物件情報精度責任者が考える、これからの情報審査グループ ~利用者に届けたい価値は変わらない~
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2006年9月に株式会社LIFULLに入社し、情報審査グループに所属。LIFULL HOME'Sの広告審査業務やガイドライン作成などに取り組む。2008年から2010年までは新規事業本部にて保険事業の業務に携わり、2010年10月より再び情報審査グループに所属。2018年10月より情報審査グループ長を務める。「圧倒的な「安心」でベストマッチングをリードする」ことをグループビジョンに掲げて、不動産広告の精度を仕組み化によって加速させることにより、消費者のスムーズな部屋探しに寄与できるよう取り組んでいる。
はじめに
「掲載されていた部屋に問い合わせたら、もう埋まっていた。」
住まい探しをしたことがある人なら、一度はそんな経験があるかもしれません。
条件に合う部屋を見つけて問い合わせをしたのに、「昨日申し込みが入りました」と案内される。同じ部屋は2つとありませんから、仕方がないことだと分かっていても、がっかりすることは変わりません。
私は2006年にLIFULLへ入社して以来、この「がっかり体験」を少しでも減らしたいという思いで情報審査に携わり、現在は情報審査グループ長と、LIFULLの物件情報精度責任者を務めています。
この20年で、不動産情報を取り巻く環境は大きく変わりましたし、情報審査グループの仕事も当時とは大きく変わりました。人が広告を一件ずつ確認する時代から、データやAIが審査を支える時代へと大きく変化しています。
それでも、利用者へ届けたい価値だけは変わっていません。
そんな20年を振り返りながら、今考えていることを書いていきます!
インターネットは便利になった。でも課題も大きくなった
私が入社した当時は、インターネットの普及が広がっており、不動産情報も紙からインターネットへ大きく移行している時代でした。
消費者が住まい探しをする手段は、住宅情報誌や折込チラシから、自宅で何百件もの物件を比較できる時代に移り変わり、住まい探しの選択肢は一気に広がったように思います。
一方で、不動産会社同士の情報連携の手段はまだ紙やFAX、電話が中心でしたから、情報を管理する仕組みはまだ追いついていなかった印象があります。
インターネットは、情報を早く広く届けられる便利な仕組みです。その反面、募集が終了していたり条件が誤っている不動産情報も、紙の時代よりはるかに広く拡散されやすくなりました。悪質なおとり広告だけでなく、更新漏れやヒューマンエラーも、消費者へ大きな影響を与えるようになったのです。
もし、この状態が当たり前になれば、 消費者が「インターネットの不動産広告は信用できない」という印象が強まってしまう。
だからこそ、広告の正確性をどう守るかは、LIFULL HOME'Sだけの課題ではなく、不動産業界全体で向き合うべきテーマだったと思います 。

当時は、利用者から寄せられた通報をもとに広告を調査し、必要に応じて修正や削除を依頼していました。改善が見られない場合には、不動産情報を掲載する不動産会社に対し掲載停止などの措置を取ることもありました。
ただ、実際に向き合っていたのは広告の誤りだけではありませんでした。
「どう直せば利用者に誤解なく伝わるのか」
「不動産会社が伝えたいことを残しながら、ルールを守るにはどう表現すればいいのか」
そんなことを、一件一件考えながら対応していました。
しかし、約500万件を超える掲載情報を、人が確認し続けることには限界があります。
そして、経験豊富な担当者しか判断できない属人的な仕事のままでは、利用者へ届けるサービスの品質向上にも限界があると感じていました。
人がやるべき仕事は、仕組みをつくること
その後、不動産管理会社とのデータ連携によるおとり物件対策、能動的な違反物件検知や、AIの活用などが進み、これまで担当者が一件ずつ確認していた属人的な業務は、システム化によって少しずつ代替されるようになっています。
これにより、私が入社した当時に比べると1日で数十倍~数百倍の違反物件が仕組みによって自動で削除されるようになりました。

このごろは「AIが人の仕事を奪う」と言われることもあります。
それでは、AIやデータ活用によって、情報審査グループの仕事に私たち人の手は必要なくなってしまうのでしょうか。
私自身は、少し違う考えを持っています。
人がやるべき仕事は、同じ確認作業を繰り返すことではなく、「人がやらなくても品質を維持できる仕組み」をつくることです。AIも、そのための手段の一つだと考えています。
これまで経験の中で培ってきた判断を言語化し、データとして蓄積することで、誰もが同じ品質で判断できる状態をつくる。そして、人はより複雑な課題の解決や、新しい価値を生み出すことに時間を使えるようになる。そのような役割分担が理想です。
システムが単純な確認や検知を担うことで、情報審査グループのメンバーは広告表現の妥当性や制度設計、業界全体の課題解決など、人にしかできない仕事へ、より力を注げるようになっており、これは大きな変化だと感じています。
利用者への価値を考えると、仕事は広告の外へも広がる

情報審査グループの仕事に限ったことではありませんが、課題には必ず原因があります。そして、その原因は一つではなく、複数の要素が絡み合っていることがほとんどです。
募集終了の情報をもっと正確に流通させるにはどうすればいいのか。
広告ルールはどうあるべきなのか。
LIFULL HOME'Sだけで解決できないことは、業界全体で協力できないのか。
利用者への価値を起点に考え続けていると、自然と視野は広告審査の枠を超えていきました。
例えば、国土交通省の受託事業である不動産IDの検証に携わったのも、物件を正しく識別できる仕組みが整えば、広告品質だけでなく、不動産情報全体の流通品質も向上すると考えたからです。
また、RSC(不動産情報サイト利用者協議会)の活動では、競合であるポータルサイト各社と協力しながら、省エネ性能ラベルの普及にも取り組んでいます。一見すると情報審査とは離れたテーマに見えるかもしれません。しかし、「消費者が正しい情報をもとに住まいを選べるようにする」という目的は、情報審査グループが目指してきた価値と変わりません。
こうした経験を通じて感じたのは、情報審査とは広告をチェックする仕事ではなく、利用者に届ける情報の価値を考え続ける仕事なのだということです。
だからこそ、情報審査グループが向き合うべき対象は広告だけではなく、情報の流通の仕組みや業界のルール、そしてポータルサイトが社会に提供できる価値そのものまで、視野を広げて考えていく必要があると感じています。
これからの情報審査グループ
この20年で、情報審査の方法は大きく変わりました。人が一件ずつ確認する時代から、仕組みで支える時代へ。そして今は、データやAIを活用しながら品質を維持・向上させる時代へと進んでいます。
それでも、「利用者へ正しい情報を届ける」という目的だけは、何一つ変わっていません。
LIFULL HOME'Sでは、これからも人の経験だけに頼るのではなく、積み重ねてきた判断やデータを活かしながら、より正確で、安心して住まい探しができるサービスを目指していきます。
「LIFULL HOME'Sなら安心して住まい探しができる 」
利用者のみなさまに、そう感じていただけること。
それが、私たち情報審査グループが変わらず目指してきた価値であり、これからも大切にしていきたい価値です。

