【前編】予想以上の「5時間待ち」と「TikTok万バズ」はなぜ起きた?JT × kiCkが語る、ハイライト65周年イベントの裏側
こんにちは。kiCk広報の中川です。
昨年夏、hi-lite(ハイライト)の65周年を記念して実施され、最長5時間待ちやTikTok上での万バズなど、当初の想定を大きく超える反響を呼んだ期間限定イベント「喫茶ハイライト」。
今回は、その裏側に迫る特別対談をお届けします!
たばこのプロモーションというと、SNS上での直接的な製品宣伝や喫煙描写の制限など、非常に厳しい広告規制があります。そんな中、一体どのようにしてこれほどの「熱狂」と「話題化(UGC)」を生み出すことができたのでしょうか。
対談には、本プロジェクトの立役者である日本たばこ産業株式会社(以下、JT)「ハイライト」ブランドマネージャー(取材時)の石塚 振様をお招きし、ともにプロジェクトを推進したkiCkメンバーたちと当時を振り返りながら、kiCkというパートナーがもたらした「本質的な変化」を紐解いていきます。
本対談は前編・後編の2回に分けてお届け。
前編となる今回は、「競合コンペの裏側」、「TikTokでのUGC創出戦略」、「ブランドの人格を守るデザインの検証」という3つのテーマを軸に、イベント開催に至るまでの緻密な仕掛けとプロセスに迫ります。

65周年という節目。過去のバズを超えるための挑戦と、kiCk起用の決め手
ー今回のプロジェクト発足の背景から伺わせてください。
石塚さん(JT):
60周年のタイミングでは、オンラインで記念Zippoを販売しただけだったのですが、それが結構バズったという事例がありました。そこで、65周年のタイミングでも「何かやってみる?」という話が出たのが最初のきっかけです。その60周年の時のバズに対して、それを「どう超えるか」というのが最初の目標でした。

ー「やってみる?」という感じから始まったと思うのですが、その時の石塚さんの心境はいかがでしたか?
石塚さん(JT):
ハイライトは面白いブランドで、基本何もプロモーションをしていないブランドなのに、実は社内で近年一番シェアが伸びているんです。
不思議なブランドだなと感じていたので、それをうまく使って面白いことができればいいなと思っていました。
ー競合コンペを実施されたとのことですが、最終的にkiCkを選ばれた理由は何だったのでしょうか。
石塚さん(JT):
提案に具体性があったところですね。
そしてとにかく提案数が豊富でした。実は「喫茶ハイライト」というアイデア自体は、僕たちも以前から考えていたので企画としての妥当性は高いだろうとは感じていました。ただ、僕らは「喫茶店やればいいじゃん」くらいにしか思っていなかったのに対し、kiCkさんはそこに具体的なアイデアを肉付けして提案してくれたのが決め手でした。例えば、歌人の方とのコラボやクリームソーダ、レトロ看板のキーホルダーなどですね。最初のご相談時からそういった具体的なアイデアが出てきていて、イメージが一番湧きやすかったのが大きかったです。
小野間(kiCk / コミュニケーションプランナー):
提案書自体がかなりの情報量になっていたので、企画の優先順位を最後にまとめて書くようにしていました。情報量が膨大だったにも関わらず、石塚さんが全てをご理解くださっていて、打ち合わせのステップがとても速かったという印象があります。意見が戻ることもなく、スムーズに進みました。
ーkiCkに決まった時の社内の雰囲気はどうでしたか?

早川(kiCk / チーフクリエイティブプロデューサー):
社内はかなり盛り上がったよね!
杉野(kiCk / チーフデザイナー):
嬉しかったです!元々ハイライトを吸っていたのもあって、「いいんですか!?」という感じで・・・
小野間(kiCk / コミュニケーションプランナー):
最初の提案書に、企画イメージとして杉野さんが過去にプライベートで投稿していたInstagramのストーリーズを使ったりもしましたよね。
杉野(kiCk / チーフデザイナー):
恥ずかしい(笑)。昔なんですけど、「ハイライトのパッケージが変わるのがあまりにも悲しいから、箱買いした」という内容のものを投稿していたんです。
ーそれを発掘して載せたんですか!感動的な体験ですね(笑)そういった部分含め、熱量は感じられましたか?
石塚さん(JT):
そうですね、熱量の高さは感じました。
企画から実行までその高い熱量を維持しながら、スピーディーに進められたと思います。僕はkiCkさんとは今回が初めてだったんですが、社内で噂は聞いていました。ハイライトのように5年に一度ほどしか施策を打たないブランドについては、通例的に同じ代理店さんに知見が溜まっているとも言えないため、フラットな視点で選んでみようということでコンペにして声をかけさせてもらったんです。それで実際にkiCkさんとやってみたらすんなりと話が進んでいく実感があって、いいリズム感というか、バイブスで進められたなと思っています。
厳しい制約下でのSNS戦略。TikTokで「万バズ」を生んだ緻密な体験設計

ー自由なPRが難しい業界において、若年層に届けるというミッションは非常に困難な挑戦だったはずです。その突破口として「喫茶店」を選んだ背景には、どのような狙いがあったのですか?
石塚さん(JT):
ハイライトは今シェアが伸びていて、実はその伸びを牽引しているのが2、30代なんです。その人たちが「どうしてハイライトが好きなのか」というメカニズムを調査すると「レトロ」という言葉がキーワードとして出てきました。下北沢や渋谷、高円寺といったエリアでのシェアも高く、純喫茶との相性は良いだろうという話は社内でも以前からありました。少し前に起きた若い子の間でのレコードブームのように、レトロな世界観が今再評価されていると感じていたというのもあります。
小野間(kiCk / コミュニケーションプランナー):
20代を中心とするTikTokの中でも「カフェ」は、特徴がないのにバズりやすい傾向があったので、話題化というお題に対して、喫茶店は一番良いポイントだと思いました。
石塚さん(JT):
ただ、元々はイベントありきでは考えてなかったんです。
60周年のときは記念Zippoだけでバズっているので、アイテム拡張だけでもいけるかもしれないと思っていましたし、社内的にも「イベントをやります」となると腰が重くなる部分もあるので。ただ一方で、オフラインイベントの方がユーザーのSNS投稿を促せるという観点ではありだと思っていたので、EC販売するグッズ制作はマストとして、イベント企画もできれば検討してほしいとオーダーを出させてもらっていました。

ー今回、ファンの方々に色々な形で楽しんでもらうための種をたくさん作ったと思います。結果として来場した方々が自然と動画を配信してくれて話題になったと思うのですが、来場者が自発的に発信したくなるような密な体験の設計についてこだわった点はありますか?
石塚さん(JT):
小野間さんから、難しさはあるけど「TikTok」は狙った方がいいというお話があったんです。ただ、たばことTikTokは相性が悪いと思っていて。
SNSでバズりたいと言ったときのSNSって、僕らの思考だとXやInstagramだったんです。TikTokは知っているけど、おそらく無理だろうと。でもそこを改めて小野間さんに押していただいて。実際にやってみたら、スゴいことになって。うちの社内で「TikTokで万バズした」みたいな言葉、今後もなかなか出てこないんじゃないかと思います。
そういう「なんとなく無理だろう」と思っていたところを改めて押していただいたこと。そして、それをすごく具体的にイメージしやすい形でご提案していただいたというのがすごく印象的でした。

小野間(kiCk / コミュニケーションプランナー):
TikTokはたばこやお酒など、未成年が楽しめないものは投稿しても露出の制限がかかってしまうんです。ただ今回はたばこを直接的に表現せず、喫茶ハイライトという形にした点、Zippoは見せているけど煙や火は見せないなど、そういった配慮が必要でした。
今回は、そもそもユーザーに自発的に投稿してもらわなきゃいけないという前提があって。でも、投稿する時って「めっちゃ嬉しいか、めっちゃムカつくか」のどっちかじゃないですか(笑)。両極端な感情がないとバズらないみたいなことがあるので、例えばグッズだと、看板キーホルダーをただ売っているだけだと面白くないですが、それをガチャガチャにすることで楽しさが付加されますよね。クリームソーダも、買って飲むだけだとそこで終わっちゃいますが、その後にくじを引けてグラスがもらえるみたいな遊びのポイントがあると、当たった人は嬉しくて思わず投稿してしまう。1つのことに対していくつもの体験を組み合わせて感動を生むみたいな、「自分が投稿者だったら」という立場になって発想していくことが大事かなと思っています。


歴史あるブランドの「人格」を守る。熱量と執念のクリエイティブ
ーハイライトが築いてきた世界観を大切にしながら、新たなクリエイティブに落とし込む難しさはありましたか?

杉野(kiCk / チーフデザイナー):
世界観については社内でもすごく話し合いました。ハイライトのブランドとしての立ち位置とか。ハイライトが好きな人は、吸っている自分も込みでアイデンティティを持っていたり、自己主張のアイテムとして吸っていたりする方も多い印象でした。だからこそ、新しいファンだけじゃなく、これまでハイライトを好きで吸ってくれていた方達を置いてきぼりにしちゃいけない。これまでハイライトが培ってきた財産に、レトロを組み合わせてどうやって表現できるかを社内でも時間をかけて検討し、提案しました。その捉え方のズレを石塚さんからご指摘されたことはなかった気がします。「ここはいいから、もっとこういうアプローチをしたら確度が高くなるかも」みたいなフィードバックをもらうことが多かったのかなと思います。
石塚さん(JT):
そうだと思います。
そこにズレがなかったので、クリエイティブに関しては「なんか違う」みたいなことが全然なくて、ノンストレスで進んでいった印象です。そういうテンポの良さも、冒頭に話した熱量の維持とかにも繋がったのかなと思います。
熱量を感じたのは、もちろんクリエイティブもそうなんですけど、例えば、クリームソーダの度重なる試作であったりとか、喫茶店の天井に吊るした短歌の大きさの検証などもですね。このくらいの身長の女性から見るとこのくらいの高さになります、と実際に何パターンも検証している風景が写真でガンガン送られてきて。あれはちょっと面白かったというか、気合いを感じました(笑)。

杉野(kiCk / チーフデザイナー):
やっぱり丁寧にデザインに向き合うことに価値があるし、向き合わないと怖かったというのもあるかもしれません。でも楽しかったんです。
夜中にデザイナーの古賀ちゃんと検証写真を撮ったり、一緒にクリームソーダを作ったり・・青春でしたね(笑)。クリームソーダのグラスを探しに合羽橋にも行き、その帰りにレトロ喫茶に寄ってクリームソーダを頼んで、「この色にするにはもう少し食紅を落とした方がいいかも」とか、「やっぱりさくらんぼは欲しいよね」とかとことん話し合いました。
個人的に元々ハイライトを吸っていたのもあるし、ハイライトのデザインは和田誠さんによるもので、教科書で見るような名作ですし。実際にそのデータをご提供いただいてIllustratorで開いた時に、1回閉じましたもん(笑)。こんな素晴らしいものを私が扱わせて頂いていいのかと。歴史もあるし、ブランドの財産であるからこそ、どうすれば60周年施策を超える素敵なモノにできるか、バズらせられるかは、かなり追求しました。

赤堀(kiCk / チーフクリエイティブプロデューサー):
その熱量をそのまま変わらず走り切れるようにサポートすることはプロデューサーとして結構意識していました。みんなが同じ方向に向かって全力で走るという環境の中で、メンバーが楽しくやってくれているのを見るのは私自身もすごく嬉しかったです。稼働や予算の制限に縛られすぎず、良いものを作ることに対してチーム全員で全力で向き合えた案件でした。

ー名作デザインへのリスペクトと、最高の体験を届けたいという執念。
チーム全員の圧倒的な熱量が、厳しい規制の壁を越えるクリエイティブの原動力となったことが伝わってきます。
こうして、一切の妥協なく作り込まれた「喫茶ハイライト」の企画とクリエイティブ。しかし、いざイベントが開幕すると、チームの想像を遥かに超える「さらなる熱狂」が待っていました。
続く後編では、最長5時間待ちを記録したイベント当日の驚きの盛り上がりや、想定外の反響から見えた「ハイライト」というブランドの本質的な価値、そしてJTとkiCkが築き上げた“理想的なパートナーシップ”のあり方へと迫ります。
後編はこちらから
