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娘が母になって思い出した、小さな命と出会った日

娘が赤ちゃんを連れて帰ってきた日。

私は、気づけば昔と同じように、小さな体を抱いていました。

その瞬間、何十年も前の記憶が一気によみがえりました。

娘は関東で暮らしていて、0歳の女の子のママです。

つまり私はおじいちゃんになりました。

たまに孫を連れて帰省してくるのですが、これが娘にそっくり。

大きな目で、芯が強そうで、笑顔がとても愛らしい子です。

その顔を見ていると、昔のことを思い出します。

今日は、その記憶を残しておこうと思います。


子どもが欲しくて悩んでいた妻のこと

娘は、結婚して1年後に生まれました。

妻は結婚前、幼稚園の先生でした。

子どもが大好きで、いつも子どもに囲まれているような人です。

結婚後はいったん専業主婦になり、その後、幼稚園へ復帰しました。

今も現役でバリバリ働いています。

そんな妻なので、結婚してからは早く子どもが欲しくて、なかなか授からず悩んでいました。

そんなとき、私はこう言いました。

「子どもは授かりもんやで。できなくても問題ないやん。2人で仲良く暮らせるだけでも幸せやし、子どもと関わりたかったら、また幼稚園の先生に戻ったらいいやん。」

この言葉は今でも妻の中に残っているそうです。

「心がスッと軽くなった」と、よく話してくれます。

当時の私は、子どもを育てることは大きな責任だと考えていました。

そうして結婚して数ヶ月後、私たちは娘を授かりました。


妊娠中の妻と、未熟だった私

妊婦さんは本当に大変です。

外から見ていてもそう感じましたが、妻からは何度も言われました。

「男には絶対わからへん大変さがある。」

当時の私はというと、仕事が忙しく帰りも遅く、親になる自覚はまだほとんどありませんでした。

同僚を家に呼んで騒いだり、家の中でタバコを吸ったり。

当然、妻にはかなり怒られました。

それ以来、同僚を家に呼ぶことは一切なくなりました。

当時の私は、何も分かっていませんでした。

今思い出しても、ちょっと恥ずかしい話です。

妻は評判のいい産婦人科に通っていました。

「出産は病気ではない」という方針で、呼吸で痛みをコントロールすることを大切にする病院でした。

夫婦でラマーズ法の教室にも通い、呼吸法などを学びました。


陣痛、出産、そして父親になった瞬間

娘が生まれた日は、妻の検診の日だった。

そして偶然、私は仕事が休みの日でもあった。

前の夜から少しお腹が張っていたらしく、検診のあと家に電話があった。

「陣痛が始まりかけているので、そのまま入院します」と。

私は慌てることなく身支度をして、静かに病院へ向かった。

あとから妻に言われました。

「ここ一番の時、いつも冷静に動くよね。」

初産だったこともあり、陣痛は長く続きました。

私は初めて会う我が子のために、爪を切り、歯を磨き、散髪まで済ませて待っていました。

もともと立ち会い出産はしない予定でした。

ですが病院で会った別のお父さんにこう言われました。

「立ち会い、いいですよ。」

その一言で気持ちが変わり、急きょ立ち会うことに。

後から妻は看護師さんに言われたそうです。

「事前に夫婦で決めてなかったんですか?」

本当に申し訳ないことをしました。

そして、娘が生まれました。

「お父さん、抱いてください。」

そう言われて、恐る恐る抱いた小さな命。

大きな目を開いて、じっとこちらを見つめてきました。

私は思いました。

「なんやこの子…しっかりしてるな。俺のこと父親ってわかってるのかな。」

言葉にならない感動でした。

うまく言葉にできませんが、ただ胸がいっぱいでした。

ああ、これが私の子なんだ。

これで私は父親なんだ。

もっとちゃんとしなければ。

そう心の中で思った瞬間でした。


娘が母になって、ようやく分かったこと

振り返ると、
私が子どもを育てたというより、子どもに父親として育ててもらった気がします。

あのとき小さな腕で私の指を握った娘が、今は母になりました。

ある日、娘が帰省してきたときのことです。

私が孫をあやしている姿を見て、娘が妻に聞いたそうです。

「パパ、私が赤ちゃんの時もこんな感じやったかな?」

妻はこう答えたそうです。

「まったく同じ。」

その言葉を聞いて、娘はとても嬉しそうな顔をしていたとあとから妻が教えてくれました。

そして孫が、娘と同じ大きな目で、満面の笑みで私を見つめてきます。

その笑顔を見るたびに思います。

あの日、はじめて抱いた娘が、大人になり、また新しい命をこの世界に連れてきてくれた。

あの日、はじめて娘を抱いた腕で、いま私は孫を抱いています。

人生は前に進むだけだと思っていました。

でも違いました。

時間は巡って、もう一度、同じ温もりを腕の中に連れてきてくれる。

そのたびに、私は静かに思います。

あの日、父親になった私が、

いま、もう一度

家族に生かされているのだと。

あの日、震えながら娘を抱いた腕で、今日も私は、家族を抱いて生きていきます。

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