気韻静謐──静けさの中で世界は深まっていく 第9話
気韻静謐を体験する──静けさの中で世界の見え方・感じ方は深まっていく
1. 導入──知ることから、体験することへ
ここまでの連載では、
気韻静謐という美学が
どのように生まれ、
どのような構造を持ち、
どのように人・空間・作品・社会へ宿っていくのかを見てきました。
しかし、
どれほど言葉で理解しても、
気韻静謐の本質は、
体験しなければ分かりません。
気韻静謐では、
その体験体系を
「灯深道(とうしんどう)」
と呼びます。
そして、
実際に対象と向き合う行為を
「灯観(とうがん)」
その積み重ねによって深まっていく歩みを
「灯深(とうしん)」
と呼びます。
本稿は、
気韻静謐を知る段階から、
灯深道を歩み始めるための入口でもあります。
2. まずは自分自身に問いかけてみる
その前に、
少しだけご自身に問いかけてみてください。
最近、
何か自然のものを、
ただ見るのではなく、
静かに見つめたことはありますか。
木でも、
花でも、
空でも、
雲でも、
風でも構いません。
その存在を、
数分間、
何もせず、ただ見つめ続けたことはあるでしょうか。
また、
あなた自身が意識して、
いつもとは違う選択をしたのはいつでしょうか。
新しい場所へ行くことでも、
普段と違う道を歩くことでも、
新しい本を読むことでも構いません。
もし、「どうだったかなぁ…」と、
少し考え込んだとしたら、
それは日常の忙しさの中で、
世界や自分自身と静かに向き合う時間や、
自分のために使う本来の時間が少なくなっているのかもしれません。
気韻静謐の灯深道は、
そうした時間を取り戻していく体験でもあります。
そしてその第一歩が、
灯(ともしび)をともすように対象と向き合う
灯観(とうがん)なのです。
3. 気韻静謐の体験は何をもたらすのか
気韻静謐は、
禅や瞑想と似ているように見えるかもしれません。
確かに、
静けさに身を置くという点では共通しています。
しかし、
その目的と体験には違いがあります。
禅や瞑想は、
「今この瞬間」
に意識を向け、
心を整えることを重視します。
一方、
気韻静謐は、
灯(ともしび)をともすように対象と向き合い、
灯観を通して、
その奥にある気配や余韻、
そして対象が積み重ねてきた時間の積成を感じ取ろうとします。
そこには、
過去・現在・未来が重なり合う時間の層が存在しています。
つまり気韻静謐は、
静かになること自体を目的とするのではなく、
静けさを通して世界を深く感じることを目的とする美学です。
そしてその体験を繰り返す中で、
「感じる力」
が育まれていきます。
さらに、
感じる力が育つほど、
自分自身の時間の積成も深まっていきます。
そして、
時間の積成が深まるほど、
さらに多くのことを感じ取れるようになる。
気韻静謐とは、
この循環を静かに育てていく美学でもあります。
そして、
気韻静謐では
この循環を実際に歩んでいく道を、
灯深道(とうしんどう)
と呼びます。
「気韻静謐が理論体系」だとすれば、
「灯深道は実践体系」となります。
また、気韻静謐とは、
世界を変える美学ではありません。
世界の見え方・感じ方の深度を変えていく美学です。
同じ木を見ても、
同じ空を見ても、
同じ人と話しても、
感じ取るものが少しずつ変わっていく。
それが、
気韻静謐の体験がもたらす変化です。
4. 気韻静謐の灯深道の最も簡単な体験法
難しいことは必要ありません。
まずは、
ひとつの対象を選びます。
例えば、
・一輪の花
・窓から見える木
・お気に入りの器
・一冊の本
・古い写真
・自分自身(自分の時間の積成)
何でも構いません。
そして、
灯(ともしび)をともすような気持ちで、
ただ静かに向き合います。
これが灯観の基本です。
分析しなくていい。
断定しなくていい。
意味を探さなくていい。
ただ、
そこにあるものを感じます。
すると次第に、
普段は気づかなかったものが現れ始めます。
光の変化。
空気の流れ。
存在の重み。
その対象が積み重ねてきた
時間の積成。
気配。
余韻。
その時、
灯観が始まっています。
そして同時に、
灯深道の第一歩が始まっています。
5. 気韻静謐・灯深道セルフ体験地図
体験は次のような流れで進みます。
静けさ(外的)
↓
対象と向き合う
↓
灯(ともしび)をともす
↓
灯観
↓
静けさを感じる(内的)
↓
静謐に触れる
↓
時間の積成を感じ始める
↓
気配・余韻・存在感・気高さ・品格の
いずれかが立ち上がる
↓
灯深
↓
世界の見え方・感じ方が深まる
↓
感じる力が育つ
↓
自分自身の時間の積成が深まる
↓
灯深
↓
さらに世界の見え方・感じ方が深まる
↓
灯深道
これは決定した基準ではありません。
どこから始まっても構いません。
どこで止まっても構いません。
大切なのは、
感じようとすることです。
この地図は、気韻静謐を体験する際の基本的な流れを示したものです。
ですが、実際の体験は人によって異なります。
なぜなら、すでにそれぞれの人に異なる時間の積成が積層しているからです。
積み重ねてきた経験、記憶、出会い、学び、環境、価値観の層は一人ひとり異なります。
そのため、ある人は気配を強く感じるかもしれませんし、ある人は余韻から深く入るかもしれません。
また、存在感や気高さ、あるいは品格として最初に受け取ることもあるでしょう。
しかし、それらはすべて静謐と時間の積成の内部で起こる体験です。
気韻静謐は断定や裁くための尺度ではありません。
どの順番で感じたかを比べるものでもありません。
大切なのは、自分自身の時間の積成を通して、対象と静かに向き合い、その奥にあるものを感じようとすることです。
6. 無料PDF『気韻静謐 灯深道セルフ体験手帖』について
この体験をより深く行なえるように、
『気韻静謐 灯深道セルフ体験手帖』(無料版)
をご用意しました。
この手帖は、
灯観(とうがん)を体験し、
灯深(とうしん)を育て、
灯深道(とうしんどう)の入口への一歩を歩むために作られた
ごく初歩の実践体験用手帖です。
もし興味を持たれた方は、
PDFで用意しましたので、
ぜひダウンロードして、
ご自身のペースで試してみてください。
また、この手帖には体験を書き留めるページを設けています。
灯深道は本来、書き留めなくても出来ますが、
より分かりやすく、また、自身の時間の積成につながるため、
記録をすることもおススメすることにしています。
記録することは、
単に出来事を残すことではありません。
自分が何を感じ、
何に心を動かされ、
どのような時間を積み重ねてきたのかを見つめ直すことです。
その記録は、
やがて自分自身の時間の積成を可視化する小さな地図となります。
そして、
あなた自身の灯深道の軌跡にもなっていきます。
数年後に振り返った時、ご自身の時間の積成の過程が垣間見れると思います。
そのため、ぜひ記録しておいてください。
7. 結び──気韻静謐は日常の中にある
気韻静謐は、
特別な場所にあるものではありません。
山奥へ行かなくても、
特別な修行をしなくても、
高価な作品を持たなくても、
体験することができます。
窓の外の空。
一杯のお茶。
一杯のごはん。
古い器。
静かな朝。
大切な人との対話。
そして、
何より大切な自分自身。
そこにはすでに、
気韻静謐の入口があります。
そして、そこには、
灯観の入口もあります。
静けさの中に立ち止まり、
対象と向き合い、
灯(ともしび)をともして
その奥に潜むものを感じてみる。
その対象が積み重ねてきた時間の積成と向き合うことは、
同時に、
自分自身の時間の積成と向き合うことでもあります。
その小さな灯観の積み重ねが、
やがてあなた自身の
時間の積成となり、
灯深となり、
そして灯深道となっていくでしょう。
そしてその積成を意識することが、
これからのあなた自身を静かに育てていくのです。
そしてある日、
ふと気づくかもしれません。
世界は変わっていないのに、
世界の見え方や感じ方が、
以前より深くなっていることに。
それこそが、
気韻静謐という文化美学がもたらす変化です。
そして、
その変化を体験として育てていく歩みが、
灯深道なのです。
灯(ともしび)をともすように。
静かに。
深く。
あなた自身の灯深道を歩み始めてください。
気韻静謐は、読むだけで完成する美学ではありません。
静けさの中で実際に灯をともし、
自分自身や対象の時間の積成と向き合うとき、
はじめてその入口に立つことができます。
そのための最初の一歩として、
『気韻静謐 灯深道セルフ体験手帖』(無料版)PDFを制作しました。
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