翻訳昔話:Windows PCの時代
前回は、翻訳業とタイプライターの進化について書いてみました。
その中で、
『そして、科学技術の進歩のおかげで、パソコンが身近な存在となってからは純粋に翻訳作業に打ち込めるようになったと言っても過言ではないでしょう。』
と書きましたが、作業環境はタイプライターの時代よりも格段に便利になったことは事実ですが、実は新たな苦悩が待ち受けていたのです。
それでは、今回のテーマ「Windows PC」について話を進めましょう。
Windows PCといえば、1985年(日本語版は1987年)に登場したWindows 1.0というOSを忘れてはなりませんね。
このOSはMS-DOS(Disk Operating System)上で動作するものでした。
今回の記事はパソコンネタではありませんので、Windowsの歴史とか技術的な部分は適当に割愛しながら話を進めますが、筆者が初めて手にしたOSは日本語版が1993年にリリースされたWindows 3.1でした。
初期の1.0と比べると格段に性能もアップし、3.0からプログラムマネージャーやファイルマネージャーなどの実用的な機能が搭載されたものでした。
ところが、コマンド入力をしなければPCが仕事をしてくれないという、そのあたりの知識がない者にとってはとっつきにくい代物でもありました。
そして、いよいよあのWindows 95が1995年に登場することになります。
スタートボタン、メニュー、タスクバー、ウィンドウの最大・最小化などといった今日でも日常的に使っている様々な便利機能が搭載されたPCです。
おかげで、機械音痴の文系翻訳者にも非常に使いやすい、画期的なツールとなってくれたことは間違いありません。
この頃の翻訳者にとって、なくてはならない三種の神器なるものがありました。
三種の神器、第一はWindows 95を搭載したPC
筆者が初めて手にしたのは、NECの9800シリーズです。
因みに、Windows 3.1ではSONYのノートパソコンVAIOでした。

三種の神器、第二は業務用ファックス機
翻訳用データはこの頃はまだファックスで送るというのが主流でした。
パソコン通信も始まってはいましたが、依頼元から届くのはファックスでした。
そして、手書きの文書が送られてきたり、ファックスのファックスなどを受信することもあり、できるだけクリアな画質を得られる高解像度の業務用を選択しました。
因みに、筆者はインターネットの登場までは電話回線やISDNを介してNifty-Serveというパソコン通信サービスを利用していましたが、Windows 95とADSLサービスの開始によりインターネットに移行したのは言うまでもありません。

三種の神器、第三は一太郎
日本語翻訳者のために欠かせない日本語ワープロソフトです。
当時は何といっても、一太郎でした。
筆者はWindows 3.1の時代から使っていましたが、日本語入力に於いては他の追随を許さない優秀な日本語入力システム「ATOK」を使うことができましたので、ワープロ専用機には縁がないままに終わってしまいました。

今では筆者もマイクロソフトのWORDユーザーになってしまいましたが、この一太郎は画期的なワープロソフトだったと思っています。
三種の神器のほかにも、プリンターやスキャナなども使うことはありましたが、さほど高スペックでなくても対応できておりました。
新たな苦悩
さて、冒頭にも書きましたが、Windows PCの時代になってから新たな苦悩もありました。
当時は、PCの調子が悪くなる(不安定になる)ことが度々ありました。
機械的なトラブルならまだしも、OSそのものが何かのはずみでエラーを起こすことがあったのです。
そんな時は、OSの再インストールをするしかありませんでした。
今でも手順は同じですが、すべてのデータのバックアップを取り、OSの再インストールを始めるわけですが、これが時間がかかるものでした。
その日の仕事を終えてから、夜中にこの作業を行ったものですが、PCそのもののスペックも低く、作業は遅々として捗りません。
時には、PCの正常な動作を確認する頃には夜が明けていたということもありました。
これが、一つの苦悩、いつPCが反応しなくなるかという心理的なプレッシャーでした。
OSも95から98、さらにその先へと数年おきに新バージョンが登場するたびにこのような突発的なトラブルの心配(不安)は軽減されていくのですが、新バージョンOSの登場と旧バージョンOSのサポート切れのたびに新しいOSに乗り換えなければならないという呪縛、そしてバージョンアップのたびに要求されるハイスペックのPCを買い替えなければならず、お財布的には厳しいものがありました。
個人的には、XPは比較的安定していて、一番使いやすく、長く使うことができたOSだったと思っています。
もう一つの苦悩は、機械としてはまだ使えるのにマイクロソフトのサポートが切れるために買い替えなければならないということを、毎回勿体なく感じていたものです。
少しパソコンの知識もついてきてからは、仕事用とは別にプライベートや特定の用途のみに使うPCをインターネットに繋がったLANから切り離し、万が一にも仕事に影響が出ないような対策をしたうえで、一昔前の古いPCを使ったりもしてきました。
現在筆者が使っているOSは、読者の皆さんも同じかと思いますが、所有する3台のPCすべてがWindows11搭載モデルです。
いわゆるAI機能搭載モデルとして、業務の効率化を支援してくれるCopilotが文章作成サポートをしてくれたり、今後もAI機能はますます進化していくことでしょう。
そのうちに、翻訳もPCがクリック一つでやってくれる時代が来るかもしれません。(筆者は今はまだその時代ではないと考えています)
翻訳者は廃業を余儀なくされるとか巷では囁かれているようですが、これからの翻訳者はヒトでなければできない翻訳を心がけることと、AIと対抗するのではなく、得意分野の棲み分けを目指すことかなと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
また次の記事でお目にかかりましょう。
