花盗人|1920(大正9)年5月23日(日)|
📗 1920年(大正9年)の日記です。書いたのは18歳の祖父、読んでるのは106年後の孫(私)。
旧制中学を出たばかり。
小学校の教員を目指して受験した師範学校に落ちて、来年こそ!と思いながら、親戚の家に居候しつつ田舎の小学校で代用教員をしていた、初夏のころの話です。
🧭 この日のあらすじ
(いつもの週末は土曜日から高山の実家に1泊するけれど、今週は日曜日だけの日帰り。)
朝8時に実家へ帰省。
手帳を買って、散髪して、昼寝して、夕方6時にまた下宿先の石松家へ戻る。
実家への道すがら綺麗なつつじを見つけて、摘んで持って帰ったら、「それ、どこで摘んできたの?」と咎められてしまった。
悪気はなかったんだけど…。18歳、反省する。
そして今年の抱負3か条を宣言:
・体を鍛える
・堂々と話す
・勉強をさぼらない。
📅 日記本文
朝8時、内に帰る。手帳を買い、とこばに行きて後、少し寝て6時また石松に行く。
内に行く途中、美しきつつじありければ、取りて家に持ち行きたるに、「どこなり」と言わる。
ああ、世の人においても、このごときもの多々あり。つつしまざるべからず。
我思うらく、今年中のつとめとして主なるものは、
体を強くすること
気を大きくし話を上手にすること
勉強を怠らざること
📌 背景メモ
内に帰る
毎週末、8kmほど離れた実家に帰省している祖父。
自転車とかバスとか、特に書いていないということは徒歩だったと思われます。
8km徒歩は、2時間ほどかかるでしょうか。往復所要4時間。1万歩は軽く達成ですね。

💭 孫のつぶやき
悪気ゼロで摘んできたつつじで怒られる18歳。
祖父の家は、母と妹との3人家族。お母さんが喜んでくれると思ったんだよね。
「世の中よくあること、でも気をつけよう」って自分をちょっとフォローしつつ反省してるのも、なんか人間くさくていい。

余談ですが、この日記の情景を詠みたくなりました
(平安貴族か)。
(俳句を試みましたが五七五に収まらず短歌になった次第)
うなだれし花盗人を
玄関のつつじは笑みて
見送りにけり
息子が帰り道に摘んできてしまった、つつじの花。
この美しい花を母や妹に見せたかったのだと思う。
母はそれを咎めつつも、内心は嬉しかったに違いない。
花に罪はないと、玄関にそっと飾ったかもしれない。
うなだれる息子を、見事に咲いたつつじがにこやかに見送っている、そんな光景を歌にしました。

