減税に財源の話をしてはいけないの逆襲
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以前、減税の財源なんて話をしちゃだめだって記事を書きました。あの時は主にガソリン減税の問題でしたが、ガソリン減税は実現したんで、今回は消費税減税を含む一般的な話をします。
減税の目的は経済の活性化です。消費税なら消費を増やして経済活動を活発にする。ところが、消費税を減税した分をどこかで増税したのでは、全体としては経済を活性化させません。もちろん、何を増税するかで、どの分野が活性化してどの分野が沈滞するかは変わりますけど、どこかには皺寄せが行きます。だから、純粋な減税に比べて経済効果はずっと小さくなるし、場合によっては経済を沈滞させる効果のほうが大きくなります。
増税ではなく、歳出削減で補うとしても同じことで、社会に流れるお金の量が減る分だけ、経済活動を抑えてしまいます。だから、減税のバーターとして増税したり歳出を削減したりしてはいけないわけです。
減税の議論に「財源を明らかにしろ」と主張する人たちがいます。減税の代わりに何を増税するのか、あるいは歳出をどう削減するのかはっきりさせろ、というわけですが、バーターとして増税や歳出削減を伴わなければだめだというのは緊縮派の論理であって、誤っているわけです。
もちろん、国が事業を行うには財源が必要です。国の会計には歳出と歳入があって、帳簿の上ではそれは同額でなくてはならないのだから、歳入の財源があるに決まっています。国の歳入はほとんどが税収と国債を発行して得る公債金です。税外収入というのもあるけど、わずかなので、忘れても議論には影響しません。つまり、国の財源とは税収と国債(わかりやすいように公債金を国債と書きます)です。
国の歳出は税収の範囲で行われるのではありません。手順としてはいわゆるスペンディング・ファーストで、「支出が先」です。税収は年度末まで確定しないのだから、まず支出してしまわなくてはなりません。歳出の額を決めてしまって、どんどん支出して、年度末に税収が確定すると、逆算でいくら足りないかが決まります。その分を国債発行で埋めるわけです。もちろん、税収は随時入ってくるし、国債も毎月発行するのですが、最後の辻褄は年度末に合わせます。年度途中で政府の資金が足りなくなったら、政府短期証券で日銀から借りて、税金が入ったときに返します。
したがって、予算ではまず歳出が決まります。国がどんな事業をするかを決めて、必要な額を積み上げます。ここで青天井で積むのではなく、予想される税収と発行できる国債の額からだいたいの総額が決まるので、それに合わせて予算を組みます。そして、上の手順で使ったり入ったりした辻褄を年度末に合わせるので、実際の国債発行額はその時に決まります。国の「財源」というのはそういうものです。
まとめると、一般会計はあらゆる費目が合算されているので、「税収の使い道」とか「国債の使い道」とかはありません。税外収入は無視すると
歳出の合計=税収+国債
これだけです。総額でいくら使うかだけの問題であって、どの事業に国債を使ったとかどの事業に税を使ったとかはないんですよ。これは重要です。
特定の目的にしか使えない目的税もありますが、ごく限られています。ガソリン税の一部も昔は道路特定財源でしたが、今は一般財源です。そこで問題は消費税増税時に国民が聞かされた「消費税増税分は全額を社会保障に充てる」という説明です。この説明は民主党野田政権時の三党合意で決まったものですが、消費税は目的税ではなく一般財源なので、詐欺みたいなものです。これによって、消費税を減税すると社会保障費を減らさなくてはならないという詐欺論理が使われるようになりました。これは消費税を減税させないための詐欺論理であり、消費税は目的税ではないのだから全くの嘘です。繰り返しますが、全くの嘘です。仮に消費税増税分を全額社会保障に充てるとしても、消費税以外のお金を使ってもかまわないので、消費税減税の障害にはなりません。
安倍政権の二度目の消費税増税では、批判をかわすために、「消費税全額を社会保障に充てる」という説明に変わりました。しかし、これも同じことで、意味はないわけです。どのみち、社会保障費は消費税収を超えてしまうのが明らかなので、何も特別なことをしなくても「消費税は全額社会保障に充てました」と言えてしまいます。問題は上に書いたように、この説明があたかも消費税を減税すると社会保障費を減らさなくてはならないかのように利用されたことです。もちろん、そんなのは大嘘です。全くの詐欺論理です。
だから、消費税も含めて、何かの税を減税するときに「財源」など必要ないのです。減税によって税収が減ったら国債発行を増やすし、減税で経済が活性化してむしろ税収が増えたら国債発行を減らすだけです。実際には消費税や所得税を減税すれば、消費が増えて経済が活性化し、税収は増えます。断言しますが、増えます。増税すると税収は減ります。だからこそ、経済成長こそが財源とも言われるわけです。
ここまではただの仕組みの話なので、緊縮派だろうが反緊縮派だろうが同じです。緊縮派あるいは財政規律派は国債の発行が増えすぎると財政破綻すると主張して、国債発行を抑えようとします。スペンディング・ファーストなので、国債発行を抑えるためには歳出を絞らなくてはなりません。
それに対して反緊縮派、特に積極財政派は国債の発行を無理に抑えなくていいという立場から歳出を増やします。これにはちゃんと理屈があって、国債の金利が経済成長率より低ければ財政破綻しないというドーマー条件が知られています。だから、国債発行を厭わずに積極的に歳出を増やして経済成長させればいいというのが積極財政派の基本的な考え方です。もちろん、国債を発行しすぎるとインフレが進むので、適切なインフレ率を目指して国債を発行することになります。この場合、金利が低いことも重要な条件なので、金融政策と財政政策の協調が重要になります。テクニカルにはいろいろあるけど、とにかく反緊縮政策はなんらおかしな考えではありません。
どっちがいいか、というより、どっちがまともな考え方なのかですが、前にも書いたように、これまで緊縮で成功した政権はないんですよ。緊縮はデフレ誘導なので、経済が縮小して雇用が減ります。緊縮政策が失敗することはもう十分にわかっています。国債発行をタブー化すると、謎の「財源論」を振り回すことになります。だから、緊縮はだめです。経済成長を促して国民を豊かにするには、反緊縮政策しかないと思いますよ。前にも書きましたが、特に左派リベラル的な社会を目指すなら、反緊縮政策しかありません。
おまけ的な話。岸田政権は防衛費増額の財源としてタバコ増税を決めました。また、時限付きだった復興所得税の一部を恒久化することも決めました。しかし、これらは一般財源です。目的税ではない。上に書いたことでわかるように、防衛費を増額するには財源が足りないという主張自体が、財政の仕組みと相容れない非論理的なものです。たかだかタバコ増税で賄える程度の額は国債を発行してもなんら困らないし、景気をよくして税収を増やせばそれでいい。そうせずに増税を決めたのは、岸田政権が緊縮的な政策をとったせいです。どうして喫煙者だけが防衛費を余分に負担するのか、全く意味がわかりません。防衛費を口実にしただけで、目的は国債発行を減らすための増税そのものだったんですよ。
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