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炎上するのは読者に誠実だから 〜イケハヤ『武器としての書く技術』〜

ビジネス系インフルエンサーとして有名なイケダハヤトが2013年に出版した『武器としての書く技術 30万人に届けて月50万円稼ぐ!新しい㊙︎文章術』がこれまで文章術関連のハウツーを10冊いかないくらい読んできた中で最も読み応えがあったので紹介します。

本書は、ネット上において「人に勧めたくなったり、反感をかったり、共感できる」ような「人を引きつける」文章、つまり「ネットで評価されたりバズる」文章を書く方法に特化して解説しています。

イケダハヤトは、ネット上で文章を発表するということは、「偶然通りかかった人の足を止めないといけない」といいます。
本書で解説される文章術というのは、一言でいってしまうと「①手当たり次第にアタックしまくって、②相手の気を引いて、③望むものを手にいれるという、まるでナンパのような文章術」です。

●やってはいけないこと

イケダハヤトにとって「『ダメは文章』というのは読まれない文章のこと」だとしています。
まずは、「ダメな文章」になってしまうためやってはいけないこととして、解説されているものを僕なりに3つにまとめました。

①すぐに立場をはっきりさせない
→解決策:「何が言いたいのかはっきりさせる」「積極的に断言・断定する」「タイトルで結論をいう」
→プラスワンの解決策:「『一流の人が〜』をつけるなど、ツッコミどころのあるタイトルにする」

②すぐに分からない
→解決策:「一文を短くする」「文章全体を短くする」「話すように書く
→プラスワンの解決策:「タイトルに数字を入れる」「黙読して句読点の位置が自然かどうかチェックする」「改行多め」「一般人が理解できる簡単な言葉しか使わない」

③すぐに役に立たない
解決策:「役に立つアドバイスとして書く」「ニッチなジャンルで求められていることを書く」
→プラスワンの解決策:「お金を絡ませて金銭的に得する情報」

よくある文章術として「分かりやすさ」の大切さを説いているものがありますが、ネット上に挙げて評価される文章というのは、ただ分かりやすいのではなく、「すぐに」分かりやすい必要があります。

また、分かりやすく面白い文章を書く方法を料理作りになぞらえて以下のように紹介しています。

①その文書で何を伝えたいか(料理名を決める)
②まず書きたいことを箇条書きにしてみる(材料を集めてくる)
③どういう流れがベストか考える(手順を考えながら調理)
④具体例などを入れながら肉づけしていく(味付け)
⑤伝わる文章に味つけしていく(スパイス)

p30 原文ママ

文章や記事の構成についてのアドバイスは驚くほどシンプルで、「話すように」書けばいいとしています。
おそらく、技巧的でひと手間加えたようなよくできた文章というのは、「すぐに」ができなくなってしまう分だけ、むしろ良くないのでしょう。

●人を引きつける

ナンパで上手くいく方法を考えれば、より多くの人の連絡先を交換するためには、気を引くような言い回しや振る舞いを身につけるとともに、とにかく次々と手当たり次第に声をかけて数をこなすのが最も効率的です。

本書では、気を引くような文書を書く具体的なテクニックについて数多く解説されています。ですが、その中の大半を先ほどダメな文章を避けるための「プラスワンの解決策」として書いてしまったので割愛します。

余談①:
タイトルや文中に差し込むことで「人目を引きやすいワード」というのが存在するそうです。
そのワードたちが、どれもどこかでみたことがあって面白かったので以下にそれらを引用します。

● コンプレックス系ワード
「教養のない人の〜」「頭が悪い人の〜」「なぜかモテない人の〜」
「残念な人の〜」「イタい人がよくやる〜」
「正しい○○の方法」「○○という愚行」
「英語が下手な人に共通する〜」「賢い人なら読んでおくべき〜」
「読んでおかないと恥をかく〜」「仕事ができない人の〜」
「一流の人に共通する」「○○業界人なら知っておきたい」

● オススメ系ワード
「ぼくが愛用している〜」「知らない人は損している〜」
「○年〇〇をやったぼくがオススメする」
「1年○冊読むぼくが選ぶ人生の中でベスト3の本」

● 権威系ワード
「ハーバードで教えている〜」「東大生が使っている〜」
「ジョブズが愛用した〜」「グーグル社員なら全員知っている〜」
「マッキンゼー式」

余談②:
「話すように書く」というだけあって、「読者の想定されるコメントを書いて、それに対して説得する」というプレゼン術の定番の方法が文章術として解説されていました。

●「すぐに」「たくさん」書く

人目を引きやすい文書が書けるようになったら、あとはとにかく次々と手当たり次第に数をこなすしかありません。
パッと作成して、ポンと提供して」、届かなかったら、また新しく次々と作り続けていくのが大事です。
そのため、イケダハヤトは「ひとつの記事を15分で書く」そうです。

「すぐに」「たくさん」作って量を重視するということは、質をある程度犠牲にする必要があります。実際、「50%以上の完成度があったら出してしまう」ことを推奨しています。

ここで意外なのが、ネタを出し惜しみせずにアウトプットを続けていると、新しくネタが入ってくるため、出し惜しみはしない方がいいという指摘です。
人は個人差はあれど、頭の中で同時期に考えておけることには限界があります。「人を引きつける」文章を書く上では、あくまで「すぐに役に立つ分かりやすい」文章に落とし込める程度のことしか考える必要がありません。
文章として全部出し切ってしまってスッキリしたほうが、新しく考えられるスペースが生まれて、新しいネタも生まれやすいのでしょう。

余談③:
個人的には、書きかけの文章を下書きのまま置いておいても、どうせほとんどお蔵入りになってしまうので「下書きをためない方がいい」というアドバイスや、一度投稿が途切れても萎えずに「また再開すればいい」といったアドバイスが実践的でグッときました。

余談④:
毎日アウトプットし続けるためのインプットをするための読書術を解説していたので、これについては別の記事として切り出して紹介しています。

人の目につく場所に自分の文章を置く

ナンパをするなら、田舎よりも都会の街中やクラブで行った方が、より狙っている女性がたくさんいるので成功しやすいはずです。
それと同じで、人の目につく場所に自分の文章がなければ、単純に「引きつけられる」可能性のある人口全体の母数が少なくなってしまいます。

そのために「話題性のあるニュースをテーマにする」ことや「検索エンジンを意識する」など、マーケティングに配慮して書く文章を考えようというアドバイスがされています。
その中でも一番興味深いのが、「記事を広めたければ、インフルエンサーに広めてもらう(リツイート・拡散してもらう)」ことを意識して書けばいいというアドバイスです。その応用としてインフルエンサーの記事に対して意見を書いて、それを拾ってもらうという方法もあるといいます。
記事を言及してもらえるように狙って仕掛けるといえば聞こえが悪いですが、要するに人気者の役に立つ文章を書こうということです。

●「言いにくいこと」を代弁するのは誠実さの証

本書の主張の最も興味深かったのは、「あなたの『言いにくいこと』は、誰かの『言ってほしいこと』」なので、「言いにくい毒のある本心や本音を書くことは、多くの人が言えなかったことを代弁することになる」という指摘です。

これによると、毒のある言いにくいことを書くと誰かを傷つけることになるので、当然炎上のリスクが発生します。ですが、それが「現状を変えるための議論を巻き起こすきっかけ」になるので、誰かを傷つける(かもしれない)「言いにくいこと」をいうのは誠実さの証だということになります。
これは逆にいうと、「言いにくいこと」を避けるというのは、現状を肯定するということになるので、誠実ではないことになるでしょう。

なお、「しょっちゅう炎上している著者ですら日本人の0.01%以下にしか認知されていないので、炎上は大した影響はない」としていますが、本書が出版された2013年とは違い、現在では軽犯罪や不道徳な行為で炎上しただけで、全国テレビで取り上げられることもしばしば起こるようになったためリスク(や炎上商法をする動機付け)は桁違いに大きくなっているでしょう。

●一冊丸ごとが「人を引きつける文章」の実例

さて、ここまでが本書の紹介だったんですが、本書の文章術というのを、簡単にいうと「ネット社会で文章を書いてメシを食いたい人向けの文章術」です。

本書の面白さのひとつは「これは何のための文章術であるか」をはっきりとさせることによって、ハウツー1つずつの具体性や説得力が非常に高いところにあります。

そして、もうひとつが「人を引きつける文章」で書かれていることで、一冊丸ごとが実例となっていることです。ここでは、本の構成を簡単に説明して本書がいかに著者自身がメソッドを実践できているかを説明します。

まず、冒頭にはデカデカ文字が見開き2ページ半続いて、本書の文章術の必要性を煽ります。

次に、「はじめに」で引きつける文章を書くために必要な力を4つ挙げます。
パッと作成して、ポンと提供して」、届かなかったら、また新しく次々と作り続けていくような「スピード感」。それと人の目につくコピー力」や読み始めてもらったら最後まで読んでもらえる引きつけておく力」といった人を引きつける文章を書く能力。最後は固定客になってもらい、評価を金に変える「リピートしてもらう力」。

※「スピード感」だけ「力」で終わらないのがどうしても気になりますが、「スピード感」以上にピッタリな言葉が思いつかなかったので、キャッチーさを優先したのでしょう。

各々の能力を高めるためのアドバイスがそれぞれどの章にあるのかを説明されていますので、本全体がはじめにの時点でほとんど分かった状態になります。

さて、そこから先は具体的なハウツーが本記事で解説したような順番に概ね沿って進んでいきます。そして、普通のハウツー本であれば、第1章に費やす「この文章術をマスターすればどんないいことがあるのか」というのを最終章に持ってきているので、「すぐに」本題に入れてストレスなく読み進められます。

逆によくあるハウツー本たちがどうして第1章や第2章では「どうして〇〇するといいのか」「私は昔こんな状態だったが〇〇をして変わった」みたいな話をするのが疑問で仕方がありません。
そもそも、その本を手に取る時点で、そのハウツーに価値を感じて読みたいと思っているはずです。そのため、「はじめに」で手短に意義や効能を説明するか、本書のように最終章に持ってきた方が、退屈な話がダラダラと展開されないので離脱される確率が減るんじゃないでしょうか?

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