連載「菌活ボーイがゆく」【62】マドンナ現る⑤
発酵の世界にハマるきっかけは、いつも小さなひと匙から🥄✨
こうじの魅力にはまった猫サラリーミャンの菌活実践記です。
「育て上げた醤油こうじを食べてしまうのが心苦しくて」の心境で菌との触れ合いの日々を送る。
さっちー師匠ににゃんだかんだ巻き込まれながら“菌友”(菌活友だち)づくりに励む。
文/菌活ボーイ
イラスト/ちぐ

(前回のお話:トラさんの体調を心配したユキちゃんがヨーグルトメーカーを持参。完成したヨーグルトをみんなで分けていざ味見!でも肝心なトラさん用を分けるの忘れちゃってた…の巻)
「それを言っちゃあ、おしまいよ」
トラさんはすっくと立ち上がった。
パナマ帽を目深にかぶり、トランクを持った。
「トラちゃん、どこ行くの」
ユキちゃんが尋ねた。
「止めないでください。あなたを巻き込みたくないんです」
「アニキ。行かないでください」
のぼにゃんが泣きながら、すがって引き止めた。
「いつの間にか、俺のいない実家が日常になっていたんだなあ」
「お兄ちゃん、どこ行くの」
「そうだなあ。大田川沿いを歩いてみるか。天神峡の紅葉も気になるしなぁ」
トラさんは、さっちー師匠に優しいまなざしを向けた。
「勘違いするなよ。俺はいつでも、どこにいても、お前のことを忘れたことはないぞ。幸せになれよ」
「お兄ちゃん」「トラさん」「トラちゃん」
トラさんは、振り返らなかった。
「お兄ちゃ~ん」。師匠がもう一度、呼びかけた。「そっちは、台所」
「あッ!」
トラさんは恥ずかしそうに部屋を出て行った。
は~~~っ。
僕らは深いため息をついた。
(続く)
