お金を追いかけるほど逃げ、"貯めておく人"に集まってくる
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「早く結果を出さなきゃ」「今月の売上を、なんとかしなきゃ」——起業や副業を頑張っている方から、こういう焦りのご相談をよくいただきます。その気持ちは、私にもとてもよく分かります。
ですが、不思議なもので、焦って追いかけるほどお金も仕事も逃げていき、逆にどこか余裕のある人のところへ、自然と集まっていく。私はこれまで、そういう場面を何度も見てきました。今日はその理由を、松下幸之助さんの「ダム式経営」という考え方を借りて、お話ししてみたいと思います。
ダムに水を貯めるように、経営にも「余白」を持つ
「ダム式経営」とは、松下幸之助さんが提唱した考え方です。川の水をそのまま流しきってしまうのではなく、いったんダムに貯めておく。晴れの日が続いても、雨が降らない日が続いても、一定量を流せるように余力を持たせておく。経営もそれと同じで、調子がいいときに使い切らず、お金・信用・実力を蓄えておくという発想です。
有名な逸話があります。ある講演で松下さんがこの話をしたとき、聴衆の一人が「どうすればダムをつくれるのですか」と尋ねました。松下さんの答えは「まず、ダムをつくろうと思うことですな」。拍子抜けするような答えですが、後にこの言葉に強く心を打たれたのが、若き日の稲盛和夫さんだったと言われています。
つまり、すべては「余白を持とう」とまず思うところから始まるということです。余裕は、放っておいて自然にできるものではありません。意識して、先に残しておくものなのです。
なぜ、余裕のある人にお金も仕事も集まるのか
では、なぜ余裕のある人のところに、お金も仕事も集まってくるのでしょうか。
いちばん大きいのは、焦りは、相手に伝わってしまうということだと私は思っています。「なんとか売りたい」という気配が強い人からは、お客様は無意識のうちに一歩引いてしまいます。反対に、余裕のある人は落ち着いて相手の話に耳を傾けられます。自分の商品を語ることよりも、相手が何に困っているかを引き出すことに意識を向けられる。だからこそ信頼され、結果として選ばれていきます。
余裕とは、相手を安心させる力でもあります。追いかけられると人は逃げたくなりますが、どっしり構えている人には、なぜか近づきたくなる。ここに、大きな差が生まれます。
焦って売るほど、お客様は遠ざかる
逆から見ると、余裕のなさは、いちばん大切な信頼を削っていきます。
目先のお金にこだわると、長期的にはかえって顧客もパートナーも失っていく——これは私自身、痛感してきたことです。今月の数字を埋めたい一心で無理な売り込みをすると、お客様は「都合よく扱われた」と感じ取ります。その一度で、それまで積み上げた信頼が音を立てて崩れてしまうことさえあります。
ここでダムが効いてきます。多少の余力を蓄えてあれば、「今月がだめでも、うちは大丈夫」と構えていられます。この「大丈夫」という土台があるからこそ、無理な一手を打たずに済む。焦って売らないから、かえって長くお客様に選ばれ続ける。少し遠回りに見えて、これがいちばん確実な道だと感じています。
蓄えるのは、お金だけではない
ダムに貯めておくものは、お金だけではありません。私はむしろ、お金以外の蓄えのほうが大切だと思っています。
ひとつは信用です。派手なことをしなくても、コツコツと発信を続ける、約束を守る、行動で本気度を示す。こうした地味な積み重ねが、じわじわとダムの水位を上げていきます。もうひとつは実力。日々の学びは、いざというときに使える蓄えです。そしてもうひとつが、時間の余白そのものです。
チャンスというのは、たいてい外から、しかも予期しないタイミングでやってきます。そのとき、お金にも時間にも実力にも少し余裕がある人だけが、「よし、やってみよう」と手を挙げられます。余白のない人は、せっかくの好機が来ても見送るしかありません。ダムは、チャンスをつかむための余力でもあるのです。
「ダム」は、平常時に少しずつつくる
最後に、では、どうやってダムをつくるのか。答えはシンプルで、忙しくない平常時に、少しずつです。
いざ困ってから慌てて動いても、ダムは間に合いません。お金の余力も、人との信頼関係も、実力も、何でもない普段のうちからコツコツ積み上げておくものです。とくに、仕事が落ち着いている閑散期こそ、目先の作業に追われず、将来につながる大事なことに時間を使う絶好のタイミングです。
ポイントは、忙しさにすべてを使い切ってしまわないこと。稼いだもの、手にした時間のうち、必ず一定量を「未来のための余白」として先に取り分けておく。二宮尊徳の言葉に「積小為大(せきしょういだい)」——小さなことの積み重ねが大きな成果になる、という教えがあります。ダムづくりも、まさにこれだと思います。
まとめ
焦って追いかけるほど、お金も仕事も逃げていきます。逆に、どこか余裕のある人のところに、それらは自然と集まってきます。余裕は落ち着きを生み、落ち着きは信頼を生み、信頼が巡り巡ってお金と仕事を連れてくるからです。
その余裕をつくるのが、松下幸之助さんの「ダム式経営」の発想です。お金・信用・実力・時間を、平常時から少しずつ蓄えておく。忙しさにすべてを使い切らず、必ず未来のための余白を残しておく。
まずは今日から、「自分のダムに、何をどれだけ貯めておこうか」と一度考えてみてください。その小さな一歩が、焦りに振り回されない、太く長く続く経営への入り口になるはずです。
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