なぜ経営者は、身内と本音で話せないのか?──承継を難しくする“見えない壁”
社員にはあれだけ語れるのに、
なぜ自分の子どもとは、本音で話せないのか。
事業承継というと、多くの人はまずこう考えます。
株式をどうするか。
税金をどうするか。
代表をいつ交代するか。
相続をどう整理するか。
もちろん、これらは大切です。
しかし、私は50年経営し、実際に息子へ承継した経験から、はっきり感じています。
事業承継で本当に難しいのは、
「誰に渡すか」ではありません。
本当に難しいのは、
どう信頼して任せるか。
どう納得して受け取るか。
周囲をどう安心させるか。
ここなのです。
承継の外側と内側
株式、税務、法務、相続、役職変更。
これらは承継の「外側」です。
しかし、承継が本当にこじれる原因は、その内側にあります。
たとえば、
親が子を信じ切れない。
子が親に認められていないと感じている。
創業者が手放せない。
後継者が自信を持てない。
古参幹部が新社長を受け入れきれない。
社員が新体制に不安を感じる。
家族が本音を話せない。
経営者が引退後の自分の存在意義を失うことを恐れている。
これらは、書類では解決できません。
なぜなら、これは
人の感情と信頼関係の問題
だからです。
承継で困っている経営者の本音
経営者は表面上、こう言います。
「そろそろ息子に任せたい」
「後継者が頼りない」
「幹部がついてくるか心配」
「いつ代表を替えればよいか分からない」
「税金や株式の問題が不安だ」
しかし、心の奥では違います。
本当にこの子に任せて大丈夫だろうか。
自分がいなくなった後、会社は崩れないだろうか。
社員はついていくだろうか。
自分の人生は、承継後に空っぽにならないだろうか。
家族が壊れずに承継できるだろうか。
そして、さらに深いところでは、こう思っているのです。
誰かに、親子の間に入って整理してほしい。
自分の気持ちも、後継者の気持ちも分かってくれる人がほしい。
ここに、根っ子学の出番があります。
承継に必要なのは、単なる専門家ではない
承継で困っている人が本当に求めているのは、
単なる知識提供者ではありません。
本当に必要なのは、
伴走者です。
ただし、普通の伴走者ではありません。
創業者の気持ちが分かる人。
後継者の苦しさも分かる人。
親子の間にある言えない感情を扱える人。
幹部との関係も見られる人。
会社の未来と家族の心を同時に見られる人。
経営の現場を実際に経験している人。
失敗も、成功も、承継も体験している人。
私は、自分自身が27歳で創業し、50年経営し、実際に長男へ承継しました。
その中で、任せる怖さも、手放す難しさも、親子の葛藤も、自分の影根っ子も体験しました。
だからこそ、机上の理論ではなく、実体験として言えます。
承継を止めている犯人は、外にいるのではない。
多くの場合、
自分の中にいる
のです。
「犯人は自分の中にいた」
承継が進まない時、多くの経営者はこう考えます。
後継者が悪い。
幹部が分かっていない。
社員がついてこない。
時代が悪い。
私も、かつてはそう思っていました。
しかし、深く見ていくと違いました。
承継を止めていたのは、外の誰かではなかった。
自分の中の、
手放せない根っ子。
任せられない根っ子。
認められたい根っ子。
まだ自分が必要とされたい根っ子。
それが、承継を難しくしていたのです。
それが、すべての原因だった。
まさに、
犯人は自分の中にいた
のです。
根っ子学が扱うもの
一般的な事業承継支援は、制度面に寄りがちです。
株式対策。
相続対策。
税務。
法務。
役員変更。
組織図。
経営計画。
もちろん、これらは必要です。
しかし、根っ子学が扱うのは、その前後にある人間関係です。
親子の信頼。
後継者の不安。
創業者の手放せなさ。
幹部の本音。
社員の不安。
家族の未解決感情。
経営者自身の影根っ子と光根っ子。
ここが整わないまま、制度だけを整えても、承継はうまくいきません。
なぜなら、会社を動かしているのは書類ではなく、人だからです。
承継とは、会社を渡すことではない
私は今、事業承継をこう考えています。
承継とは、会社を渡す問題ではありません。
信頼して任せ、
納得して受け取り、
周囲が安心して支える関係をつくる問題
です。
創業者が安心して任せられるか。
後継者が自分の言葉で受け取れるか。
幹部と社員が新体制を信頼できるか。
親子・家族・幹部の間で、本音の対話ができるか。
ここに、承継問題の真の課題があります。
最後に
もし今、事業承継で悩んでいるなら、まず問い直してみてください。
「誰に渡すか」ではなく、
「本当に信頼して任せられる状態になっているか」
「後継者が頼りない」のではなく、
「後継者が安心して受け取れる土壌をつくれているか」
「幹部がついてこない」のではなく、
「幹部が新体制を信じられる対話ができているか」
そして最後に、こう問いかけてください。
承継を止めている根っ子は、どこにあるのか。
外ではなく、
自分の中にあるかもしれません。
そこに気づいた時、
事業承継は単なる社長交代ではなく、
会社と家族と自分自身を再生する大きな機会に変わります。
今日の問い
あなたは、後継者に会社を「渡そう」としていますか。
それとも、後継者が安心して「受け取れる関係」を育てていますか。
■ 共感していただけた方へ
もしこの記事が、少しでもあなたの中の何かに触れたなら——
それはきっと、あなたの中の「根っ子」が反応しているサインです。
事業承継は、経営の問題ではありません。
人と人との「信頼」と「関係性」の問題です。
同じように悩んでいる方に、この視点が届けば嬉しく思います。
■ このシリーズについて
このnoteでは、
・事業承継でなぜ問題が起きるのか
・親子・幹部・組織の根っ子の構造
・承継がうまくいく会社と失敗する会社の違い
を、実体験をもとに連載しています。
フォローしていただくと、次回以降もご覧いただけます。
■ 最後にひとつだけ
後継者に会社を「渡そう」としていますか。
それとも、
本当に、信頼して任せられる状態になっていますか。
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承継問題研究所 / 根っ子学研究所(恋里村)
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