連載「菌活ボーイがゆく」【61】マドンナ現る④
発酵の世界にハマるきっかけは、いつも小さなひと匙から🥄✨
こうじの魅力にはまった猫サラリーミャンの菌活実践記です。
「育て上げた醤油こうじを食べてしまうのが心苦しくて」の心境で菌との触れ合いの日々を送る。
さっちー師匠ににゃんだかんだ巻き込まれながら“菌友”(菌活友だち)づくりに励む。
文/菌活ボーイ
イラスト/ちぐ

「いいか、お前ら」
トラさんが言った。
「このヨーグルトはな、『トラちゃんに食べさせたい』。ユキっぺが、わざわざ俺のために、高矢町から持ってきたやつで作ったものなんだぞ。本来なら、『トラさん、真っ先に食べて』となるはずじゃないか」
「ごめん。悪かった」。さっちー師匠が謝った。「うっかり、忘れてたの」
ふうん。トラさんは妹をにらんだ。
「俺は、この世でたった1人しかいない、お前の兄ちゃんなんだぞ。なのに、お前はうっかり、忘れていたんだな」
時計の針の音がやけに大きかった。
重苦しい時が流れた。
「俺のはないんだな。俺の」
「ヨーグルトくらいで。みっともない」
「ヨーグルトくらい? お前はいま『ヨーグルトくらい』と言ったな。キジトラ流菌道第64代家元のお前が、乳酸菌を『くらい』とはなんだ。くらい、とは」
「いつも、『家元なんてたいしたことない』って言ってるじゃないの」
「なにッ。お前は、兄ちゃんに反論するのか」
トラさんは毛を逆立てた。
「まあ、まあ。アニキ、機嫌を直して」
のぼにゃん師範が必死になだめた。
「お兄ちゃんだって、私たちのことを20年間も忘れてたじゃないの」
師匠は逆上し、つい口走った。
(続く)
