部活動の“引っ越し先”④部活動は誰のためにあるのか
~居場所は地域に、競技力は広域に~
前回、私は学校部活動の「引っ越し先」について考えました。
総合型地域スポーツクラブ(以下、地域クラブ)、競技団体、民間事業者、大学、プロスポーツクラブ。
地域移行の受け皿は決して一つではありません。
しかし、受け皿を議論する前に考えなければならないことがあります。
そもそも部活動は誰のために存在しているのでしょうか。
この問いへの答えによって、部活動改革の方向性は大きく変わります。
■ 放課後の居場所としての部活動
部活動というと、多くの人は競技スポーツを思い浮かべるでしょう。
しかし、学校部活動が担ってきた役割はそれだけではありません。
放課後の“居場所”としての機能です。
共働き世帯が増えた現在、「小1の壁」という言葉が広く知られるようになりました。
子どもが小学校へ入学すると、保育園時代よりも早い時間に帰宅するようになり、保護者の仕事との両立が難しくなる問題です。
学童保育や放課後子供教室などの取り組みも進んでいますが、地域によって状況は異なります。
また、中学生以上は学童保育の対象外です。
そうした中で、部活動は“放課後の居場所”として機能してきました。
友人と過ごす。
体を動かす。
学年やクラスの異なる仲間とも交流する。
時には悩みを打ち明ける……。
部活動には、競技成績だけでは測れない価値があります。
近年は子ども食堂や学習支援活動など、地域が子どもを支える取り組みも広がっています。
私は部活動改革を考える際、この「居場所」の機能を見落としてはならないと思います。
■ スポーツクラブは居場所になれるか
では、地域クラブはその役割を担えるのでしょうか。
私は可能性は十分にあると考えています。
そのヒントは海外にあります。
Jリーグ初代チェアマンの川淵三郎氏は日本代表選手時代、西ドイツへ遠征した際、訪れたデュイスブルクのスポーツシューレに感銘を受けたと語っています。
そこには天然芝のサッカーグラウンドだけではなく、食事や交流ができるクラブハウスがありました。
スポーツをする人だけではなく、地域住民が集い、交流する場所だったというのです。
後に整備されたJヴィレッジにも、その思想は受け継がれています。
※参考:
笹川スポーツ財団「夢を実現する“キャプテン” 川淵三郎」(スポーツシューレと総合型地域スポーツクラブの原点)
Jリーグ「Jリーグ百年構想を知るための、5つのストーリー(2理念の伝道師。川淵三郎初代チェアマン)」
スポーツ施設を単なる競技会場ではなく、人が集まり、語り合い、学び合う場所として整備すると、活用の幅が広がります。
地域クラブが競技指導だけではなく、子どもたちや地域住民の居場所として機能できるのであれば、学校部活動が担ってきた価値の一部を引き継ぐことも可能でしょう。
■ 競技力向上というもう一つの役割
一方で、部活動には競技力向上という役割もあります。
全国大会を目指す選手。
より高いレベルで競技に取り組みたい生徒。
そのニーズは確実に存在します。
しかし少子化が進む中で、学校単位で競技力を維持することは難しくなっています。
教員の働き方改革や少子化を背景に、全国中学校体育大会(全中)も競技数を縮小する方向へと舵を切りました。部活動を学校だけで支え続ける時代が終わりつつあることを象徴する出来事と言えるでしょう。
これが、部活動改革が避けて通れない現実です。
今後は強化拠点校や広域クラブなど、地域単位で競技力向上を支える仕組みがより重要になるでしょう。
また、その担い手として期待されているのが大学です。
スポーツ庁は大学スポーツを競技力向上だけでなく、地域貢献や人材育成の資源としても位置付けています。
大学生が小中学生の指導を行う。
高校生の練習相手になる。
大学施設を地域へ開放する。
そうした取り組みが広がれば、地域移行を支える大きな力になるはずです。
■ 「居場所」と「競技力向上」のはざまで
部活動改革を巡る議論では、「居場所か競技力向上か」という二者択一になりがちです。
しかし私は、どちらかを選ぶ話ではないと思います。
子どもたちが安心して過ごせる居場所も必要です。
高いレベルで挑戦できる競技環境も必要です。
その両方をどう実現するか。
そこに地域移行の本当の難しさがあります。
そして、もう一つの課題があります。
居場所を重視するなら活動場所は身近な方が良い。
競技力向上を重視するなら活動は広域化する。
そのとき避けて通れないのが「移動」の問題です。
子どもたちは誰が運ぶのか。
安全はどう確保するのか。
次回は、部活動改革の中で見落とされがちな「移動」の課題について考えてみたいと思います。
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