社会学系学部生・大学院生のための統計学ブックガイド


はじめに

この記事は統計学を勉強したい、もしくは色々な事情で勉強しなければならなくなった社会学および関連分野を学ぶ学部生・大学院生を対象とした統計学のブックガイドです。
より具体的には、数学に苦手意識のある(または苦手でなくとも得意とは言えないような)学部生・大学院生が、卒論や修論のために統計学やデータ分析を独習するような状況を想定しています。「卒論/修論のためにアンケート調査の分析をしないといけないけど、統計学がさっぱり分からない。社会調査士科目は受講したのに内容はすっかり忘れてしまった!さてどうしよう…」みたいな状況です。
なお、統計分析ツールの勉強法については別に記事を書く予定ですので、今回はあくまで統計学と分析手法の基礎を学べる教科書に的を絞ります。大学生・大学院生の皆さんは所属大学の図書館で探してみてください(所蔵されていなければリクエストを出してみましょう)。
それでは順番に紹介していきましょう!

入門の一冊

倉田博史『大学4年間の統計学が10時間でざっと学べる』角川文庫

角川の「大学4年間シリーズ」の一冊です。世の中には「分かりやすさ」を売りにした統計学入門書はたくさんありますが、これは大学レベルの授業のエッセンスを維持しつつも幅広い読者を想定した入門書に仕上がっているところが素晴らしいと思います。
値段もお手頃ですし、文庫なので電車などでの移動中でも気軽に読むことができます。「大学の授業で統計学の基礎を学んだけどよくわからなかった」という人が基礎を確認するのには最適な一冊だと思います。

一冊買うならこれ

阿部真人『データ分析に必須の知識・考え方 統計学入門』ソシム

タイトルは「入門」と冠されていますが、文系学生の場合は前述の10時間本のような「超・入門書」の次くらいに読むとよい本だと思います。
この本の良いところは、グラフや図を多用している上にカラー印刷であるため、ビジュアルな面からも大変分かりやすいところです。また、仮説検定の運用に関する注意点、統計的因果推論、ベイズ統計など現代の統計学の重要トピックに関しても一通りの知識を得られます。
もし私が大学生や大学院生に「統計学の本を一冊買うとしたらどれがおすすめですか?」と聞かれたらこの本をおすすめするでしょう。

幅広い知識をカバーする

栗原伸一・丸山敦史『統計学図鑑』オーム社

統計学に関する様々な項目が図鑑形式で解説されている本です。様々なトピックがカバーされている上に、図解が多用されているため非常に分かりやすいです。一冊手元に置いておいて、必要になったら辞書的に引いてその項目について確認するという使い方もできるかもしれません。

基礎から徹底的に学びなおしたい方へ

久保川達也『公式と例題で学ぶ統計学入門』共立出版

文系が統計学を学ぶ上で壁となるのは、いうまでもなく数学でしょう。数式の複雑な表記や延々と続く数式の展開を見せられると、苦手意識を感じてしまう方は少なくないでしょう(私もそうでした)。
しかし、どこかの段階で数理統計学を学ぶことは避けては通れません。本書は数理統計学者が執筆した統計学の入門書であり、一般の(とくに文系向けの)統計学の入門書よりも数学的背景に関する説明が丁寧です。かといって難しすぎるというわけでもなく、「数学が苦手でも背伸びすれば届きそう」という絶妙なさじ加減です。
なお、もっと本格的に数理統計学に入門したい場合は、同著者の『データ解析のための数理統計入門』をどうぞ。

分析手法を理解する

久保川達也『公式と例題で要点をつかむ多変量解析』共立出版

記事執筆時点(2026年7月)では出版されたばかりの本で、広い意味での多変量解析(回帰分析、判別分析、主成分分析、クラスター分析、因子分析、構造方程式モデリングなど)を数理的な背景も含めて解説している書籍です。
第3章で扱われているベクトルと行列については文系向けの多変量解析の教科書では飛ばされがちな内容ですが、この本では必要な知識をコンパクトにまとめてくれています。
『データ分析に必須の知識・考え方 統計学入門』や『統計学図鑑』で一通りの分析手法が頭に入ったら、この本でさらに手法の理解を深めるのがおすすめです。