芝刈りの罰とパパイヤの罪 - 2025 F1 メキシコシティGPレビュー

 「チェーコッ!チェーコッ!」の声援、今年もあちこちで聞かれましたね。ペレスさん、コース上にはいないのに。この調子だと、チェコがキャデラックのドライバーとして帰って来る2026年のメキシコシティGPは、それはもうたいへんな騒ぎになりそうです。

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 日曜には角田くんのドライブでホンダRA272のデモランが行われました。60年前の1965年、ホンダがメキシコでF1初優勝を飾ったときのマシンです。映像で見ても、ホントに小さいクルマですよね。

 エンジンは1500ccのV型12気筒を横置き、つまりクランクシャフトが進行方向に対し90度になる向きで積んでいます。クルマ全体のプロポーションがちょっと幅広で、ポッチャリした感じに見える理由もそこにあります。

 一般にV12と言えば、前後に長いエンジンを想像します。でも、このエンジンは1気筒あたりの排気量がたったの125ccですから、あのサイズのモノコックに横向きに載せることができるんですね。

 安全性という点ではさすがにアレですが、レースカーってこういうシンプルな乗り物でいいんじゃないか、そうあるべきじゃないかとあらためて感じました。まあ、いまのF1がこのカタチ、この大きさになっているのは、いろいろな事情があってのことで、それは承知しているつもりですけど。

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 ノリスは予選からレースまで百点満点でした。アメリカGPでのフェルスタッペンと同じように、そもそもペースが速いドライバーがトップに立ってクリーンエアで走ってしまったら、後続はもう太刀打ちできません。

 ただ、クリーンエアがこれほど有利になる、同じことを反対から言えば、トラフィックの中にいるとタイヤの消耗などの面ですごく不利になるのは、空力レギュレーションの問題でもあると思います。2026年レギュレーションではこの点が解消されているといいのですが。

(来季のレギュレーションについては、過去記事「オニが笑う4つの課題」もご覧いただけると幸いです。https://note.com/kenjimizugaki/n/n3bb164e76a6f

 ともあれ、今回の結果を受けて、ノリスくんは選手権リーダーになりました。ピアストリと立場が入れ替わったことになりますね。はたして、ここから彼らがどんな戦いを見せるのか。また新たな展開があるかもしれません。

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 国際映像ではわかりにくかったのですが、フィニッシュ後、表彰式前のトップ3インタビューで、観客からノリスに対するブーイングが起きていました。スタジアムセクションでは、レース中から彼が通るたびにブーブー言われていたそうです。

 どうやらメキシコの観客のみなさんは、マクラーレンがモンツァでやったポジションスワップが気に入らなかったようで。

 最近、メキシコのモータースポーツ誌がモンツァでの出来事を踏まえて、マクラーレンはノリスにタイトルを獲らせようとしていると思うか、という内容の読者アンケートをやったそうなんです。で、メキシコ国内では、ふわっとした「ノリス、ずるい」の雰囲気が醸成されていたと。

 それに加えて、以前に彼が「フェルスタッペンにチャレンジできるチームメイトはいない」と言ったことが、メキシコではペレスへの批判と受け取られたことの影響かとの説もありました。

 でもね、ポジションスワップは「パパイヤルール」に基づくチームの判断ですから、ノリスを攻めても仕方がないと思いますよ。マックスのチームメイトについて、同じようなことを言った人は他にも大勢いるし。

 ノリスくん、インタビューの場でブーイングを浴びたときには、戸惑うような表情を見せていて、ちょっとかわいそうでした。

 なお、この話題に関しては、英オートスポーツのウェブサイトの記事を参照しました。https://www.autosport.com/f1/news/why-norris-was-booed-on-f1-mexico-gp-podium/10771809/ 

 ついでに言うと、大ブーイングの音声をカットした(と思われる)テレビの制作サイドにも、注文をつけたいと思います。やはり起きていることは、そのまま伝えてほしいんですよ。テレビクルーが余計な「判断」をせずに。

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 ピアストリはメキシコでもパッとしませんでしたね。今回はプラクティスもしっかり走れたのに、それでもノリスに肩を並べることができませんでした。勝手な想像ですけど、プレッシャーというよりも、リタイアしない、クラッシュしないという意識が強すぎて、ノビノビとドライブできていないのではないかな。

 チーム代表のアンドレア・ステラさんは、ノリスの方が滑りやすいコンディションには強い傾向があるとして、ピアストリを擁護していました。

 実際、コーナーの立ち上がりでクルマがスライドしている場面は、プラクティスの段階からあちこちで見受けられました。このコースはF1グランプリ以外ではあまり使われず、なかなか路面ができてこないことに加えて、空気の薄さのせいでダウンフォースも出ないんですね。

 ピアストリは次のインテルラゴスで息を吹き返すでしょうか。このまま流れを変えられず、ノリスに対して後手に回るようだとチャンピオンにはなれません。選手権ではチームメイトに逆転されたので、プレッシャーからは多少なりとも解放されといいのですが。

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 ハミルトンは予選3番手でした。自分でも言っていたように、レースのスタートを考えると「一番いいポジション」なので、こちらも期待しつつ見ていたんですよ。ルクレールのパフォーマンスを見る限り、フェラーリ勢が揃ってポディウムに上がれる可能性もあったと思います。

 それだけに、ハミルトンに10秒のタイムペナルティが科せられたのは、ちょっと興醒めでしたね。まあ、コーナーをカットしたあと、争っていたフェルスタッペンよりずっと前でコースに復帰しちゃったので、アドバンテージを得たと見なされても仕方ないところはありましたけど。

 でも、「なんでボクだけペナルティ?」と言いたい気持ちはわかります。ターン1でのフェルスタッペンを筆頭に、グリーンに飛び出しながらあまり順位を失わずに戻ってきたドライバーは、他にも何人かいましたから。

 要するに、あのコースではインの草地を突っ切って行ったときに、竸っていた相手より前で戻れてしまうことが問題なんですよ。コース外を走ったドライバーは必ず順位なりタイムなりを大きく失うように、バリアやエスケープロードのレイアウトを工夫すべきかと思います。

 ちなみに、ラッセルはあの序盤の飛び出し放題を「芝刈り機レース」と評していました。うまいこと言うね。

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 フェルスタッペンは予選では5番手と奮わず、レースペースでもノリスには敵いませんでした。けれども、ソフトタイヤに履き替えたあとの終盤の追い上げはスゴかった。2位に入ったルクレール自身が、あのVSCがなければ絶対にやられていたと認めたほどです。

 レース中盤にはしばらくガマンを強いられたものの、他の上位陣がソフトタイヤでのスタートを選ぶなか、レッドブル陣営は「ミディアムスタートのワンストップで最後にソフトで追い上げる」という戦略を見事に機能させました。

 タイトル争いの観点からも、3位フィニッシュでダメージは最小限にとどめたと言っていいでしょう。ノリスにはやられましたが、ピアストリよりは上位でフィニッシュしたのですから。

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 それにしても最終盤のVSCは、まさにアンチクライマックスでした。ターン14でスピンを喫してクルマを壊したサインツは、すぐに自力でウォールの切れ目にクルマを移動させています。ですから、スタジアムセクションをダブルイエローにすれば、それで良かったようにも思うのですが。 

 FIAによると、彼のウィリアムズがランオフに止まった時点で、そうした場合の標準的手順が取られ、サインツがクルマを安全な場所に移動した時点で解除したとのこと。

 決められた手順は守らねばならないので、仕方がないところでしょうか。今回はその対応がやけに迅速だったために、最後に盛り上がるはずの場面でVSCになっちゃったというわけです。カルロスくんも、間が悪かったよね。

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 角田くんについては、あのスタート位置を考えると、ピアストリに照準を合わせて最初はソフトという選択もあったのではないかと思いました。実際、1周目にうまく順位を上げて、しばらくパパイアカラーのクルマを背後に抑えていましたから。

 ただ、ピアストリに抜かれたあとは、自身のピットストップまでの間にだいぶポジションを失ってしまいました。英語で言うところのシッティング・ダック(日本語では「やられ放題のカモ」)です。でも、それはパワーユニットの温度が上がり気味で、リフト&コーストを強いられていたことも一因だったようです。

 そして、あのピットストップでの大きなタイムロスがなければ、ボルトレートより前でコースに戻れて、ポイント圏内でフィニッシュできたはず。ただ、ピットでのミスはレースの一部ですし、ドライバーだけではなくピットクルーも含めたチームで戦っているのですから文句は言えません。

 金曜はイイ感じで走れていたようなので、そうなるとやはり、予選でもう少し前にいれば、というところに尽きますかね。結果はさておき、週末全体の内容は良くなっていて、メキースさんやマルコさんなどチームの首脳陣も、そこは高く評価しているようですよ。

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 メキシコではハースがいいレースをしました。ベアマンが自己ベストの4位、オコンも9位に入ってダブルポイントフィニッシュです。チームとしての過去最上位は、2018年オーストリアGPでロマン・グロージャンが記録した4位ですから、それに並ぶタイ記録ですよ。

 予選でも、角田くんを挟んでベアマンが10位、オコンが12位(それぞれグリッドはサインツのペナルティでひとつ繰り上がり)。ベアマンは序盤のゴチャゴチャに乗じて1周目に6位に浮上、さらにフェルスタッペンやラッセルも抜いてポジションを上げました。

 しかし、ただ幸運だけで好位置につけたのではありません。熊男くんのペースはソフトでもハードでも、ルクレールやフェルスタッペンに対して遜色ありませんでした。アメリカGPのスプリント予選でのヒュルケンベルグのように、車高のセットが当たったのかな。

 オースティンで入れたアップグレードの効果に加えて、ノリスとルクレールからは離され、しばらくクリーンエアで走れたことが大きかったかもしれません。終盤にフェルスタッペンには抜かれましたが、VSCのおかげでピアストリの追撃からは逃げ切りました。

 ベアマンはドライバー・オブ・ザ・デイに選ばれています。小松さんも「アメイジング・レース!」と語っていました。

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 これとは対照的にウィリアムズ勢は散々で、アルボンが1周遅れの12位、サインツはリタイアに終わっています。

 ふたりともストレートでは最速なのに、そのあと止まりきれずにオーバーランする場面が、プラクティスの段階から目についていました。最後のVSCもサインツのスピンが原因ですし。ブレーキングが難しい直線番長なんて、乗っていて怖いでしょうね。

 カルロスくんはピットレーンのスピード違反を2度も犯して、ペナルティを取られています。これは1周目のローソンとの接触で、速度センサーを含めたフロントのホイールセンサーがすべて壊れて、ピットリミッターが正常に機能しなかったためだそうです。「なにやってんだ!」と怒らないであげてください。

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 ところで、今回のF1公式映像には、いささか不満が残りました。ローソンのコースマーシャル遭遇事件(このレビューでは紙幅の都合で取り上げませんでした)、角田くんの12秒超のピットストップ、VSCの原因になったサインツのスピンなど、いくつかの重要なシーンがカバーされず、リプレイでも流されなかったからです。

 ガールフレンドのショットは、憶えている限りではアルボンのパートナーでプロゴルファーのへ・ムニさんと、ポディウムの前に来ていたルクレールのパートナー、アレクサンドラ・サン・ムルーさんくらいでしたけどね。そっちでいくら配慮をしても、レースの肝心な場面がとらえられていないのでは意味がありません。

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 レッドブルのヘルムート・マルコさんは、以前から「メキシコあたりをメドに2026年のラインナップを決める」と言っていました。しかし、ここへ来て決定の延期を明らかにし、「シーズン終了後というわけではなく、おそらくアブダビあたりで」と語ったそうです。

 理由は「フェルスタッペンのタイトル争いに集中するため」とのことですが、まあ他にもいろいろと事情があるのでしょう。いずれにしても、すでにレッドブルと契約している傘下のドライバー間でのシャッフルですから、決定を急ぐ必要もないわけです。

 報道によると、ハジャーのレッドブル昇格、リンドブラッドのレーシングブルズ加入は確実と見られていて、まだ決まっていないのは、角田くんとローソンのどちらをレーシングブルズに乗せるかだそうです。彼らにとっては、マックスのタイトル争いのおかげで、それぞれの実力を証明する機会が延長されたとも言えますね。

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 昨年のブラジル、じゃなくてサンパウロGPは、強烈に印象に残るレースでした。まず、悪天候で日曜朝に順延された予選では、ユウキ・ツノーダが3番手。雨中のレースは17番手グリッド(予選12位+ICE交換のペナルティで5グリッド降格)からスタートしたマックスが優勝し、角田くんも7位入賞でポイントを獲得しました。

 そして、それをも超えるサプライズは、2位と3位にアルピーヌのオコンとガスリーが入ったことでした。ごく稀にこういうことが起きるので、こちらとしては深夜だろうと早朝だろうと、グランプリの決勝は生中継で見ざるをえないわけです。

 今年も眠気が吹っ飛ぶようなレースを期待しましょう。その主役のひとりが角田くんだったら文句なしです。


2025年10月27日

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