連載「菌活ボーイがゆく」㊹父の日
発酵の世界にハマるきっかけは、いつも小さなひと匙から🥄✨
こうじの魅力にはまった猫サラリーミャンの菌活実践記です。
「育て上げた醤油こうじを食べてしまうのが心苦しくて」の心境で菌との触れ合いの日々を送る。
さっちー師匠ににゃんだかんだ巻き込まれながら“菌友”(菌活友だち)づくりに励む。
文/菌活ボーイ
イラスト/ちぐ

「お母さんそっくり」と言われるから、自分でもそう思ってきた。
仕事人間の父とは、昔からそりが合わなかった。
その父が去年の暮れに脳出血し、半身不随になった。
がんも併発し、「もはや手の施しようがない」と医者に告げられた。
2年ぶりに古里に帰省し、病室を見舞うと、父は目を開けていた。
呼吸が苦しそうだった。
「手を握ってあげて」
妹に言われて、おずおずと左手に触れた。
父は、驚くほどの力で握り返してきた。
「喉が渇く?」。妹が聞いた。
うなずく父。何かを言っているが、意味は分からない。
「お酒?」と尋ねると、にやりとした。
「お茶にする?」。父はかぶりを振った。
「牛乳?」。今度はうなずいた。
食事は1カ月以上とっていないという。
高カロリー食の点滴だけで生きている。
吸い飲みを唇に当てると、三度うまそうに飲んだ。
「兄ちゃんと似てる」。妹が笑った。
この日の朝。僕も牛乳がなくて大騒ぎした。
カフェオレを飲みたいのに、妹も弟も牛乳を飲まないという。
その夜。父の酒をあさる僕を見て、妹がまた笑った。
「後ろ姿が似てる」
和室には、酒がたくさんあった。
妹も弟も、酒を飲まないらしい。
知らなかった。
あしたは、キジトラ招福堂のどぶろくパウチを持って行こう。
僕が好きな味だから、父も気に入るかもしれない。
(続く)
