会議で決まらないチームへ──意思決定の質を上げるPMの型
また会議が終わったのに、何も決まっていない。
議事録は残った。論点も洗い出した。次回の宿題も増えた。なのに肝心の決定がない。
この状態が続くと、現場は静かに疲れる。
作業は進むふりをする。資料は増える。関係者は増える。だけどアウトカムは増えない。
PMやリードが苦しいのは、決めないと進まないと分かっているのに、決める材料も責任も曖昧なまま時間だけが溶けることだと思う。
しかも、決めようとすると角が立つ。慎重に進めようとすると遅いと言われる。
今日は、会議で決まらないチームを、決まるチームに変えるための意思決定の型をまとめる。
技術の話というより、業務の進め方としての意思決定の設計。PMとコンサルの両方に効くやつ。
1. 決まらない原因は、意見が割れることではない
よくある誤解は、意見が割れるから決まらない、というやつ。
実務で本当に多い原因は、次の3つ。
原因A:決める対象が定義されていない
何を決める会なのかが曖昧だと、議論は発散する。
例えば、機能要件を決める会なのに、運用や体制やコストに話が飛ぶ。大事だけど、その会の決定対象じゃない。
原因B:意思決定の権限が曖昧
誰が最後に決めるのかが曖昧だと、人は決めない。
決めると責任が発生するから。合理的な回避行動として、合意形成ごっこに逃げる。
原因C:判断基準が共有されていない
判断基準がないと、どんな意見も正しく見える。
その結果、比較できずに迷い続ける。資料が増えるのは、判断基準がない状態で安心しようとするから。
2. PMの仕事は議論を回すことではなく、決定を発生させること
ここを割り切ると楽になる。
PMはファシリテーターでも、議事録係でもない。
決定を発生させるのが役割だ。
もちろん丁寧に議論はする。でも議論自体が目的になると、会議は宗教になる。
やった感だけが残る。
だから、会議の設計を次の順番で組み立てる。
決める対象を1行で定義
決定権者を明確化
判断基準を3つ以内で設定
選択肢を2〜3に絞る
決定の形を宣言する(決め方を先に決める)
この型を使うと、決まる確率が上がる。
3. まず会議冒頭で、決定対象を1行で固定する
会議の最初に、これを言う。1行でいい。
今日決めるのは、◯◯の方針です
今日決めるのは、A案とB案のどちらにするかです
今日決めるのは、今月のスコープの確定です
ポイントは、決めないことも明確にすること。
今日は運用体制の議論はしません。別枠で扱います
今日は詳細仕様は決めません。方向性だけ決めます
これを言うだけで脱線が減る。
脱線は悪ではない。でも、決定対象が変わるなら会議を分けるべきだ。
4. 決定権者を会議の外で決めておく
ここが一番揉めやすい。
でもここを曖昧にすると、永久に決まらない。
決定権者は会議の中で決めない。会議の外で決める。
なぜなら、会議で決めると政治になるから。
実務では、次のどれかに分類するのが良い。
単独決定:最終責任者が決める(他は助言)
共同決定:2名まで(多いと決まらない)
条件付き決定:A条件なら責任者、B条件なら別責任者
事前合意型:会議前に責任者と握り、会議で確認だけする
PMがやるべきは、決定権者に決めさせる構造を作ること。
PMが決めるべきでない領域まで背負うと、燃える。
5. 判断基準は最大3つ。しかも優先順位をつける
判断基準が5つあると、だいたい何も決められない。
全部大事だから。
判断基準は最大3つに絞る。さらに優先順位をつける。
例:ツール選定
1位:運用負荷(現場で回るか)
2位:セキュリティ(監査に耐えるか)
3位:コスト(トータルで許容か)
この優先順位が共有されるだけで、議論が比較に変わる。
意見のぶつけ合いから、評価の対話に変わる。
逆に、判断基準を言わずに、みんなの納得を取りに行くと地獄になる。
納得は価値観だから。
6. 選択肢を2〜3に絞る。選択肢が多いほど決められない
選択肢が多い会議は、検討会になる。意思決定会ではない。
PMは、意思決定会をやるなら選択肢を削らないといけない。
削り方はシンプル。
判断基準に照らして足切りする
実現性(期限・体制)で足切りする
リスクが致命的なものを落とす
そして最後に残った2案を比較する。
この2案比較の形に持っていけるPMは強い。
7. 決め方を先に決める:決定の形を宣言する
僕がよく使うのは、この3パターン。
パターンA:会議で即決
今日この場で決めます。判断基準はこれです。AかBを選びます。
パターンB:会議で方向性だけ決める
今日は方向性を決めます。詳細は別の場で詰めます。今日の決定はここまで。
パターンC:会議後に決定権者が決める
今日の議論を踏まえ、決定権者が◯日までに決めます。必要な追加情報はこの2点です。
大事なのは、決定の形を会議冒頭で宣言すること。
宣言がない会議は、終わった後に責任が蒸発する。
8. 決まらない会議を減らす、PMの事前準備チェック
会議前にこれだけ見ればいい。10分でできる。
決定対象は1行で言えるか
決定権者は誰か、本人が認識しているか
判断基準は3つ以内か、優先順位はあるか
選択肢は2〜3に絞れているか
決定の形は宣言できるか
決めない範囲は明示できるか
決定後の次の一手は何か(誰がいつ何をするか)
これを満たさないなら、会議を開かない方がいいことも多い。
会議を開く前に、決まらない原因が揃っているから。
9. それでも決まらないときは、政治ではなくリスクで会話する
決まらない会議の裏には、政治があることもある。
でも政治を正面から扱うと関係が壊れる。
僕が使うのは、リスクの言語化。
このまま決めない場合、いつまでに何が起きますか
遅れるとどの部署にどんな影響が出ますか
最悪ケースは何ですか
リスクで会話すると、責任の所在が見えやすくなる。
人を責めずに、意思決定の必要性を共有できる。
まとめ:決まるチームは、意思決定を設計している
会議で決まらないのは、意見が割れているからではない。
決定対象・権限・判断基準が未設計だからだ。
決める対象を1行で固定
決定権者を会議の外で確定
判断基準は3つ以内+優先順位
選択肢を2〜3に絞る
決め方を先に宣言する
この型を入れるだけで、会議は決まる確率が上がる。
そして何より、現場の疲れ方が変わる。前に進む疲れになる。
最後に問いを置く。
あなたのチームで、いちばん決まらない会議は何で、未設計なのは決定対象・権限・判断基準のどれだろう?
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