【71】至高の男⑨「菌活ボーイがゆく」
発酵の世界にハマるきっかけは、いつも小さなひと匙から🥄✨
こうじの魅力にはまった猫サラリーミャンの菌活実践記です。
「育て上げた醤油こうじを食べてしまうのが心苦しくて」の心境で菌との触れ合いの日々を送る。
さっちー師匠ににゃんだかんだ巻き込まれながら“菌友”づくりに励む。
文/菌活ボーイ
イラスト/ちぐ

(前回のお話:ついに菌道勝負が決着した)
トラさんはパナマ帽を目深にかぶり、トランクを持ち上げた。
「負けたのは俺かもな」
「お兄ちゃん、行っちゃうの?」
さっちー師匠が目を潤ませた。
「アニキ、行かないでください」
のぼにゃん師範も泣きながらすがりついた。
トラさんは窓の外を眺めた。
先々代の家元が植えたカイノキが、真っ赤に色づいていた。
「美星は神楽の季節だなあ」
流れ星の降る美星町は、総本山のはるか北にある。
今はもう雪がちらついているかもしれない。
「トラ、わしの道場に来い。先代から頼まれているんだ。鍛え直してやる」
雄にゃん先生が呼びかけた。
トラさんはかぶりを振った。
「俺は俺のやり方で、菌道を極めたい。さっちー、幸せになれよ。のぼ、お前らもたっしゃでな」
トラさんは、再び僕らの前から去って行った。
総本山の秋は深まっていた。
(続く)
