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奇縁堂だより 44【本の紹介 : 「山」の本】

山の日

「なぜ,山の日は8月11日なのか?」

 親戚の子どもからこう問われて,答えられませんでした。そこで,"山の日"がなぜ8月11日なのか調べてみました。
 
 "山の日"は,「山に親しむ機会を得て,山の恩恵に感謝する」という趣旨の国民の祝日です。
 この山の日は2014年に制定され,2016年に施行となりました。当初は祝日のない6月にする案や,海の日(7月第3月曜日)の翌日にする案などがありましたが,お盆のころで休暇がとりやすい8月11日に決定しました。
 一時は,お盆前の8月12日が有力でしたが,1985年に日航ジャンボ機が群馬県の御巣鷹山に墜落した日と重なることから見直され,8月11日に落ち着いたということです。

 長くなるので,山の日が作られた経緯は割愛しました。興味のある方は「公益財団法人全国山の日協議会」のホームページをご覧ください。

 とにもかくにも,この時期は夏山のトップシーズンです。
 そこで今回は,書肆奇縁堂の在庫の中から『山』に関わる小説,写真集,児童書,ガイドブックなどを紹介します。

紹介作品一覧

・『生還者』
・『遭難者』
・『八月の六日間』
・『氷壁』
・『クライマーズ・ハイ』
・『尾瀬に死す』
・『ネーチャーガイド尾瀬の自然図鑑』
・『晴れ着の富士山』
・『週間ふるさと百名山 富士山』
・『山のいのち』

作品紹介

・『生還者』 下村敦史 文庫 ¥350(税込)
 ネパールとインドの国境に聳えるカンチェンジュンガは,世界第3位の標高を誇る山だ。ここで日本人登山者4名が死亡する大規模な雪崩が発生。犠牲者の一人は4年前に登山をやめたはずの直志の兄だった。
 登山家の直志は,兄の遺品のザイルが何者かによって切断されていたことに気付く。兄は何者かによって殺されたのか?
 ところが,雪崩に巻き込まれた行方不明者の中から生還者が一人いた。その口から語られたのは恐るべき事だった。後日,もう一人の生還者が救助されたが,語られた事は真逆のことだった。

・『遭難者』 折原一 文庫 ¥250(税込)
 4月下旬,笹村雪彦は所属する山岳サークルの北アルプス登山行で滑落死を遂げた。雪彦はベテランとも言える登山家で,そこは決して難易度の高い登山ルートではなかった。
 後に,山を愛した彼に捧げた追悼集が発行された。ところが,雪彦の死因に疑いを持った母親の行動によって予想外の事態が発生する。
 雪彦の妹・千春と雪彦の学生時代の友人・南光彦は,登山届,現地地図,死体検案書など詳細な記録を収録した2分冊の追悼集を分析し,事故の真実に迫る。

・『八月の六日間』 北村薫 文庫 ¥250(税込)
 
出版社で雑誌の副編集長をしている"わたし"は、3年前に同僚の藤原ちゃんから登山に誘われる。そして、この時の経験がきっかけとなり”わたし”は登山にハマった。
 山が見せる景色、山で会う人、”一人”で山を登る時間、登山がもたらすこれらの要素が、日常で凝り固まった”わたし”の心をほぐしてくれる。
 山は"わたし"を受け入れ、心を開いてくれる。そんな登山(山)の魅力が詰まった"わたし"の山登り小説。

・『氷壁』 井上靖 文庫 ¥150(税込)
 魚津と小坂は,今度こそは冬の奥穂高を攻略しようと企んでいた。
 今回,選んだのは,まだ冬季に完登の記録ない前穂高の北壁からAフェースを経て頂上へ登るルートだ。
 昭和31年1月1日,二人は登攀を開始した。悪天候で難儀しながらも完登まであとわずかというときに,切れる筈のないナイロン・ザイルが切れて小坂は墜死した。残された魚津は遭難の真因をつきとめようとするが,小坂が人妻・八代美那子への思慕を募らせていたため数々の憶測が。
 半年後,魚津は穂高の涸沢とは反対側の滝谷の合壁を単独で登りはじめる。

・『クライマーズ・ハイ』 横山秀夫 文庫 ¥350(税込)
 
1985年、群馬県上野村にある御巣鷹山に飛行機が墜落する事故が起きる。
 地元紙として、事故の一報を朝刊に載せようとするも現場に向かった記者からなかなか連絡が入らない。校了の時間も近づくそんな状況の中でも、新聞社内は権力闘争(派閥争い)が行われている。全権デスクとして悠木は判断を迫られる。
 北関東新聞社がてんやわんやしている中、悠木の同僚である安西が歓楽街で倒れ、意識が戻らないとの連絡が入る。悠木と安西は、この日谷川岳の衝立岩に挑む予定だったが、事故の影響で安西はひとりで谷川に向かったはっずだった。
 その安西がなぜ歓楽街にいたのか?
 小説という形で「報道とは」「報道と命とは」を問いかける作品。

・『尾瀬に死す』 平野長靖 四六判 ¥350(税込)
 本書は,尾瀬に生まれ,地元の沼田高校を経て京都大学で学び,北海道新聞勤務の後,長蔵小屋の三代目を継いだ平野長靖の遺稿集です。
 平野は山小屋の運営だけでなく,貴重な尾瀬の自然を守るために “尾瀬自動車道建設中止”を求めて東奔西走し,当時の環境庁長官・大石武一にも直訴しました。その甲斐あって,自動車土の建設は中止となりました。
 そして,1971年12月1日,山小屋の冬支度に一区切りをつけた平野は,豪雪の中を山小屋から家族が待つ山麓へ向けて出発しましたが,途中,寒さと疲労にために36歳で不帰の客となりました。

 この遺稿集は,平野の高校,大学,北海道新聞社時代,そして尾瀬での生活と自然保護運動を中心として構成されています。温暖化に起因する異常気象に悩む現在だからこそ,読んで欲しい一冊です。

・『ネーチャーガイド尾瀬の自然図鑑』 前田信二 A5判 ¥600(税込)
 
尾瀬で観ることができる植物・キノコ・動物が写真付きで紹介されています。該当の植物や動物を観ることができる時期と場所が載っているのが親切です。昆虫と鳥類の多さは特筆すべきものだと思います。
 ガイドブックの部分では、「尾瀬ヶ原周辺」「死仏山」「尾瀬沼周辺」「燧ヶ岳」「富士見峠周辺」の5つにエリアを分け、それぞれの見どころを紹介しています。また区間距離とコースタイムも記載されており、尾瀬初心者に撮ってはとても助けになる内容です。
 尾瀬の自然の豊かさを感じることができる一冊になっています。

・『晴れ着の富士山』 高塚晴夫 22.5cm × 26cm ¥1,320(税込) 
 富士の美しさを美に入り細を穿って描写し、まさに晴れ着を纏ったような高貴な姿に映し出している。
 巻末の撮影ガイドは、富士を愛する素人写真家には貴重なアドバイスとなるはず!
 こんな姿もあったのかという驚きと、やっぱり日本一と思える、そんな富士山の姿が詰まっている写真集です。

・『週間ふるさと百名山 富士山』 30cm×23cm ¥150(税込)
 
『山と渓谷社が選んだ 週間ふるさと百名山』の創刊号(2010年6月22・29日号)で,サブタイトルは“時代を超え,国境を超えて人々を魅了する日本のシンボル”です。
 内容は「ビギナーから上級者まで登れる富士山完全ガイド」,「花も月の星も…!見る富士・撮る富士10」,「山小屋賢い活用術」など盛り沢山です。

・『山のいのち』 立松和平・作,伊勢英子・絵 A4変形判 ¥380(税込)
 〝ひきこもり〟で長い間小学校を休んでいた静一は,15階建ての団地で長い間話さずにいました。静一は,両親が海外出張する夏の三週間,山奥の父の故郷でおじいちゃんと二人で暮らすことになりました。
 この山奥の家でおじいちゃんと一緒に,山の木々や,イタチ,山鳩,清流に棲むヤマメやサワガニなど,山の生き物と接し,その命を頂きながら暮らすうち,静一は忘れていた自分の声を聞きました。
 本書は,小学校中学年を対象とした絵本です。

今回も「奇縁堂だより」をお読みいただきありがとうございました。
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