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「みぃ物語」#11(入院室 #03終)

前回はこちら

 しばらくすると、ガラスの向こうの処置室に人が集まってきた。水色の服を着た人が三人、白い服を着た人が一人、ピンクの服を着た人が三人いた。二、三分何やら話をした後、全員で

「お疲れ様でした。」

 と言って処置室から出て行った。

 あれ、さっきのあの先生、えっと、そうそう、里塚先生だけが処置室から出て行かずに残っているわ。すると、里塚先生がガラス越しにこちらに近づいてきて、私たちの方を覗いた。そして入院室のドアを開けて入って来た。私たちの部屋の前に来てケージの中を覗き込むと、

「みぃちゃん、ケンタくん、しばらくここで暮らすことになると思うので、よろしくね。しばらくは窮屈かもしれないけど。慣れたら休憩時間にスタッフルームとかでゆっくりする時間もとってあげられると思うしね。」

 と優しく笑いかけてくれた。なんだか優しそうな人だったけど・・・

安心してください、やさしいですよ(笑)

 知らない人は苦手なのよね・・・

 お姉さんたちのお家に帰りたいわ。そう思いながら見ていると、里塚先生は私たちの部屋から移動して、他の入院している子達の方へ行ってしまった。

 それぞれの子の様子を確認しているみたい。一通り確認したら入院室から出て行った。ガラス越しに見ていると、里塚先生はそのまま処置室からも出て行ってしまった。

 しばらくは、入院している子達の息づかいやごそごそ動く音だけが聞こえた。入院室の外の音はほとんどしなくなっていた。

 それからどれくらい時間が経ったのかしら、もう夜ね。
 隣のケンタがごそごそ動き出した。ケンタもこの状況に少し慣れてきたみたいね。

 するとそーっとケージから出てきて、ドライフードが入っている容器にほふく前進みたいにしてゆっくり近づいて行った。クンクンと匂いを嗅いでから、ポリポリと少しずつ食べ始めた。ケンタは食い意地が張っているから、食欲には勝てなかったのね。まだいつものようにガツガツは食べられないようだけど。

 その時、突然近くでピーピー機械的な音が繰り返し鳴り響いた。私はまたビクッと驚いてしまった。ケンタはケンタで、食べかけのフードを口からこぼしながらケージの中に一目散に逃げこんでいったわ。

 しばらくピーピー鳴る音は収まる気配はなかった。何の音かしら、と思っていたら遠くから足音が聞こえてきた。この足音は里塚先生の足音だわ。何故かすぐに覚えてしまった。

 処置室のドアが開き、次に入院室のドアが開いて里塚先生が入って来た。ほら、里塚先生だわ。
 先生は私たちの部屋を素通りして二つくらい隣の部屋の前で止まった。

 すぐにピーピー鳴る音が止まった。

 その部屋の子は、血管に管を付けて点滴をしているんだって。それで、点滴の液を流す量を調節するための機械が付いてるの。点滴が詰まったりして点滴の液が流れなくなると、その機械がピーピーと音が鳴って知らせてくれる仕組みになっているそうなの。

 それで里塚先生は点滴が詰まっているのに気が付いて見に来たってわけ。

点滴の速度を調節する機械
点滴が詰まると、ピーピー音が鳴って知らせてくれる

 先生は一度入院室から出て行って、何やら色々と道具を持って戻ってきた。機械の前でごそごそとしていたみたいだけど、無事点滴の詰まりを直し終わったみたい。

 私の部屋の前を先生が通ったので、じっと先生の方を見ていた。     すると先生と目が合った。すぐに目をそらそうとしたら、

「ごめんね、起こしちゃった?」

 と先生が話しかけてきた。

「今日は僕が当直だから、また来るね。」

 と言って入院室から出て行った。

 それからは、ピーピーなる音はしなくなったけど、夜のうちに何度か里塚先生は入院室に入って来た。その間、ケンタはまたのそのそと出てきてフードを食べていた。
 案外ケンタって図太いのかしら、おしっこまでしていたわ。

 私は結局ご飯を食べに出る勇気は出なかったわ。もちろんおしっこにもね。

 その後もう一度里塚先生が見回りに来たけど、何も異常がなかったのか、すぐに戻っていった。

 こうして私とケンタの長い一日は終わり、入院室での生活が本格的に始まったのでした。

入院室 おわり

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