてお恥ずかしい。」

「いや、こんなに広くはないの。」

「そうなの?」

「まぁ、わしの部屋はもとは倉庫じゃったからのー。」

「え?……」

「なんか、よいなこの家。
 あ、そんなことより団子じゃ!
 はよ持って来ぬか!」

「あぁ、そうでしたな。
 少々時間かかりますので、どうぞどうぞ、奥に。
 何もありませんが楽になさってください。」

「うむ。」

そういうと老人は台所で火を起こし始めた。

ーーガラッ

「ちょっ、しろ!
 だめよ勝手に納戸開けちゃ!」

「そうなのか?」

「構いませんよー。
 どうぞ自分の家と思ってご自由に。」

老人がかまどに息を吹きかけながら答える。

「なんだ、良いらしいぞ。」

「あんたほんと遠慮ないわねー……
 あ。あたしも入るー。」

部屋に入ると紫乃は奥にある木箱を勝手に開け始めた。

「どっちが遠慮ないんじゃ?」

「許可もらったからいいでしょ。
 あ、これ何かしら?
 画集?」

「何じゃ?本か?
 わしも見たい!」

「あ、ちょっと!
 あたしの画集。」

「お主のではないじゃろ。」

「上手な絵ねー。
 有名な画家のかしら?」

「そうじゃのー。」

「それは倅の絵ですな。」

老人が頭の後ろでつぶやく。

「にゃっ!!驚くではないか!!」

「ほっほっほっ。いやいや、失礼。
 あ、団子ができましたので。
 どうぞこちらへ。」

広間に行くと大皿に団子と思しき何かが大量においてあった。

「だんご?……」

しろがキョトンとしている。

「はい、団子にございます。」

「このネチネチの潰された握り飯が?……」

「はい、私のお手製の団子です。
 ささ、遠慮なく。」

しろはご飯を練り固めたような白い団子?を一つそっと皿から取り上げ、
黒豆のようになった目で呆然としている。

「まぁ、いつも食べてる団子はもっと滑らかなだけだしね。
 ほぼ同じよ。
 良かったじゃん、いっぱい作ってもらえて。」

「これ……すごく……ネチネチ……しておる……」

「相当ショックみたいね。
 そういえば、おじいさん。
 息子さん、絵すごく上手ね。」

「えぇ、画家を目指してたんですよ。」

「へぇ、なるほどねー。
 ねね、この絵は?何の絵?」

「あぁ、これですか。
 これは河童の絵ですな。」

「河童?」

「はい。
 それこそあの洞窟の先に昔河童が住んでおってですな。
 たまに倅はそれを描いてたようですな。」

「へぇ、河童なんていたんだ!
 まだその河童いるの?
 その子達に聞けば息子さんのこととか分かるんじゃない?」

「いえ、それがもうおらんのです。」

「えー?なんで?」

「6,7年ほど前ですかな。
 幕府があの辺りを開拓しはじめましてな。
 河童達に立ち退き料を払ってどいてもらったようですな。
 河童も先代の神様の方針で人間と小競り合いを嫌っておりましたからな。
 かなり素直に立ち退いたの聞いております。
 今はどこに行ったかは知りませんなー。」

「ふーん、そうなんだー。
 先代の神様ねぇ……
 この横でずっとネチネチしてるのが……」

「ん?しろ様となにか関係が?」

「ううん、特に関係ないわ。」

「あ、そういえば。
 秋になると彼岸花がきれいでしてな。
 沼の名前の赤沼もその彼岸花にちなんだものと聞いておりますな。
 今はもう開拓の際に無くなってしまって見る影もないですが、
 未だにお土産として赤い彼岸花の折り紙がありましてな。
 えーっと、あ、これですな。
 どうぞ、差し上げます。」

老人は箪笥の引き出しから紙でできた彼岸花を紫乃に渡した。

「わー。ありがとうおじいさん。
 かわいいわねこれ!
 でも、残念ねぇー。
 ねぇ、幕府は何をやろうとしてたの?」

「そうですなー。
 詳しくは存じませぬが、人が住める場所を増やすというのを良く聞きましたな。
 あとは何かを探してるとか、育ててるとか、ただ単に河童がじゃまになったとか。
 まぁ、どれがホントかも定かではない噂ですな。」

「ふーん。
 まぁ、息子さんの情報とは関係あるかわかんないわねぇー。
 あ、そうだ。
 最近物騒って言ってたけど、何かあるの?」

「えぇ。
 実は最近、昼間お話した失踪事件以外によく妖怪騒ぎがありましてな。」

「そんなのわりと外れの村だと多いんじゃないの?」

「まぁ、確かに行商人が盗みや食べ物を子鬼に奪われる程度の事件はちょこちょこはありましたが、
 最近は人死などのかなり重い事件が多くてですな。」

「それは怖いわね。
 住んでる妖怪が変わったのかしら?」

「えぇ。
 ただ、変なのが妖怪が変わったというか、
 見たことのない色んな種類の妖怪が出るようになった感じですな。」

「いろんな妖怪が住んでるんじゃなくて?」

「うーむ、そうではなく。
 なんというか妖怪とも言い切れぬ、人の形をしたような何かが増えたという方が正確ですな。
 大抵幕府の方が早々に処理されるので、私もちゃんと見たことはないですが……
 ほら、お昼の騒動もかなり迅速に対応されていたでしょう?
 あんな感じに、遺体も早々に引き上げられてしまう状況ですな。」

「人みたいな妖怪……
 うーん、そうは言っても鬼も鈴女ちゃんも人っぽいしなー。」

「まぁ、たしかにそうですな。
 ただ、鬼のような決まった特徴があるわけでなく、なんかこう……
 ちょっと異形な感じらしいですな。
 なのでここらでは異人鬼(いじんき)と呼んでおりますな。」

「異人鬼ねぇ……」

「……おっと、暗い話になりましたな。
 しろさんも退屈そうですし、お風呂でも沸かしますかな。
 もう日も沈みますし、泊まっていかれるでしょう?」

「あ、ホントだ!
 おじいさんありがとー。
 お言葉に甘えるわー。
 ちょっとしろ、あんたいつまでネチネチしてるの!
 ほら、さっさと食べる!!」

「ムゴッ!?」

紫乃はしろの口に無理やり団子もどきをねじ込んだ。

「んー!んー!?ん……ゴクッ!……うまいっ!
 なんじゃこれ、うまいぞ!!
 中に入っておるのは何じゃ!?」

「ほっほっほっ。
 お口にあってよかったです。
 中に入っているのは自家製の味噌ですな。」

「なるほど……
 これならいくらでも食べれるの!
 それはそうと……
 おい!紫乃!お主わしを殺す気か!
 喉に詰まったらどうする!」

「あんたがいつまでもネチネチしてるからよ!」

「なんじゃと!このっ!お主にも同じようにしてやる!
 ほら!口を開けよ!!」

「嫌よ!自分で食べるからお構いなく!」

「ほっほっほっ、いや。
 久々に騒がしいですなぁ……」

ーー30分後

「お二人ともー。
 お風呂ができましたよー。
 どうぞ、冷めないうちにお入りなさい。」

「はーい。
 おじいさんありがとー。
 ほら、しろ行くよ。」

「わしはまだ食べておる。」

「呆れた……
 あんたまだ食べるの?」

「もったいないからの。
 それに、おむすびと団子を両方食べてるようで、
 これが好きじゃ。」

「ふーん。
 じゃあ、私先にお湯もらっちゃうわねー。
 いっちばん風呂ー♪
 ふふーん♪ふーん♪」

紫乃は鼻歌交じりにスキップをしながら風呂に向かった。

「そういえばしろ様は神職関連の方ですかな?」

「うむ、そうじゃな。」

「ほぉ……やはり気品がありますなぁ。」

「ふふん。そうじゃろ!そうじゃろ!」

「その食い意地張ったやつのどこに気品があるのよー」

紫乃が脱衣所から野次を飛ばす。

「うるさい!お主はさっさと風呂で茹で上がっておれ!」

「ほっほっほっ。
 しろ様のその……蛇さんはその……」

「色抜けか?
 やはり……好かんか?……」

「ふっ。そんな顔をなさらないでください。
 おきれいですよ。
 端正な顔によくお似合いです。
 それに、白蛇は幸運の象徴ですからな。」

「そうか!うむ、幸運の象徴か。
 わしにぴったりじゃ!」

「えぇ。
 ぴったりです。
 それに先代の神様も白蛇様。
 誇りなされ。
 私はただ、先代様にその頭の蛇が似ているなと言いたかったのです。」

「ん?それはわしじゃな。」

「ん?」

「わしがその神じゃ。
 ちっこくなってしまったがの。」

老人は頭の先から足の先までを一旦流れるように見て微笑む。

「プッ……
 はい、その気持ちが大切ですな。」

「おい!信じておらぬじゃろ!
 何故じゃ!?
 似ているとお主も言ったではないか!
 なぜ誰も一回で信じぬのじゃ!!
 おい!笑うな!」

「ほっほっほっ。
 ほんとに久しぶりですなぁ……こんなに笑うのは。」



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