お化けが見える人。
みなさん、お化けって見えますか? 私は見えません。でも見たことはあります。お化け。
18歳だったか19歳だったかの夏の夜に金縛りにあい、それでびちょびちょのおばさんのお化けを見たことがあるのです。ソバージュの髪の毛が昆布のようにびちょびちょに濡れていました。
……
…
が、厳密にいえばあれは夢だったと思っている。
なぜならあの頃の私はもみくちゃに疲れていたし、それ以前も以降もお化けをみたことがないから。あの1回きり。
それ以外でラップ音とかポルターガイスト的ななにかにも遭遇したことはない。だから夢だと思っている。びちょびちょのおばさんが「ウーーーーーーッ」とうなりながら私の胸を押さえていたのだが、あれはきっとお化けではなかった(確信)。
お化けを見たことがある人に会ってみたい。いったいどういう感覚なんだろう。小さいときからみんながそうであるように、私も心霊番組が大好きだった。お化けが見えるという特殊能力。
22歳くらいのときの私は、人の出入りが激しいメガネ屋さんでアルバイトをしていた。誰かが辞め、また誰かが入ってくる。入れ替わり立ち替わりだ。私は数年そこでアルバイトをしていたから、はじめましての挨拶ついでによく聞いていた。
「初めましてイトーです。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします、〇〇です」
「〇〇さん、お化け、見えますか?」
「え?」
スタッフは私と同年代の人が多かったのだが、この質問に対しての答えは「いえ、見えませんよ」であり、続けていぶかしげな顔で「な、なんでですか?」と聞かれることが多かった。
私は「いや、見える人に会ったことないんでどうかなと思って」とよく言ったものである。怖がりな人の場合は「え、もしかしてここって、お化け出るんですか?」と言っていたものだが「いや、単純な好奇心です」と言って安心してもらった。
個人的にはお化けはこの世にいない、と思っているのだけど、お化けがいないとツジツマが合わない話を私の身の回りで2回聞いたことがある。
ひとつめは私の小・中学生の友人の話。彼は私が所属していたサッカー少年団のキャプテンで燃えるような闘魂男だった。
北海道のサッカー強豪校に進学した彼は、卒業後は「消防士」になると言っていたのだが、高校を卒業した彼が選んだ仕事はなぜかパティシエであった。
なぜなのか、と聞いてみると、進学した先の高校は有名なお化けスポット系の高校でもあったらしく、彼は覚醒してしまったというのだ。つまり「見える人」になってしまったらしい。
それもそんじょそこらの見えるレベルではないという。道の至るところにいるらしいのだ。お化けが。なので彼は車が運転できなくなった。一般人とお化けの区別がつかないから。これでは消防士になれない。
この話を聞いたとき、私たちは大いに笑ったものである。あれだけ燃えるような男だったのに、そんなことではかわいそうではないか。ただ、それが本当なのかは疑わしい。真相は闇の中である。
もうひとつ、お化けがいないとツジツマが合わない話があるのだが、その話を思い出してみると、ここで気軽に書いてはいけない話だと思い至った。
その話もまた真相は闇の中ということにしておく。
私はお化けが見えない。見える人の話を聞くのは好きだが、自分が見える人だったら、ちょっと困っちゃうなぁ。

<あとがき>
実際のところ、お化けっているんですかね。死後の世界とか裏側の世界とかあの世とかこの世とか色々ありますが、あれってもしかして量子の世界とか5次元とかそういう「科学」で説明できるときがくるんじゃないのかな、とか思ったりもしています。もう1人の話は本当に笑えないくらい怖い話なので、ここには書けません。匂わせでごめんなさい。今日も最後までありがとうございました。
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