【和陰少女】第九幕『赤沼村』|オリジナル小説|連載|ダークファンタジー|和風
前回
ーー昼過ぎ頃、紫乃たち一行は赤沼村に到着した。
村には大きな一本の大通りとその両端に藁葺の民家や民宿が並んでいる。
山に入る手前の唯一の村のためか民宿の割合が目立つ。
少し先に見える十字路には笠屋、農具屋、魚屋。小さいながらも、この村で暮らすには困らない程度の店は揃っている。
思ったより人通りは多くないが、よくある田舎の村。
「何がすぐじゃ!
そこそこ歩いたぞ!
お主の家はどこじゃ!」
「そこそこって、1時間も歩いてないじゃない。」
「一時間もじゃ!
お主のようなイノシシと一緒にするでない!」
「だ、誰がイノシシよ!
もやしうんち!」
「なっ!ヘビ要素がなくなっておるではないか!
それでは唯のうんちではないか!」
「いやいや、お二人ともすみません。
私は慣れてるもので、まさかそんなにお疲れになるとは。
「いーのよおじいさん。
このうんちがもやしなだけなんだから。」
「だから!せめてヘビをつけよ!」
「お気遣いすみません。
あ、うんちさん、あそこです。
あの家が……
ん?なんだか人が集まってますな?」
「おい!お主らいい加減にするんじゃ!
こんな美少女に何度もうんちうんち言いおって!」
「おじいさん、何だろあの人だかり?」
「さて?なんですかな?
御奉行さんのようですな。」
「おい!また無視か!?」
「ちょっと聞いてみますかな。」
老人は、家の前で事後処理を見守る桔梗へ声をかけた。
「もし、お奉行さん。
何かありましたかな?」
「ん?あぁ、この家のものか?」
「いえ、その向かいの家のものです。」
「そうか。
騒がせたな。
妖怪騒ぎだ。
もう時期片付く。」
「はぁ、また妖怪ですかぁ、物騒ですな。」
「そうだな。
最近このあたりでも増えたな。」
「えぇ……
物騒になりましたなぁ」
「そうだな。
残党がいるかもしれん。
今日は家で大人しくしてるといい。」
「おい!
駄弁っておらんでさっさと家に入れるんじゃ!
わしは腹が減った!!」
二人の会話に団子を我慢できずにしろが割り込む。
「ん?おい、老人下がってろ。
まだ残党がいたようだ。」
「わしはすごく歩いてすごく疲れーー」
ーーブンッ!
しろの声を断ち切るように桔梗の抜いた刀がしろの頭をかすめる。
「にゃっ!!!
な!何をするんじゃ!たわけ!!!!
切れたらどうするんじゃ!!」
「切れてないだろ。
……おかしいな。
切ったと思ったが……
疲れが溜まってるらしい。」
ーーブンッ!
再び桔梗の刀が走る。
「にゃにゃ!!
おい!!!殺す気か!!!」
「そのつもりだ。
おかしいな……」
「ちょちょちょ!?
あんた何やってんのよ!!」
「何だお前は?
その妖怪の仲間か?」
「そうよ!」
「そうか、人と見分けのつかんものもいるんだな。」
桔梗がゆらりと紫乃に刀を向ける。
「ちょちょちょ!
待って待って!
勘違いしてない!?
あたし達は、そのおじいさんの家に来ただけ!」
「なんだ、紛らわしい。
それなら先に言え。」
「お主が突然切りかかってきたんじゃろう!!
見よ!毛先のヘビが怯えておる!」
しろが桔梗にプルプル震える毛先の白蛇たちを見せつける。
「そ、そーよ!謝りなさいよ!!」
「そうだったか?
悪かったな。」
刀を収めた桔梗に奉行の男が報告する。
「桔梗さん、終わりました!」
「そうか。
お前ら、終わったからもう入っていいぞ。」
「ちょ!
あんた!何よその態度!!」
「なんだ?
よく見たらその着物の紋、鶴凰の紋だな。
別件でしょっぴかれたいか?」
「な、何もしてないわよ!」
「そうじゃ!
むしろ盗人から盗品を奪って善行をしたくらいじゃ!」
「盗品?」
「ちょ…しろ!!」
「はぁ……まぁいい。
今日はつかれた。
あまり騒ぎを起こすなよ。」
桔梗はそう言うとその場を去っていった。
「なんなのあいつ!
嫌なやつ!!」
「ほんとじゃ!
おい!じじい!
団子じゃ!やけ食いじゃ!!」
「はいはい。
どうぞ、狭いですがいらっしゃいませ。」
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