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刑事事件-この人、ほんとに無罪なのかな?


1.はじめに


こんにちは!
弁護士の小林正和です。

今回のテーマは、この人、ほんとに無罪なのかな?です。

こちらの記事でちょっと予告した内容です。


2.無罪主張の割合


弁護士になって16年、非常に多くの私選・国選の刑事事件を担当してきました。

被疑者のうち、「自分は嫌疑を受けているような犯罪をしていない。」と主張される方は、つまり、無罪を主張される方は、感覚的には、1~2割でしょうか。

ちなみに、罪を認めている事件を自白事件といい、争う場合を否認事件といいます。

3.この人、ほんとに無罪かな?


刑事弁護を始めた頃は、被疑者の言い分を聞いて否認事件だと分かると、

「あぁ大変だ、大変だぁ」

と一人で慌てふためいていたのですが、最近は、特に自白事件でも否認事件でも、あまり感情的には差を感じなくなりました。

今は、無罪主張の事件が刑事裁判になったら、長引きそうだなぁ(ちょっと忙しくなるなぁ)、くらいの感覚しかありません。

むしろ、自白事件の方が、被疑者と示談交渉をしたりと大変なことも多いです。

さて、担当する被疑者・被告人が「私は、無罪です。」とおっしゃった場合には、当然に、無罪を前提とした弁護活動をし、刑事裁判では無罪を主張します。それが、刑事弁護人の当然のスタンスだからです。

一方で、事件の内容や被疑者の言い分、(裁判になった後であれば)証拠を確認し、第三者の目で見て、どうも、この人、犯罪をしているのではないか、と思うことはあります。

弁護士に成りたての最初の頃は「どうしよう。」と思っていました。被疑者が嘘をついているのか、いや、本当なのか、分からないからです。嘘なら、ちゃんと説得して、自白してもらった方がよいのでは、などと思っていました。

今は、全くそのようなことは考えません。

無罪であるとおっしゃるのであれば、それを前提に無罪を主張するだけです。

ただし、無罪を主張するにしても、不合理な事実や証拠等があれば、被疑者に端的に質問を投げかけ、

「このような不合理な事実や証拠があると、有罪と疑われかねませんね。これらについて、合理的な理由は説明できますか?」

と言った感じで、淡々と質問を続けます。

例えば、コンビニから外へ商品を持ち出したことで、窃盗罪の嫌疑をかけられている被疑者が、盗むつもりはなかった、だから自分は無罪だと主張したとします。

私からの質問は、まずは、

「なぜ、お金を払わずに、お店を出たのですか?」

です。たとえば、被疑者が、

「トイレに行きたくて、つい焦って出てしまった。」

と答えれば、

「コンビニなら、トイレありませんか? 借りればよかったのでは?」
「いったん、商品をおいて、外でトイレを済ませてから戻ればよかったのでは? なぜ、商品を持ったまま、外に出たのですか?」

と更に質問します。裁判での検察官から質問されるような内容のイメージで不合理と思われるところをつつきます。

こんな感じで、通常であれば(裁判官、検察官が)不合理だと思いそうなことがあれば、弁護人である私が先に質問し、どのような理にかなった釈明ができるかを逐一確認するのです。

刑事裁判の準備(肩慣らし)も兼ねています。

たとえば、

「コンビニの外に、ある商品が陳列されており、それを買おうと思って一旦店を出ただけです。その商品を手に取ったら、また店に戻るつもりでした。」

との言い分が出てきて、実際に、店の外に商品が陳列されていたのだとすれば、やや合理的な説明になりそうですね。

そんな感じです。

さて、被疑者が、極めて合理的な理由が説明できれば、それが無罪主張の説得的な理由になり得ますし、逆に、合理的な理由が説明できなければ、裁判では勝てない(無罪にはできない)だろうと説明します。

結局、私は(他の弁護人も)、神様ではないので、たとえ心理学を勉強していたとしても、弁護士として長年、人を見る訓練をしてきたとしても、目の前の被疑者が、本当に無罪かどうかはわかりません。

泣きじゃくって無罪を主張する方、怒り狂って無罪を主張する方だと、何となく本当に無罪のようにも思いますし、逆に、淡々と笑顔で無罪を主張される方は、本当に無罪かなぁと思ってしまいます。でもやはり真実は分かりません。

更に言えば、被疑者本人は、嘘を言っていないつもりでも、(病気などにより)記憶がすり替わっている(客観的には真実ではないものの、被疑者本人としては真実だと確信して話している)ということもあるようです。


繰り返しになりますが、私は、神様ではないので、無罪だとおっしゃる被疑者には特に疑いもせず、無罪を主張することにし、ただ、事実関係や証拠関係に照らして、不合理な点は徹底的に質問し、釈明を求めるという形で、無罪主張を考えるだけです。

それが、非常に弱いものであっても、被疑者の意向に沿うものなので、特に問題はありません。

たまに、「すいません、実はやりました。」という被疑者・被告人もいらっしゃいますが、そのような場合は、逆に、私が冤罪を作るようには決してならないように、本当に自白でよいのかは、また極めて慎重を要します。

いずれにしても、この目の前の被疑者が、本当に罪を犯しているのか、犯していないのかは、私自身からは、特に積極的に判断しないことにしています。

4.最後に


今回は、この人、ほんとに無罪なのかな?でした。

最後までお読み頂きまして、ありがとうございました。

一般の方、刑事事件を扱っている、あるいは、扱いたい弁護士の方など、スキ、フォローを頂ければ有難いです。ブログを継続する励みにさせて頂きます(なお、チップの受領は辞退します。)。



本ブログの内容を信じて行動した結果、何らかの不利益があった場合でも、それを補償するものではありません。刑事事件に関して何らかの対応をする場合は、弁護士に相談するなどしてください。本ブログの内容に誤りや誤解のある記述がありましたら、個別にご連絡頂ければ幸いです。





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